英語との対比させた説明がよいポルトガル語の文法書 “Essential Portuguese Grammar”

コルドバの丘のキリスト像 語学
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ポルトガル語とスペイン語は日本語と遠いこともあり、日本語の教材を使うとややとっつきにくいと感じる人も多いのではないでしょうか。第1外国語としてポルトガル語やスペイン語を学ぶ人はそう多くはないと思います。ですので、英語で書かれた教材を使うことをお勧めします。

ポルトガル語 or スペイン語は英語から攻めるのがよい

今回紹介する教材はまさに英語で書かれたポルトガル語の文法書 “Essential Portuguese Grammar” です。非常に薄手の本で、最後の索引を入れても114ページしかありませんので、取り掛かるのにそれほど敷居の高さは感じなくて済むと思います。その代わりドリルがついていませんので、問題集は別に買い揃えましょう。

以下の違いから、ポルトガル語/スペイン語は、日本語から見ると、英語がさらにややこしくなったものと感じられるでしょう。

  • 英語にはないアクセント記号がアルファベットに付くことがある(ポルトガル語の例: á, à, õ, ê)
  • 英語とは若干語順が違う(ポルトガル語の例:名詞に続いて形容詞 “um bolo grande / 大きなケーキ”)
  • 人称や時制によって、英語よりも動詞の語尾活用が多様(英語の例:現在形なら3人称単数の “s” ぐらい;ポルトガル語の例:人称の数×時制の数だけ語尾活用の種類がある)
  • 英語にはない名詞の性別がある
  • 接続法というものがあり、英語の仮定法に相当する使い方の他に、話し手から見たいろいろな主観的な表現ができる(というよりもしなければならない)

しかし、英語との数多い類似点を挙げていってもらって、それなりにありはしますが、相違点を少しずつ習っていくのでしたらどうでしょう。少し気が楽に感じると思います。富士山登山に例えると、日本語から始めると、海抜0mの富士川河口から登り始めるような感じですが、英語から始めると五合目までバスで行ってそこから登り始めるように感じると思います。ちょっと言い過ぎかもしれませんが。

先ず英語との類似点を解説して安心感を与える

本書では “SUGGESTIONS FOR VOCABULARY BUILDING” という章で、先ず英語との似ている例を挙げてから違いに関する説明に入っていきます。英語の “-tion” に相当するのは “ção” で、発音は似ているけど、文字にすると違うよね、といった具合です。語順も「ほらほら、S+V+Oで同じでしょう?」という感じです。実際は指示代名詞だと動詞の前に来たりしますが、それは後の方で説明していきます。

疑問文も「肯定文の最後に疑問符をつけて尻上がりに読むのは同じでしょう?」他にも「英語では do 動詞を前に持ってくる場合があるけど、ポルトガル語ではその時は動詞自体を前に持ってくるんだ」という対比での説明が続きます。

英語にはない名詞の性別について説明する時は、冠詞と複数形と合わせて説明しています。同じ冠詞と複数形がある言語同士である共通点を利用して、「名詞の性別に合わせて冠詞もそれが付く名詞も一緒に性別と複数形の語尾変化するんだよ」と語りかけます。

いつかは言い出さなければならない英語との決定的な違い

そして形容詞や副詞、人称代名詞、疑問詞疑問文と否定文の作り方、前置詞、接続詞など英語と似ている、あるあるネタの話を続けた後、いよいよ決定的な違いである動詞の語尾活用の説明に入っていきます。実際動詞の章が本書の後半すべてに費やされています。やはり英語から見ても動詞は手ごわいようです。それでも「動詞が人称によって語尾変化してくれるので、英語だと3人称単数の時しか動詞だけ見たんじゃ誰か分からないけど、ポルトガル語だったら、ほら、主語を省いても大丈夫じゃない、文が簡単になって便利でしょう?」というノリで説明するので、英語ベースに考えれば分かりやすいのではないでしょうか。

その他にも英語ベースに考えれば、あるあるネタを引き合いに出しておいて、違いを説明するというスタイルで一気通貫説明しています。接続法もそうです。英語にある仮定法、これをポルトガル語の接続法で書き換えると云々と説明しています。しかし、接続法の用法は英語の仮定法よりも広いので、その説明が少し物足りなさを感じます。接続法については、別の文法書で補う必要があるでしょう。

接続法の良書は 『ブラジル人による生きたブラジルポルトガル語 中級 』

接続法をちゃんと勉強するのに一番よかった教材は『ブラジル人による生きたブラジルポルトガル語 中級―基礎をとことん学びたい人のために』です。文構造をブロック図で示す図解が秀悦です。解説も日本人が陥りやすい間違いについてかゆいところに手が届いていると思います。例えば、ポルトガル語の “estar” は英語の be 動詞のうち、一時的な状態を表す側面を表すときに使います(ずっと変わらない状態を示す場合は別の “ser” という動詞を使います)。しかし、接続法で未来のことを示唆したい場合は「変わる」ことを強調するために “tornar-se” という動詞(英語だと ” turn to be”)を使った方がよいなど一段上のアドバイスをしてくれます。

個人的には、ポルトガル語の文法を学ぶのでしたら、今回紹介した2つを組み合わせれば十分なのではないかと思います。『ブラジル人による生きたブラジルポルトガル語 中級―基礎をとことん学びたい人のために』には各課ごとに練習問題がついていますので、間違えた問題を繰り返し解いて間違えないようにしていけばきっと力がつくと思います。

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