鼻うがいでボケを吹っ飛ばそう

nasal gargle 科学技術
UnsplashのCDCが撮影した写真
2023.05.28

歯周病と並んで鼻腔に感染する病原菌も神経を伝って脳内に入り炎症を起こします。それを退治するのにアミロイドβで鳥もちのように絡め捕ります。それが排泄されずに沈着すると、認知症になる可能性があります。鼻うがいで鼻腔をこまめに掃除しましょう。

ありふれた病原菌がまさか…

動物実験の話ですが、肺炎クラミジア（Chlamydia pneumoniae）が臭覚神経や三叉神経を伝って脳内に入り炎症を起こすのです。そして脳は免疫反応として、アミロイドβを放出して鳥もちのようにこの病原菌を絡め捕ります。しかし、上手く脳から排泄されずに残ると、アルツハイマー型認知症の特徴である老人斑になってしまうそうです（文献１）。

血管経由では脳血管関門に阻まれて脳に入れないのですが、神経経由とは病原菌も考えました。敵もさるもの引っ搔くものです。感心していられないのは、この病原菌はヒトにとっては風邪の病原菌の一つで、肺炎の 5〜10 ％ の原因になっているのです。ごくありふれた病原菌なわけです。厄介です。ヒトも同じメカニズムで認知症などの神経変性疾患を起こすだろうということは容易に想像できます。

コロナ禍の頃は誰しも欠かさずマスクをしていたので、感染することも少なかったでしょう。私も風邪はおろかインフルエンザなどの呼吸器系疾患からは解放されて、不快な症状に悩まされることはなく快適でした。新型コロナが５類感染症に格下げされて、マスク装着が義務でなくなりました。また再び風邪を引くことになるでしょう。

「〇〇予防接種はボケ除けになる」の回で、予防接種を打つと認知症予防になる、ということを疫学研究論文をいくつか引用して紹介しました。現在唱えられている仮説も併せていくつか紹介しました。その中にはありませんでしたが、そもそも感染できなければ、神経を伝って脳に侵入するという一番入りやすい経路を封じることになります。

そういう意味でも、予防接種は受けておいて損はないでしょう。しかし残念なことに、肺炎クラミジアには予防接種がないのです。どうすれば予防できるでしょうか。

PM2.5、NOxなどの大気汚染も要注意

PM2.5などの大気を漂う微粒子や一酸化窒素 (NO) や二酸化窒素 (NO2)などの総称してNOxと呼ばれる大気汚染物質も要注意です。

特に直径が 2.5 µm 以下の微粒子である PM2.5はアルツハイマー型認知症とパーキンソン病の原因の一つだと考えられています。因果関係は仮説ですが、少なくとも複数の類似の疫学研究結果を統計的に統合したメタアナリシスで正の相関があることが示されています（文献２，３）。

NOx や一酸化炭素 (CO) 、二酸化硫黄 (SO2) などの大気汚染物質は、PM2.5 ほど顕著な相関が見られず、統計的に有意とまでは言えないようです。PM10 と呼ばれる直径が 10 um 以下の微粒子も同様です。

このことから気体ほど小さい分子だと、化学的に活性が高くなければ脳にあまり害はなく、ある程度の大きさを持った微粒子であることが必要そうです。そのサイズが直径 2.5 µm 以下だと、おそらく脳に入って行くことがありえて、結果的に脳神経にダメージを与えるのでしょう。

PM2.5 を肺や鼻腔に取り込まないようにするには、普通のマスクでは力不足で、それこそ N95 級のマスクが必要になってきます。それはそれで息苦しいですし、お金もかかります。他に次善策はないのでしょうか。

都市伝説：サーファーに認知症や花粉症が少ない

誰も検証していないので、あくまで都市伝説です。そういう断り書きをした上で、敢えて言いますと、どうやらサーファーに認知症や花粉症が少ないらしいです。この辺をイグノーベル賞的に研究している方がいるとよいですが、残念ながら確かなエビデンスは見つかりませんでした。ですので、あくまで都市伝説です。

もし本当だったら、サーフィンをやっていると、海水をしょっちゅう鼻に吸い込んでしまうでしょうから、自然と鼻うがいができていることが幸いしているのではないかと考えました。

だとしたら、鼻うがいがよいのではないか

サーファーの都市伝説を脇に置いても、「ボケる前の転ばぬ先の杖になる豆知識」の回で触れたように、歯周病を防ぐと認知症予防になると言われ始めています。ですので、同じように鼻うがいすれば、認知症を予防できるかもしれません。

鼻うがいの方法は非常に簡単です。

  1. スポイトボトルに水を入れる
  2. 生理食塩水と同じ濃度になるまで塩を溶かし込む
  3. スポイトを片方の鼻の穴に挿し入れて、塩水を鼻の中に注入する
  4. スポイトを挿し入れたのとは反対側の鼻の穴から塩水を流し出す
  5. 片方の鼻の穴が終わったら、もう片方の鼻の穴も 1 ~ 4 の要領で掃除する。

これだけです。塩は海水を天日干しして作った天然塩がお奨めです。マグネシウムも含まれるので、鼻の粘膜にも優しいからです。天然塩はスーパー、スポイトボトルは百均ショップで買い求められるでしょう。

１日１回か２日に１回程度で十分だと思います。それだけでも鼻の通りがよくなり、気分が爽快になるので、メンタル面からもお勧めです。

[参考文献]

  1. Chacko, A., Delbaz, A., Walkden, H. et al. Chlamydia pneumoniae can infect the central nervous system via the olfactory and trigeminal nerves and contributes to Alzheimer’s disease risk. Sci Rep 12, 2759 (2022). https://doi.org/10.1038/s41598-022-06749-9
  2. Haneen Khreis, Christiaan Bredell, Kwan Wai Fung, Lucy Hong, Magdalena Szybka, Veronica Phillips, Ali Abbas, Youn-Hee Lim, Zorana Jovanovic Andersen, James Woodcock, Carol Brayne. Impact of long-term air pollution exposure on incidence of neurodegenerative diseases: A protocol for a systematic review and exposure-response meta-analysis. Environment International, Volume 170 (2022), 107596. https://doi.org/10.1016/j.envint.2022.107596
  3. Wilker EH, Osman M, Weisskopf MG. Ambient air pollution and clinical dementia: systematic review and meta-analysis. BMJ. 2023 Apr 5;381:e071620. doi: 10.1136/bmj-2022-071620. PMID: 37019461.

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