語句を単独で覚えるのでは使えない訳

Language Learning 語学
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外国語の語句をフラッシュカードで覚える方も多いと思います。最新の研究によると、脳の中で語句と文では取り扱いが異なるようです。語句を単独で覚えるのでは使えない理由がはっきり分かりました。

フラッシュカードの功罪

外国語の語句をフラッシュカードで覚える方も多いと思います。語学は文法や構文をそれなりにマスターしたら、後は語彙力ということがあるのは否めません。

そのため、効率を考えると、覚えたい外国語の語句をフラッシュカードの表に書いて、裏に日本語の意味を書いて、覚えているか裏をめくって答え合わせするというのは、よい方法のように思えます。今でも、通学する学生さんが電車の中でフラッシュカードをめくっている光景にたまに出くわすことがあります。

「文の中で使われる用例ごと覚えないと、生きた使い方は身につかない」という注意をよく耳にします。確かにその通りです。文法や構文を覚えたら、語句は穴埋めするための部品に過ぎないという意見があります。書いてある文章を見ると、確かにそう思うのも無理はないでしょう。

TOEIC や HSK などの言語運用能力を測るテストでは、必ずと言っていいほど、文章の中で意味が通るように選択肢の中から語句を選ぶ問題が出題されます。

「読む」、「書く」、「聞く」、「話す」の4技能のうち、「読む」と「書く」については、もしかしたら、フラッシュカードで覚えた語句が役に立つかもしれません。しかし、「聞く」、「話す」の方はそれが通用しないようです。

語句を聞く時と文を聞く時とでは脳の使い方が違う

“The red vase” と “The vase is red.” はそれぞれほぼ同じ意味を持つ英語の語句と文です。語順は違います。スペイン語であれば、 “El jarrón rojo” と “El jarrón es roja.” になります。語句と文で単語の並びは同じで、英語で言うと “is” に相当する動詞の “es” が途中に入るだけです。しかし、音節は “El jarrón rojo” が5つで、 “El jarrón es roja.” の方は6つです。

これがオランダ語になると、”De rode vas” と “De vas is rood.” になるそうです。語順は英語のように語句と文で異なりますが、音節は4つで同じです。

このように、オランダ語の意味と音節数を合わせた語句と文の組み合わせをいくつも被験者に聞いてもらいました。そして、脳波計で測定したところ、語句と文とでは、脳波が出る場所や強さ、それから脳波が出るタイミングが異なったのです(論文)。意味と音節数を同じにしたのにです。

明らかに、脳の中で語句の処理と文の処理が違ったのです。文の処理の方が関係する脳の部位が多く、それだけ関係する神経細胞の数も多いので、脳波が強く出ました。この脳波は7.5 ~ 13.5 Hz程度の周波数のアルファ波と呼ばれるものです。また、音そのものに反応する部位の関与が比較的小さいようで、音を処理する脳の部位からの脳波は小さかったのです。また、脳波が発生し始めるタイミングは語句を聞いた時よりも文を聞いた時の方が早かったのです。

この結果が意味するところは、非常に簡単です。語句だけ文から切り離して練習しても、必要な脳の部位を鍛えることにはつながらないおそれがあるということです。

使う文法モジュールも違うし、韻律も違う

当然のことながら、語句には文にある要素が抜けています。そのため、脳の中で使う文法モジュールが違ってくるでしょう。構文も修飾関係程度で単純です。

それから、韻律あるいはプロソディーが違ってきます。文章の中で語句が使われる時に、書いてあるものは形を変えたりしませんが、これが話す時には、前後の語句の音の影響を受けて音が変化します。

これがまさに「日常英会話の「音の変化」を聞き取るための教材」の回で紹介した『ボトムアップ式 映画英語のリスニング』(森田勝之 編著)が提起する課題です。タモリの空耳アワーよろしく “What time is it now?” が「掘ったイモいじくるな」に聞こえる所以です。そう聞こえてしまうのが間違っているのではなく、そう聞こえるのが自然なのです。

実際に使うための言語を学ぶのですから、避けて通れない関門です。語句は文として覚えましょう。用例は多いに越したことはありません。

語彙力養成の教材は音声ありの用例が豊富なものを選ぶ

したがって、結論としては、語彙力養成の教材は音声ありの用例が豊富なものを選ぶに尽きます。スマホで使う辞書アプリの例ですと、私が愛用しているのは、中国語であれば、「中英/英中辞書アプリ “Pleco” 優れものです」の回と「Pleco 方式の声調色使いで楽しく中国語音読練習」の回で紹介した Pleco です。

英語とスペイン語であれば、「スペイン語の勉強を習慣にしてくれるSpanishDict」の回で紹介した SpanishDict です。なぜ英語も SpanishDict を使うのでしょうか。それは、英英辞典としても十分使えるからです。そして、英文の用例も音声付きで豊富に用意されています。非常にお得感があります。

用例が豊富かどうかにこだわって、是非、自分に合った教材を見つけてください。

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