最新の研究で、マウスの脳の深部にある視床下部で塩分濃度が高くなると、血流が悪くなることが分かったそうです。 生きたマウスのお尻から生理食塩水より濃い食塩水を注入し、視床下部を観察したところ、確かに血管が収縮したのです。
塩分を摂り過ぎると、頭の血流が悪くなる
Cell Reportに掲載された論文によると、マウスの脳の深部にある視床下部というところで塩分濃度が高くなると、その部分の血流が悪くなることが分かったそうです。 かわいそうですが、生きたマウスの脳の深いところにある視床下部まで顕微鏡を挿入して、これまたかわいそうですが、マウスのお尻から生理食塩水より15%程度濃度が高い食塩水を注入して、ごく狭い範囲で何が起きるか実際に観察したところ、確かに血管が収縮したそうです。
食塩(NaCl)に含まれるナトリウムイオンに反応して、先ず視床下部の中で血管を収縮させるホルモン作る神経細胞が興奮します。そして血管を収縮させるホルモンを分泌することで、周辺の血管を収縮させます。その結果、血液に流れてくる赤血球の数が減り、したがって酸素濃度も下がるところまで測定しています。
これでもかというぐらい実証データを積み上げて説明しているので、読みごたえがありました。血管は動脈か静脈か見分けがつくように染色して区別して顕微鏡で見ています。そして高濃度の食塩水を注入して動脈の直径がだんだん小さくなっていくのを時間経過で観察しています。偶然でないことは5匹のマウスで確かめているにもかかわらず、さらにナトリウムイオンがはまる鍵穴を薬品で塞いでおいて、 高濃度の食塩水を注入しても動脈の直径が変わらないことも確認しています。さらに、血管を収縮させるホルモンの受容体を塞いでホルモンが働かないようにすることでも、動脈の直径が変わらないことを確認しています。
そして今度は動脈が収縮するわけだから、血の巡りが悪くなっているはずなので、その証拠を見つけるため、赤血球の流れる速度を測定して確かに遅くなっていることを確かめつつ、血中酸素濃度が下がっていることも測定しています。さらには、新型コロナウイルスの検査でおなじみのPCR検査を使って、低酸素になると現れるメッセンジャーRNA(mRNA)の数が増えていることを確認しています。
大脳皮質のような脳の外側にある組織でも同じように塩分濃度が高くなると血行が悪くなることが知られていました。 大脳皮質は fMRI でメスを入れずに粗くは観察できますが、その手が使えない脳の深いところに顕微鏡を入れて、微小な世界で実際に何が起こっているのかリアルタイムで観察したところがこの論文の真骨頂です。
日常的に塩分を摂り過ぎると、認知症になるかも
ということは、塩分を摂り過ぎると、一時的に脳は酸欠になるということです。これは事実のようで、他にも別のメカニズムで塩分が小腸に届くと、塩分に免疫細胞が反応して放出する物質が神経を伝って脳まで届き、脳の血管の内壁にある細胞が一酸化窒素(NO)を作るのを妨げるメカニズムを解き明かした論文があります。一酸化窒素は大気汚染物質として悪名高いNOxの一種ですが、血管の内壁を柔らかくする働きがあって、動脈硬化を抑えて血行を良くしてくれるいい面も持っています。
日常的に塩分を摂り過ぎていると、脳が酸欠になる時間が長くなり、脳細胞の活動レベルが下がるでしょうし、もしかしたらたまらず死んでいってしまうことも十分に考えられます。これすなわち、認知症の症状ですよね。
岩塩などの天然塩なら体にいいのか
上で紹介した論文は食塩(塩化ナトリウム)が高い濃度だと脳の血流を悪くするという話でした。では、岩塩や海水を天日干しする昔ながらの製法で作った塩なら塩辛くてもよいのでしょうか?
このような塩にはマグネシウムなどのにがり成分が含まれているので、にがり成分がどうはたらくかが分かればよいでしょう。確かにマグネシウムは血管を拡張する作用があるそうですが、うちにある岩塩の成分表を見る限り、しょせんは多勢(塩化ナトリウム 98.0g)に無勢(マグネシウム 75mg)です。「天然塩を使った方がまし」程度にとらえて、用心して塩分摂取量は控えめにした方がよいでしょう。
どうしても塩辛いのがお好きならば、私のように一食抜いてみてはどうでしょうか。だいたい3分の1の塩分摂取量を減らせることが期待できます。『16時間断食ダイエットで嫁のいびきが消えました』の回で紹介している16時間断食がお奨めです。きっとあなたにも何か体調改善が起きると思います。
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