英語で “green-eyed”、中国語だと “眼红” というと嫉妬したり、妬んだりする表現です。このように目、特に目の色は口ほどに物を言います。サッカー日本代表は「サムライブルー」ですが、青は目と組み合わせても好ましい印象を持つようです。
日英中で多い目+色の表現
各言語で見られる目+色の表現を勉強がてら調べてみました。それが下の表です。
日英中では、いろいろとおもしろい比喩的表現があります。一方、スペイン語とポルトガル語については、不思議と目は色と組み合わせて表現することは少ないようです。単に調べが浅いだけかもしれません。そこは悪しからずです。一応、ChatGPTやGoogle Bardにも当たってみたのですが、芳しい答えは返って来ませんでした。
面白いことに共通しているのが「黄色い目」という表現が見当たらない点です。日本語だと「黄色い声」というと、女性や子供などの甲高い声を指し、一般には歓声を意味します。しかし、目と組み合わせた表現はありません。ググると、加齢黄斑変性という目の病気の記事が多数引っかかります。同様に他の言語でも病気との関係しか見当たりませんでした。
嫉妬心は英語では緑、中国語では赤
嫉妬心を表現するのに、目を使うのはごく自然なことだと思います。隣の芝生は青く見えるものです。日本語では嫉妬心を燃やす人の目の色についての表現はありません。羨むものが青く見えるだけです。
英語ではどうでしょう。”green-eyed” と表現します。ちょっと目が緑だとどうして嫉妬していることになるのでしょうか。これは英語圏の人たちも、シェークスピアが言い始めたからとしか言えないでしょう。シェークスピア四大悲劇の1つ『Othello /オセロー』に “the green-eyed monster” として出てくるのです。シェークスピアが「緑の目は嫉妬の目」と言うからには、誰も逆らえないのです。
Green-eyed中国語にはシェークスピアのくび木はありません。ですので、自然に嫉妬の感情が発露して目に現れると、どういう色になるか、という発想からだと思いますが、“眼红 (Yǎnhóng)” という表現になります。これで「嫉妬する」という動詞になります。怒りの表現としても使います。何れにしても、あまり好ましくない感情を表現します。
中国から日本に伝わった白眼の感情
日本で「白い目で見る」や「白眼視する」と言います。中国の故事から来た表現です。三国時代に活躍した文化人の阮籍が民度が低い人に会う時には白い目で接し、民度が高い人と会う場合は青い目で応対したそうです。このことから、中国語でも、“白眼 (Báiyǎn)” は蔑視の意味があります。
「洋の東西でこんなに違う白色のイメージ」の回で説明したように、中国人が抱く「白」のイメージは徹頭徹尾悪いことに結びついています。最近では、西洋文化の接する機会が多く大分変ってきているとは思いますが。
日本では白は割と好ましい色としての扱いが多いと思います。その中では、白目はやや異色のキャラだと言えます。
万国共通で好ましい色「青」
“白眼” 対して、中国の “青眼 (Qīngyǎn)” には尊敬の意味があります。これも先ほど紹介した故事が由来です。どうも青には万国共通で好ましい色のイメージがあるようです。
嫉妬心の表現紹介のところで日本語の「隣の芝生は青く見える」という決まり文句を挙げました。これなど青が好ましいもので羨ましいもの、そうありたいと願うものの象徴になっています。サッカー日本代表が「サムライブルー」で決めているのを見ても、やはり日本では好印象の色です。
英語ではどうでしょうか。英語でも “blue-eyed” は無邪気なことを意味します。穢れがないイメージです。目の話題からは脇道に逸れてしまいますが、”blue-blooded” という表現もあります。字面通りにいくと「青い血の」となりますが、人であれば「高貴な」という意味だったり、犬だったら「血統書付きの」ということになります。これなど、まさに好ましいものを指す表現そのものです。
スペイン語では慣用表現とまではいきませんが、”Ojos Azules” という曲があるのを見つけました。この歌詞の中で以下のように歌われています。
Ojos azules
“Ojos Azules” por Leo Dan
Como es el cielo
De mi santiago que tanto quiero que tanto quiero
恋人サンチアゴが持つ空のように青い目を讃えているのです。
日本語は「碧眼」と言えば、青い目の欧米人を指します。この言葉は黒船が来航し開国を迫られている時代に生まれました。込められたのは、その当時に欧米人が持つ科学技術力に対する畏敬の念もあっただろうと思います。それが日本の明治時代の文明開化へとつながっていくのです。
まとめ / Takeaway
- どの国も「青」には好印象を持っており、「青い目」も然り
- 嫉妬心を目の色を使って表現するが、文化背景で色が異なり、英語は緑、中国語は赤
- 日本では全般的に白は好印象だが、「白目」は古代中国の影響から日本でも好ましくない
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