進化し続ける Duolingo の間隔反復学習法

Fútbol 科学技術
Fútbol

スペイン語の勉強を習慣にしてくれるSpanishDict」の回で、Duolingoが徐々に間隔を延ばす復習方法に対して、SpanishDict は一定間隔復習方法を採用しており、『進化する勉強法』の中で紹介された実験結果を見る限り、SpanishDict に軍配が上がることを紹介しました。結論は変わりませんが、Duolingo も進化しています。

Duolingo は間隔反復学習法を進化させている

Duolingo に Duolingo Research というページがあります。ここで、お抱えの言語学習研究者の研究成果を公開しています。その研究成果の1つが間隔反復学習法に関する論文になっています。

創立以来、エビングハウスの忘却曲線に基づいて、忘れかけた時にもう一度復習テストを行い、復習テストの間隔を徐々に延ばしていって、最後に長期記憶として定着させるという方法は変わっていません。しかし、人それぞれ持っている忘却曲線は違うので、平均的なモデルにみんな合わせると、学習進度が速すぎたり遅すぎたりすることになります。

そこで、人それぞれの忘却曲線を測定して、その人の単語の「半減期」を測定する方法を導き出しました。具体的には、復習テストをやって、その正答率を求めて、前の復習テストから経過した時間と正答率のデータを何度もとって忘却曲線を推定するのです。機械学習でよくやる損失関数を立てて、損失関数が極小になるときの条件を求める方法で推定します。

彼らはこの新しい方法のことを半減期再帰法 / Half Life Regression (HLR) と呼んでいます。Duolingo のスペイン語コースに現在取り組んでいますが、道理で何度も繰り返して、同じスペイン語の単語について、対応する英単語とのマッチング・テストをやらされるわけです。訳が分かりました。

ちなみに、Duolingoのスペイン語コースを頑張って続けていて、現在、470日間連続学習記録を更新中です。

現在、470日間連続学習記録更新中

HLR法は従来の間隔反復学習法より効果的

間隔反復学習法の代表的なものとして、始めた人の名前を取って、それぞれ Pimsleur 法と Leitner 法というものがあります。Pimsleur 法は単純にある一定の比率で復習する時間間隔を延ばしていく方法です。この欠点は、毎日欠かさずか、少なくともある一定の時間ごとに勉強する几帳面な人に打ってつけの方法ですが、その日気分で勉強するしないが一定しないズボラな人に対しては効果が薄くなります。

もう1つの Leitner 法の方は、正答したら、次の復習は前の復習との間隔に比べて遅めにして、間違えたら、次の復習は前の復習との間隔よりも早めに行うようにします。感覚的にも、 Pimsleur 法よりも Leitner 法の方が効果的と分かります。

そして、Pimsleur 法、 Leitner 法と HLR 法の3つを 1億3千万近くの学習データを使って比較したところ、HLR 法が、被験者の正答率予測と実際の正答率の差が最も小さく、単語の半減期予測も一番よかったのです。

「単語を思い出したけど、間違っていました」は多い

しかし、HLR 法もまだ改良の必要がありそうです。「単語を思い出したはいいけれど、間違っていました」という場合が Leitner 法よりも多いのです。 Leitner 法ははっきりと間違ったらペナルティーとして復習テストを前倒して行うので、学習効果が高いのかもしれません。

とは言え、その差は統計的には意味ある差ですが、微々たるものでした。実際の入試などの試験では、この正確さが合否の分かれ目に大きく関係してきそうな気もするので、微々たる差でも侮れないところもありますが。

その他、良かれと思って、一般に覚えるのが難しい単語は特別扱いして、多めに復習するなどの手加減を加えたりする実験も行っています。論文の中で行った実験では、逆効果という結果でした。何度も挫折感を味わって嫌気がさすのでしょう、被験者があまり学習しなくなりました。

ここはなかなか難しいところです。学習意欲を削がないように、覚えるのが難しい単語を教えるのは難しいことがよく分かります。被験者はアメリカ人でした。そして、学習対象はフランス語とスペイン語でした。人称によって動詞の活用が違う点は、英語にはなく、とっつきにくく覚えるのが難しい代表です。こういうところに顕著に逆効果が現れました。

結局結論変わらず、几帳面な人には SpanishDict が効果的か

「スペイン語の勉強を習慣にしてくれるSpanishDict」の回で述べたように、一定間隔できっちり勉強するような几帳面な人には SpanishDict の方が効果的でしょう。結局のところ、結論は変わりません。

しかし、気まぐれに日によって勉強したりしなかったりする人には、Duolingo の HLR 法は救世主になるでしょう。何せ Duolingo の方で忘却曲線を測定してくれます。そして、一番効果的な時間間隔で復習テストを繰り返してくれます。ですから、自分で学習計画を立てる必要がありません。それでいて、学習結果はそれなりに現れるのです。

もっとも、ズボラな人よりは几帳面な人の方が、そもそも速く習得できるでしょうが。

コメント

タイトルとURLをコピーしました