これから説明する修道女研究によると、4つ以上の言語を話す修道女の6%しか認知症を発症しなかったそうです。この結果にヒントを得て、往生するまでの趣味=習慣作りとしてマルチリンガルになることを志すことにしました。
修道女研究とは?
多言語学習に関心を持ったのは、修道女研究に関する記事を読んだのがきっかけでした。アメリカにあるノートルダム寺院に所属する325人の修道女を対象にした研究です。ご興味がある方は、ScienceDaily.comというサイトで ”What multilingual nuns can tell us about dementia” で検索してみてください。
修道女研究は心理学の世界では、一卵性双生児研究と双璧をなすものです。一卵性双生児研究の方は実家で育った方と里子に出された方のそれぞれのその後を追跡するもので、遺伝要因が同じで環境要因が違うという視点で性格やいろいろな病気のなりやすさなどの要因を切り分けるのに役立っています。一方、修道女研究の方は、出自が違う人たちが大人になってから以降、共に生活するので、 一卵性双生児研究と逆に、環境要因が同じで遺伝要因が違うという視点で要因切り分けに役立っています。
ちなみに、このような研究結果を踏まえた心理学の本を読むと、一般知能とビッグファイブと呼ばれる外向性、協調性、良識性、情緒安定性、知的好奇心は遺伝要因が結構関係していることになっています。しかし、今からでもよくすることができるのはどこなのかの方が、人生にとって有意義です。
認知症のなりやすさと使える言語の数は関係がありそう
この記事によると、4つ以上の言語を話す修道女の6%しか認知症を発症しなかったのに対し、1つしか話さなかった修道女の31%が認知症を発症したそうです。但し、3つ以下の言語を知っていても、認知症リスクは大幅に軽減されなかったそうです。
あくまで相関があるということなので、因果関係の向きを環境要因と考えると、「いろいろな言語を話せる能力⇒認知症になりにくい」と考えるのが自然です。一方、遺伝要因と考えると、「認知症になりにくい⇒いろいろな言語を話せる能力」と捉えることもできます。
どちらなのか分かりませんが、とりあえず、私は「4か国語以上の言語を話せる能力⇒認知症になりにくい」と考える方が自然と思いました。若い頃に4か国語以上をマスタしていることが必要ならば、どうしようもありませんが、手前勝手な解釈をして、今からでも遅くないと考えて、還暦を迎えるまでには 4つ以上、できれば5つの言語をせめて日常会話レベル程度まではマスタすることを目指して勉強を始めることにしました。
「読む・書く・聴く・話す」の4技能の中でも、特にアウトプットに関わる「書く・話す」が重要のようです。「作文力を鍛えると、認知力が衰えても戻って来られる」の回で紹介した論文では、修道女が書き残した日記を分析して、1つの文に詰め込む情報量の多さと構文の複雑さが重要だということを示しています。「話す」も同様でしょう。
マスタする目標は4か国語に決定
まず外国語として学ぶ対象を英語、中国語、ブラジル・ポルトガル語そしてスペイン語の4か国語にしました。これらに母国語の日本語を加えて、5つの言語を目標にしたのは、つながりの数(辺の数+対角線の数)が四角形の場合は6で4の1.5倍です。五角形になると、それが5の2倍の10つになるからです。
もっと多角形になれば、つながりの数は2次関数的に増えていきます(ちなみに数式にすると、N角形のつながりの数は N+N*(N-3)/2 になります)。子供が中学受験するというので、いろいろな学校の学校説明会を回りました。その時につながりの数の増え方に関して、上のような講話をなさっていた方がいて、とても印象に残りました。
お気づきと思いますが、三角形は対角線がなく、辺しかありませんので、つながりの数は3つのままです。ここからは私の解釈ですが、おそらく4つ以上の言語が話せる修道女の脳の中は、それぞれの言語の間で上の図ようなネットワークができていて、他の人と同じように脳に老化によるダメージがあっても、まだまだ迂回経路が残っているので、外からは機能が低下しているように見えて来ないのだと思います。
人生100年時代が本当なら、もっと時間ができそうです。外国語学習を趣味=習慣にしてしまえば、死ぬまで趣味にするネタは尽きません。しかも、投資する道具もスマホがあってその気になれば、いつでもどこでも始められます。お金はそれほどかからず、時間の制約もそれほどないのが良いところです。
事始めに、学ぶ対象として、英語、中国語、ブラジル・ポルトガル語そしてスペイン語の4か国語を選びました。その理由については、「4か国語に英語、中国語、ポルトガル語、スペイン語を選んだ理由は人口&GDPカバー率の高さ」の回をご覧ください。
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