MWC 2022 米中西の報道拾ってみました

Sagrada Familia 科学技術
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Mobile World Congress 2022 (MWC 2022) は毎年2-3月にスペインのバルセロナで開かれる移動通信関係の展示会です。一昨年は中止、昨年はリアルとバーチャルの両刀使いでした。今年の展示会も昨年同様でした。参加していませんが、アメリカ、中国、スペインそれぞれの報道を拾ってみました。

アメリカーさすが最先端の通信技術

CNET記事によると、Qualcomm社が新しい5Gモデムチップを発表したとのことです。Snapdragonというブランド名で大抵のスマートフォンのご本尊として使われているQualcomm社のモデムチップですが、AIをハードウェアとして搭載したとのことです。その名も “Snapdragon X70” です。

Qualcomm社のホームページを覗くと PR があり、現在商業運用されている 6GHz 未満の周波数帯の他にミリ波帯と呼ばれる帯域のモデムとしても使えるように仕込んであるので、次世代の無免許帯域(New Radio Unlicensed)に対応しているようです。ですので、WiFi のように使える周波数帯域の製品群にも今後使われるようになると思います。

同時に、TikTok の親会社 ByteDance とも提携して、強力に仮想空間技術ないしはメタバースの開発を推進することも発表しました。ちなみに、メタバースは上位概念を意味する “Meta” と宇宙の “Universe” をくっつけて約めた造語です。中国語では「元宇宙 Yuán yǔzhòu」と言います。「宇宙」の「元」だから「元宇宙」です。こちらの方が何となく分かりやすい気がします。

それから別の記事で、楽天モバイルが先鞭をつけた “Open RAN” も 5G の基地局側をやるような企業がソリューションを展示していたようです。この Open RAN は、移動体事業者の仰々しく、一品物で作るような設備でなくても、手に入りやすく、こなれたハードウェアで通信設備を組み立てる発想の技術です。先ほどの次世代の無免許帯域(New Radio Unlicensed / NR-U)とも相性がよいと思います。NR-U + Open RAN で WiFi のような簡単な設備で 5G が使えるようになるのではないでしょうか?

中国ー最先端のスマホモノ作り技術

中国は端末メーカでしょう。Apple と Samsung を除けば、スマートフォンの世界市場シェアは、小米、OPPO、vivo などの中国メーカで占められています。こちらの記事の中ほどにあるスマートフォンの世界市場シェアランキング表をご覧ください。

Apple も Samsung も新製品の発売がなかったので、スマートフォンの祭典としては、あまりぱっとしないのですが、そのような中でも中国勢が頑張っていました。

先ず、TCL が360℃開いたり閉じたりできる折り畳みスマートフォンを発表しました。閉じると 6.78 インチですが、開くと 10 インチの大画面になります。エンタメにも仕事にも便利そうです。閉じた時の 6.78 インチはちょっと日本人の手には大きいですが。

次に、OPPO/realme が急速充電技術を発表しました。現在のスマホの電池容量は 4500mAh ぐらいです。それを 240W でものの 9 分で充電してしまいます。安全性が心配になってしまいますが、電池寿命にも気を使っていて、実は充放電を 1,600 回繰り返しても電池容量が 2 割程度しか劣化しないようにできるとのことです。1日1回の充電なら、同じ電池を4年間使い続けられる計算になります。長持ちですね。

端末価格がドンドン高くなってきているために、ユーザの買い替え周期が長くなってきています。このような充電技術が発達してくると、ますます買い替えを手控えるユーザが増えるのではないでしょうか?

スペインー「持続可能な社会」の実現

MWC 2022 の開催国スペインはどのような反応でしょうか。El Mundo記事によると、まさに先ほどの中国OPPOが発表した電池を長寿命にする技術を待っていたかのように、中古スマホ市場を活性化して、「持続可能な社会」の実現を目指すそうです。

買い替え需要に頼る端末メーカはたまったものではないと思いきや、そこはヨーロッパ、端末メーカの方も協力的なようです。端末の長寿命化でも食っていける方策として、端末の有償保証期間を延ばすことを考えています。

これには、Android OS を開発している Google の手も借りなければなりません。今までは、Google がドンドン新しい Android OS にバージョンアップしてくるので、新機種からそれに対応しようということになっていました。ハードウェアの機能進化を見越して Android OS も進化させるといったように、ハードウェアとソフトウェアが二重らせんのようにお互い絡み合って成長してきたのが、これまでの歴史と言えばよいのでしょうか。

ところが、端末価格の高騰で買い替え周期が延びるし、電池の寿命を延ばせる技術も育ってきたし、ということで、ハードウェアはそのままに長く使える技術をパッチで取り込んで OS を進化させる方向に舵を切りました。

スペインは移動体事業者の数が日本よりも随分多いので、移動体事業者の方でもこのような事情を差別化のために利用しようとしています。Orange というおいしそうな名前の移動体事業者が、Samsung と提携して端末の長寿命化を推し進めようとしています。その Samsung はと言うと、4年間の Android OS のアップデートと5年間のセキュリティパッチの提供を保証してもらうことを Google と合意しました。こうして、業界一体となって、自分たちのビジネスの「持続可能な社会」作りに取り組み出したのです。

記事に各国の持ち味が出る

こうやって、各国の記事を読み比べると、それぞれのお国事情がにじみ出た報道になっていることがよく分かります。アメリカは最先端の通信技術、中国はスマホのモノ作り技術、スペインは「持続可能な社会」実現という理念、というそれぞれの持ち味が出ています。

こういったところも、マルチリンガルを目指していると、面白いと感じるところです。

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