中国語の単語は、発音もさることながら、加えて声調を覚える必要があります。中英辞書の “Pleco” の特長の1つは、単語の声調を色分け表示するところです。これを自炊したコンテンツに応用すると、自分オリジナルの中国語音読練習用テキストが出来上がります。
中英辞典 “Pleco” は単語の声調を色分け表示
中英辞書 “Pleco” がどういうものかについては、「中英/英中辞書アプリ “Pleco” 優れものです」の回をご覧いただくとして、そこでは触れなかった特長の1つに単語の声調色分け表示があります。
下の画面キャプチャをご覧いただくとお分かりのように、単語が色付けされています。ディスプレイによって色が微妙に違うと思いますが、第一声(ā)が橙色、第二声(á )が緑色、第三声(ǎ)が紫色、第四声(à)が薄紫色です。下の例ですと、「呐」は第四声(à)なので、薄紫色に色付けしてあり、「喊」は第三声(ǎ)なので、紫色に色付けしてあります。
私の場合、ピンインの読み方はそれなりに覚えられます。しかし、いざ文章を音読練習しようという段になり、覚えたはずの新出単語が出てくると、「声調は何やろ?」ということになり、非常にぎこちなく読むことになってしまいます。これが色付けしてあると、直感的で読みやすくなります。
声調を手振りで覚えるという方法もあります。音読する時に声調記号を思い出すきっかけとして、手振りを使うのです。高い位置で横一文字を空に描くと「第一声」です。右肩上がりに手を振ると「第二声」です。低い位置で船底のように弧を描くと「第三声」です。最後に、右肩下がりに手を振ると「第四声」です。
家では最初、この方法を使っていました。いろいろな感覚を動員して体で覚えると、記憶に残りやすいという理屈は、科学的にもエビデンスがあるからです。
しかし、通勤電車の中で音読練習練習をする場合は都合が悪いのです。「人前で音読やて?」という声が聞こえてきます。もちろん、隣の人にも聞こえない程度にささやきます。耳栓代わりにイヤホンを耳にしていると、骨伝導で自分の声が聞き取れるのです。
「分かった。ほんなら、声調の手振りの方はどうすんや?」
そうです。この時に、Pleco の色分け表示を活用するのです。
自炊テキストの文字を Pleco 方式で色分け
紙の書籍は通勤時に持ち歩くと重いので、私はスマホで読めるように「自炊」しています。自炊方法の詳細は、「難しいポルトガル語学習用教材の完全デジタル化」の回で紹介しましたので、そちらをご覧ください。
私の場合は、自炊してデジタル化したテキストを Evernote にアップロードして、スマホでも PC でも読めるようにしています。そのテキストの中で、声調を覚えられない単語を Pleco 方式で色付けするわけです。ちょうど、下の画面キャプチャーの要領です。
通勤電車の中でこれを「音読」すれば、手振り不要になり、変な人扱いされなくて済みます。
ちなみに、先ほど説明した Pleco 方式の色使いとは異なることにお気づきの方もいらっしゃると思います。実はこれは私なりの便法です。スマホや PC の画面をダークモードで表示すると、紫色の文字が潰れて見えづらいため、
- 第三声:紫色⇒薄紫色
- 第四声:薄紫色⇒赤色
という風に色を置き換えています。Pleco 方式と似た色なので、実用上それほど問題ありません。
単語が「色」の場合は、少々困ることも
Pleco 方式の声調色分け方式は便利ですが、万能ではありません。困ることもあります。最たるものが、「色」を表す単語の場合です。下の画面キャプチャーをご覧ください。まごつきませんか?
唯一「紫」だけが、声調の色付けと一致します。
まさに心理学テストの “Stroop test” そのものです。Stroop test は John Ridley Stroop という心理学者にちなんだもので、 “Stroop 効果 / Stroop effect” を確かめる際に用いたテストです。
文字が意味する色と文字の色付けが異なると、脳が混乱するのです。文字を読む場合よりも、文字の色を言い当てる場合に特に時間がかかります。これを Stroop 効果と呼びます。諸説ありますが、まだどうしてそうなるのか本当のところは分かっていません。
おもしろいことに、実用上は脳機能異常があるかどうかを確かめるため、認知症診断テストにも応用されています。
幸いなことに、音読練習は色を言い当てる方ではなく、文字を読む方なので、影響を受けにくいわけです。ですので、文字の色付けを声調練習に安心して使ってよいと思います。
年を取っていき、物忘れがひどくなってきたら、認知症の自己診断に色を言い当てる方を試して、時間がかかるかどうか試してみるのもよいでしょう。
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