来日記念に Taylor Swift の曲をおさらいしました。古い曲ですが、私の一番好きな曲が “End Game” です。Ed Sheeran がフィーチャリングする箇所で “four words” と歌っています。何気に聴いていたのですが、気になったので、意味を考えてみました。
本国米国でもNFLに勝る人気
Taylor Swift がメキシコシティーを皮切りに “Eras” ワールドツアーを始めました。チケット販売だけで14億ドル(2,000億円)で、コンサート会場となるスタジアム付近に詰めかけるファンがホテルに泊まり、周辺地域で飲み食いすることによる経済効果は50億ドル(7,300億円)とのことですから尋常ではありません。フィージー1国のGDPを上回ります(文献1)。
ホテル周辺の経済効果を比較したところ、本国米国ではコンサートが行われる同じスタジアムで、米国で最も人気が高いスポーツであるNFLの試合が行われるのですが、今回の彼女のコンサートはそれを凌ぐ人気と経済効果というのです。
また、彼女はこのワールドツアーを収録して映画として10月13日の金曜日封切ることを公表しました。クリスチャン学校を卒業した彼女からすると、13という数字は不吉と思いきや、自身の誕生日が12月13日とあって、大好きな数字なのです。そして、こともあろうにホラー映画が狙って封切られる13日の金曜日に当てて、自身の”Eras” ワールドツアーを封切るのです。ホラー映画の方がムンクの叫びの形相になっていることでしょう。
報道によると、初日の映画チケット売上高が何と1,000万ドル(14.6億円)です。一体全体 “Eras” ワールドツアーの最終的な経済効果はどれぐらいまで伸びるのか想像もつきません。
中国でも彼女は大人気者です。ファンは “霉霉 (méi méi)” という愛称で呼びます。若い頃に、いい曲を出してもなかなかビルボードチャートで1位を獲得できずにいたため、ついていないことを意味する”倒霉 (dǎoméi)” から来たそうです。 “美美 (měiměi)” と谐音(同音異義語)になっていて、上手い命名だと思います。
彼女の誕生日12月13日に当局の検閲が間に合わず、12月31日に中国国内で映画 “The Eras Tour’s / 时代巡回演唱会”が封切られることが決まりました。翌年の春節では、“春晚”(日本の紅白歌合戦のような娯楽番組)そっちのけで“The Eras Tour’s”目当てに映画館にお出かけするのかもしれません。
東京がロケ地になった “End Game”
来日記念に Taylor Swift の曲をおさらいしました。古い曲ですが、私の一番好きな曲がアルバム Reputation に収録されている “End Game” です。ミュージックビデオ(以下MV)では、東京がロケ地の1つになっています。冒頭と東京を舞台にしたシーンの最後で、Taylorが日本語で「エンドゲーム」と書かれた紙パックの飲み物を飲んでいます。
“End Game” という言葉は、チェスでもうじきチェックになるという大詰めの局面のことを指します。この曲の中では恋人との恋愛の最終局面という意味合いで使われています。当時の恋人で英国の Joe Alwyn との成り行きを重ね合わせた自叙伝なのかと思いきや、どうもそうではないのです。
Ed Sheeran と Future の2人を迎えて、マイアミ⇒東京⇒ロンドンとロケ地を渡り歩きます。その中で、東京ロケだけ茶目っ気いっぱいなのです。日本語が分からないとその面白みが分からないのですが、MVの中で繁華街でいろいろな看板が掲げてあります。よく見ると、いろいろなことが書いてあるのです。
先ず、1:28 付近で、左手上の方に見える看板に「トリック」と書かれています。歌詞にも出てくる
You’ve been calling my bluff on all my usual tricks / あなたは私の決まり文句(トリック)をはったり言ってきたわよね。
同じ場面で、同じく左手に「メレディス」と「オリビア」と書かれています。彼女が勝っている猫の名前です。それから、「すごい噂 / big reputation」という看板もあります。当時の恋人Joe Alwynとの噂のことでしょう。右手には「クライマックス」と書かれている看板も掲げてあります。歌詞の中には “climax” という単語は出てきませんので、恐らく “End Game” を「クライマックス」と訳したのだと思います。
1:30 付近では、歌い出しの以下の一節が和訳されて、右手の看板に書かれているを見つけることができます:
I wanna be your end game / あなたの最後の人(クライマックス)でいたいの
I wanna be your first string / あなたの一軍でいたいの
I wanna be your A-Team / あなたのAチームでいたいの
同じく右手にJoe Alwynの「ジョー」の文字も見えます。
I don’t wanna touch you, I don’t wanna be / あなたに触れたくない、
Just another ex-love you don’t wanna see / あなたの会いたくない過去の恋人になりたくない
1:36に場面がカラオケバーに替わり、Ed Sheeran がフィーチャリングします。
2:05付近でTaylor Swiftが片側3車線の大きな道路をバイクでかっ飛ばしている背景に「パトリック」という文字が見えます。当時の恋人Joe Alwynの弟 Patrickです。まさに両家の家族ぐるみということで、 ますます本当に “End Game” かと思わせます。
「パセラ」という看板の文字が見えます。他の文字がぼかしてあるのにこの文字だけはっきりと読み取れるのは、カラオケバーのチェーン店パセラがロケで使われたためお礼の意味を込めてのことでしょう。
“four word” とは
このカラオケバーでのシーンの最後に、Ed Sheeranが問題の箇所を歌います:
After the storm, something was born on the 4th of July / すったもんだの末、7月4日に違う何かが起きた
I’ve passed days without fun, this end game is the one / 詰まらない日々を過ごしてきたが、とうとうクライマックスが来たのだ
With four words on the tip of my tongue, I’ll never say it / ここまで出かかっている4つの言葉を決して言うまい
ここに登場した “four words” がどうしても解釈に困ります。”End Game – Behind The Scenes” という別のMVの中で、Ed Sheeran は7月4日に開かれたパーティーをきっかけに現在の奥さんと交際を始めたと明言しています。したがって、彼は自分が歌うパートで自身の自叙伝を語っていることが分かります。ここから大半の見方では、 “four words” は “Will you mary me?” だとしています。
しかし、なぜ “I’ll never say it” と言っているかで見方が分かれるところとなっています。後づけの解釈ですが、Taylor Swift と Joe Alwyn は破綻しました。Ed Sheeran が Joe Alwyn の心境になって歌ったのだとしたらどうでしょうか。Ed Sheeran は自身のことを歌え上げたのではなく、実は Joe Alwyn に成り代わって歌ったのだとしたら、辻褄が合います。
After the storm, something was born on the 4th of July / すったもんだの末、7月4日にとんでもないことが起きた
I’ve passed days without fun, this end game is the one / 詰まらない日々を過ごしてきたが、とうとう来るべき時が来たのだ
With four words on the tip of my tongue, I’ll never say it / ここまで出かかっている4つの言葉を決して言うまい
彼女がMVの中で彼や彼の家族の名前まで登場させてグイグイ来ていることが心理的負担になってしまい、思わず言ってしまいそうになった4つの言葉をぐっと胸の内に収めたのかもしれません:”Don’t go any further! / それ以上は止めてくれ!”
そうだとしても、Taylor Swiftがラップを取り入れて新境地を開いた楽曲で、日本をロケ地に選んでくれ、何らか経済効果もあったと思いますので、私が好きな曲です。
[参考文献]
- Word Bank: https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.CD?most_recent_value_desc=true
- Taylor Swift – End Game fr. Ed Sheeran, Future: https://youtu.be/dfnCAmr569k
- End Game – Behind The Scenes: https://youtu.be/VA7Y_Psp5l4
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