テレビは必要か

Minimalist 科学技術

2011年にアナログテレビ放送を停波する際、デジタル放送受信用のセットトップボックスを配布しました。そこまでしてテレビ放送自体を存続させました。NHKのインターネット放送の話も出ていますが、ネット全盛時代に放送という一方向媒体のためだけに電波帯域は必要でしょうか。

デジタル放送はプラチナバンドを増やすための電波帯域整理

アナログ放送停波からデジタル放送移行への流れは、単なるアナログ時代からデジタル時代への移行というだけの話ではありませんでした。放送や通信は電波を使っています。電波は周波数が高くなればなるほど障害物があると透過しませんし、透過しないまでも障害物の背後に回り込んで進むこと(回折)もできなくなっていきます。そのため、遍く効率よく電波を届けようとすると、低い周波数帯が魅力的なのです。

かと言って、あまりに低い周波数帯はそもそも広い周波数帯を確保できませんので、大量のデータを高速に通信するには力不足です。アンテナも大きなものが必要になってしまうので、アンテナを立てる必要もあります。

それで、プラチナバンドという言葉があるように、800 MHz前後の周波数帯が大人気なのです。テレビがアナログ放送だった頃は770 MHzまで周波数帯域を利用していたのですが、現在のデジタル放送になる時に、710 MHzまでを他の用途に譲ったのです。アナログ方式からデジタル方式に電波送信方法を変えたことで周波数帯域当たりに通信できるデータ量を増やすことができるようになり、電波の利用効率が上がったからです。

携帯電話会社をもう一社増やして競争を促進することで、携帯電話料金を下げる道があったはずです。しかし、浮いた710 MHzから770 MHzまでの極上の周波数帯域を別の用途にも使ってしまいました。後悔先に立たずです。

NHKのインターネット同時放送

NHKがNHKプラスで電波とインターネットで同時配信しています。NHKは現在地上波デジタルを2チャンネル持っています。放送事業者はコンテンツ提供が本来の生業のはずです。電波放送設備運営はどちらかというと、電波で放送しなければコンテンツを届けられないので、やむを得ず今までそうしていました、という立場のはずです。

そうだとすれば、インターネット配信の方が上手くいけば、電波の方を手放してもいいのではないでしょうか。民間放送についても同じことが言えます。

自分が子どもの頃に不思議に思っていたのが、テレビ放送の夕方の時間帯に放映されていた番組再放送です。ゴールデンタイムに流した番組を見ることができなかった人のために、再放送していたわけです。再放送番組を待ち焦がれていた人がどれぐらいいたのか不明ですが、立場上、義務的に不休でサービスし続けなければならないけれでも、新しい番組を制作していたら、費用対効果が合わなかったのでしょう。

インターネット時代になって、そんなことを気にする必要もなくなりました。ニュース番組を見たければ、YouTubeで探せば済みますし、ザックリ「何」が知りたいだけなら、ネット上の記事を見れば済みます。NHKは無料のスマホアプリを出していますので、それを見れば事足ります。「NHK, BBC, VOA 英語ニュース情報ソース比較」の回で書きましたが、NHK Worldというスマホアプリは20か国語以上もの多言語対応していますので、語学にも使えます。

ただ、このような無料スマホアプリを出せるのも、NHKプラスで番組をインターネット配信できるのも、電波放送に対して国民が受信料を納めているからできることではあります。電波放送を止めるとなると、受信料の財源をどうするのかという話が出てきます。

NHK自体が携帯電話会社になって、浮かせたテレビ放送電波周波数帯で事業するのはどうか思います。事業転換です。電波放送設備が電波通信設備に変わり、運営が必要なことに変わりありませんので、雇用も確保できるかもしれません。

若年層のテレビ離れ

そんなことを真剣に考えなければならないのも、テレビ視聴者が高齢者だけになってしまったからです。電車に乗っていると見かける若年層はみなさんゲームをしています。そうでなければ、SNSをやっています。そうでなければ、YouTube、もしくはNexfixかAmazon Primeか何かの番組を見ています。

スマホで地上波デジタル放送を見ている人はごくまれです。そもそも、地上波デジタル放送を視聴できるスマホ自体が少なくなってしまいました。もはやテレビ復権は、床にこぼした水を元のコップにすべて戻すより難しいでしょう。

若くはありませんが、私自身もテレビ番組を見なくなって、かれこれ20年ぐらいになります。家にテレビは置いてあります。しかし、日頃コンセントさえ挿していません。子どもが小さかった頃は、たまにDVDで映画を見たりするには使っていました。でも、そもそもアンテナからの同軸ケーブルさえ挿していませんので、テレビに番組が映ることはあり得ないのです。

こんな状態ですので、当然今のテレビはB-CASカード用のスロットがなくなったことも、最近まで知りませんでした。スマホもSIMカードがeSIMになっているぐらいですので時代の流れと言えば流れです。だからと言って、情報世捨て人のような状態になっているかというと、そんなことはありません。

個々人の趣味趣向が多様化してきている中、誰もが知っている見聞きしているという情報も少なくなってきていて、災害情報や世の中の流れを知るためのニュースなどに限られてきています。これまでテレビ放送は重い責務を担ってきたわけですが、肩の荷が下りたという見方もできます。テレビ放送を代替できる、あるいはそれ以上の手段が選択肢としていくつも育ちました。

無料で使用しているプラチナバンドの有効活用を考えるべき時が来ているのではないでしょうか。

楽天モバイルの苦境

携帯電話会社4社目として参入した楽天モバイルが苦境にあります。心底から携帯電話料金を下げたいと思うならば、今こそ貴重な電波資源の効率利用を考え直すべき時なのではないでしょうか。

現在地上波デジタル放送が使っている電波周波数帯域は割に低い周波数帯域なので、スマホに搭載できるアンテナが作れるのかというと微妙な気がします。しかし、現在の携帯電話用電波帯域にチャンネル間の干渉を避けるために設けているガードバンドがあります。これなども含めて考えれば何か良い手も出てくるかもしれません。最近は飛び地の電波帯域でも束ねて一つの地続きの電波帯域のように使える技術もあります。

知恵を絞って交通整理すれば、カラータイマーが赤に点滅しているウルトラ戦士を救えるかもしれません(テレビ放送を見ていないもので、古い喩えで恐縮です)。

テレビ受像機の方はPCモニタとして活用

また私事ですが、テレビ放送を20年近く見ておらず、電源も入っていないテレビ受像機の扱いをどうしようかと考えた末、まだ捨てないことにしました。

というのも、頻繁に横に長いExcelの表を見ることが多くなり、PCモニタが欲しいと思っていたところで、PCモニタとして十分に使えることが分かったからです。地上波デジタル放送の高精細映像を表示できる性能があり、HDMI端子もあるので、PCの拡張画面を表示するには十分だからです。外観は古いです。最新モデルのような狭額縁ではなく、幅広の枠に囲われた画面です。

しかし、20年近く電源も入れていなかったので、画面は新品同様に綺麗なものです。PCモニタ代わりにほぼ静止画ばかり映すので、これから焼き付いたりするようなことがあるかもしれませんが、あと数年は十分使えそうです。画面サイズが42インチの古い家電製品なので、電気代はかかると思います。ですが、横に長いExcelの表を小さな画面で見ることを考えると、結果的に目を悪くしないで済み、医療費がかからなくて済むかもしれません。

立って仕事をするにしても、42インチの画面サイズなので、それほど違和感はありません。座って画面を見上げるよりも、むしろ立って上から見下ろすぐらいの方が、ドライアイにならずに済みそうです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました