「NHK, BBC, VOA 英語ニュース情報ソース比較」の回で放送メディアの英語ニュースを比較しました。今回は英字新聞の比較です。私が現時点で辿り着いた結論として、The Economist をお勧めします。今回はこの結論に至った経緯に触れます。
先ずは各新聞を横並びに比較
先ずは読んでみたことがある新聞を横並びに比較してみたのが以下の表です。
私が選ぶ時のポイントとして選んだのが、上の表の「自分の(正直な)ニーズ」、「形態(日刊 or 週刊)」、「年間購読料」、「スマホ・アプリの充実度」です。正直なところ、科学技術ネタが好きなので、どうしても経済紙の方が点数甘めになってしまっています。
その中でも、△がなく、〇だけのものが、The Economist です。他の新聞ももちろんすばらしいのですが、時々刻々と変わる金融情報の洪水に毎日押し流されるのはよくありません。1週間ぐらい均した後に、それでも大事なことを知ることができればよいと思います。また、記事を読むのはそれなりに時間がかかります。耳が使えれば、歩きながらでも情報が得られます。ヒトは歩きながら聴くことはできるようにできています。
簡単に選定基準をまとめると、限られた時間で知りたいトレンドを手っ取り早く得ることができるか、です。この基準に一番近かったのが、The Economist です。
The Economist
彼らは週刊にも拘らず、自分たちのことを Newspaper と呼んでいます。ですので、表の中でも「週刊誌」とは書かずに、「週刊紙」としました。ただし、紙メディアの方は週刊である一方、スマホ・アプリでは、毎日記事が更新されますし、”The world in brief” というコーナーがあり、日々のニュースを手短に伝える努力もしています。私は毎朝この部分に目を通しています。
署名記事が一切ないことも特徴です。署名記事は他の新聞では最近珍しくないですが、この新聞では一般記事に記者の名前は出てきません。他の新聞同様にコラムを受け持つコラムニストがいます。しかし、実名は使わず、必ずペンネームになっています。創設以来変わらない決まり事だそうです。何ともユニークです。
世界的に有名な新聞で、週刊紙と言いながら、実はスマホ・アプリで毎日記事を更新していますので、日刊に近く(”The world in brief” 以外はその日のニュースというわけではありません)、その結果、年間購読料はそれほど高くないと感じます。
スマホ・アプリは何と言っても、ほとんど全ての記事にアナウンサーが読み上げた音声コンテンツがついています。今時、電車内のアナウンスも自動生成音声に変わってきているご時世にあって、自動生成音声ではなく、ヒトが読み上げているは驚きです。”The world in brief” は、随時ニュースを更新しているので、朝食摂りながら直近の世界の動きを聴けるので、本当に重宝しています。
英語学習者にとっては、ヒトが話す生の声がとてもよい学習教材になります。確かに、記事の内容も使っている語彙も高度です。しかし、プロのアナウンサーが旬の話題を取り上げた記事を朗読しているわけです。英語教材を買うことを思えば、同じぐらいの価格帯で、それ以上のものを得ることができると考えることもできます。これが私が The Economist を一押しとする理由です。
彼らの世界の捉え方は、”The Factfulness” の故 Hans Rosling 氏の考え方と近く、人口動態に基づいて未来予測をしています。また、科学技術の役割を肯定的に見ていて、世界は将来ますますよくなると考えている点も共通しており、この点も楽観主義者の私としては好ましいと感じるところです。
Financial Times
テクノロジー報道に最も力を入れていると感じるのが、Financial Times です。アカウントを作ると、月に3本だけですが、大抵の記事が無料で読めます。その機会を使って記事を読むと分かります。ですので、最初はこの新聞を購読しようかと思っていました。
ニュースレターの配信を設定していると、今日の紙面見どころを配信してくれます。しかし、記事の数が膨大でどれを読めばよいか戸惑ってしまいます。記事を日々追うだけで疲れます。日本の日経新聞もそうですが、朝夕2回もニュースレターの配信があると、それだけでお腹いっぱいになってしまいます。情報の断捨離を考えると、避けなければならない事態です。ということで、選択肢から外しました。
また、記事の数が膨大なためか、記事ごとに音声コンテンツを提供することは現在できていません。当然他社がやっているので、自動生成音声は考えているとは思います。そのうち自動生成音声サービスを始めるのではないでしょうか。
日々届く記事の洪水、音声聴くこともできず、情報量が多いので仕方ありませんが、しかも年間購読料が高めということもあり、現在は購読は考えていません。
The Wall Street Journal
Financial Times と双璧をなす世界の日刊経済紙です。こちらも情報量が半端ではありません。一方で、記事は読みやすいです。テクノロジー関係の情報も豊富です。しかし、テクノロジーよりも少しサイエンス寄りのネタは弱いように思います。また、話題が米国中心です。米国メディアはどこもそのような傾向があります。
年間購読料は Financial Times より断然安いです。情報量の単価計算でいうと、一番お買い得かもしれません。しかし、読みたい記事を選ぶという行為自体に時間と労力を費やすのは割に合わないと考えて、今は選択していません。
Linguatec というサービスを使って、各記事の音声コンテンツを自動生成しているようです。とは言え、生身のヒトが朗読するのと比べると、どうなのだろうと思います。
Washington Post
数年前まで、 Japan News を長く購読していました。その時期に Washington Post と提携していて、Washington Post の記事が読み放題でした。記事の内容は国内政治が中心です。そうは言いながらも、米国の国内は国際政治と切っても切れない関係なので、おおよそ世界全般の動きが分かります。
特に、日々の国際政治の動きを伝える “Today’s WorldView” というコラムは秀悦です。他の一般記事は読み飛ばしても、このコラムを読めば、その日の国際政治の動きと対応する米国の行動が十分分かります。年間購読料が 日本の新聞を1か月購読するよりも安い 3 千円程度という驚きの超低価格なので、1紙目に経済紙を選んで、2紙目としてこの新聞を選ぶのもよいでしょう。
すべての記事に音声がついているようです。今は購読していないので、分かりませんが、おそらく自動生成音声だと思います。
Japan News
数年前まで長く購読していました。前身は Daily Yomiuri ですので、基本的には読売新聞の記事を英訳したものが主です。比較的やさしい文体ですし、当然ですが主に日本の話題を取り上げていますので、最初に英字新聞を読み始めるには持って来いの新聞だと思います。対訳が必要なら、読売新聞も一緒に購読すればよいです。
他に曜日によって、提携している海外の新聞の記事を載せています。私が購読していた頃は、Washington Post、Independence、Los angels times の記事が載っていました。一般紙ですので、提携している海外の新聞の記事についても、その土地その土地の話題を取り上げる記事の構成になっています。
年間購読料は日本の新聞と同じです。少し高めです。紙メディアを契約することが前提になっています。この辺が価格が高めな理由なのかもしれません。休刊日があるのも日本の新聞と同じです。海外には休刊日がありませんので、基本 24時間 / 7 日間ずっとニュース配信しています。
各記事に自動音声読み上げサービスがあります。今は改善しているのかもしれませんが、私が購読していた時は、かなり聞きづらい音声で、ところどころ読み間違いもありました。当時の安倍首相の名前を「エイブ」と発音するなどです。自動音声はまだまだこういうところがあります。
Nikkei Asia Review
日経新聞の記事を英訳したものです。他に中文版もあります。アジア諸国の経済に関する話題を取り上げています。The Economist の向こうを張ってか週刊紙です。私が中国の 36Kr を知ったきっかけはこの新聞です。中国のテクノロジーの動きを英語でウォッチするのだったら、断然お勧めです。
日経新聞が Financial Times を買収して以降も、かたや世界経済情勢を追い、かたやアジア諸国、特に中国のテクノロジーの動きに注目するというように、2つの英字新聞は性格が異なることもあってか、それぞれ住み分けがうまくいっているように思います。1紙目に Financial Times 、2紙目に Nikkei Asia Review というのも悪くない組み合わせだと思います。
年間購読料は1.5万円未満ですので、それほど高くありません。ですが、話題がアジア諸国に特化しています。英字新聞で世界の動きを知り、広い視野を持とう、という考えであれば、1紙目として選択するのはお勧めしません。
自分のニーズに立ち返って選択すべき
「NHK, BBC, VOA 英語ニュース情報ソース比較」の回と同じ結論です。一般的な話題についていくために購読するのであれば、考え直した方がよいと思います。今のご時世一般的なニュースであれば、コストをかけなくても手に入る時代になりました。自分のニーズが何か自問して、本当にお金をかけてでも得たい情報を提供してくれるソースかどうかで選択するのがよいです。
私の場合は、科学技術や健康ネタに興味があるので、この分野に強いメディアを情報ソースとして選ぶようにしています。せっかく英字新聞を読むのであれば、語学のための苦行ではなく、興味が持てて身になる情報ソースがよいですね。
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