若干違うスペイン語とポルトガル語の再帰代名詞

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ブラジル・ポルトガル語を学んだ後にスペイン語を学ぶと、より単純と思う文法もありますが、より複雑と感じる文法もあります。今回は後者である「より複雑と感じるもの」の1つ、自分自身を指す表現の再帰代名詞を取り上げます。

スペイン語 vs ブラジル・ポルトガル語 再帰代名詞表現まとめ

では早速、スペイン語 vs ブラジル・ポルトガル語 再帰代名詞表現の特徴をまとめた表をご覧ください。スペイン語の再帰代名詞表現がいかに面倒か示すため、比較として日本語と英語も付けました。

スペイン語 vs ブラジル・ポルトガル語 再帰代名詞表現まとめ表

直接再帰(自分自身を~する)

直接目的語として「自分自身」を置いて作る文で使う用法です。「自らを奮い立たせる」など、何か自分自身に自己暗示をかけるような場面ぐらいでしか、日本語では使わない表現です。上のまとめ表には加えませんでしたが、中国語もほぼ同様です。

英語でも例文に挙げた “Enjoy yourself!” や “Treat yourself! / 自分へのご褒美に!” のような限られた表現で見受けられる程度で、その他の場合は自動詞を使って表現するのが普通ではないでしょうか。

ところが、スペイン語もブラジル・ポルトガル語も自動詞にすればいいものですが、なぜが持って回って「自分自身を」入れて表現することが多いです。ブラジル・ポルトガル語はスペイン語に比べれば、まだ自動詞を使う頻度が高いですが、スペイン語は自動詞で十分でしょう、というところにまでわざわざ直接目的語として再帰代名詞を入れます。S+V+O という形に拘りがあるのでしょう。

まとめ表の表現の他にも、例えば、「リラックスしてください」と言いたい場合に、英語なら “Relax!” ですし、ブラジル・ポルトガル語では “Relaxe!” で済みます。しかし、スペイン語では必ず再帰代名詞が付いて、”¡Relájate!” となります。

間接再帰(自分の~)

「自分自身に何々をする」のように、間接再帰は自分自身を動詞の間接目的語に据える表現です。日本語でこのような言い方をする場面は、例えば、「彼は自分自身に嘘をついた」のような場合でしょうか。

しかし、日本語で表現する場合の間接再帰は、スペイン語でも「自分自身」を指す “sí mismo” を使います。そうなのですが、さらに再帰代名詞もしっかり使って、”Se mintió a sí mismo” と表現します。

そうやって冗長に表現することで何かご利益があればいいのですが、あまりないのです。ブラジル・ポルトガル語なら、”Mentiu para si mesmo.” となり、再帰代名詞は不要です。英語も右に倣えで “He lied to himself.” で済みます。何とも不思議です。

相互用法(お互いに~)

「お互いに~する」という場合には、スペイン語もブラジル・ポルトガル語もどちらも再帰代名詞を使います。英語ならば、”each other” を付ける場合もありますが、その場合には、スペイン語もブラジル・ポルトガル語も英語の “each other” に相当する “el uno al otro”、”um ao outro” を付け加えます。

しかし、その場合にも再帰代名詞は必ず付けます。再帰代名詞がなくなることはありません。厳格な文法上のルールなのです。

ニュアンス変化

これはスペイン語だけに見られる再帰代名詞の表現です。ブラジル・ポルトガル語では見られません。中国語の文法に敢えて喩えるとすると、結果補語に相当するのではないでしょうか。

まとめ表の中のスペイン語の文 “Se bebió la botella entera de vino.” を中国語に訳すると、”他喝了一整瓶酒。” ということになるでしょう。この “光(~し尽くす)”という感じです。

意外とよく使われるのですが、なぜ再帰代名詞を使うとそういう意味になるのか直感的につかみにくいので、注意が必要な文法項目の一つです。

受身と不定人称文

最後に受身と不定人称文をまとめて取り扱います。この二つはともに意味上の主語がない点で共通しています。しかし違う点もあります。

受身は受動態で表現してもよさそうですが、意味上の主語が人であってはいけないのです。必ず事物でなければなりません。

英語の “It” にどこか似ています。とりあえず、具体的な「何か」を示す必要がないけれども、文の中でそこに穴があると語順が崩れたりして、別の意味に受け取られかねないので、埋め草として置いておこうかというノリだと思います。

不定人称文の方は、一般的な通念や風習などを表現する時に都合がよいものです。まとめ表の例文でいえば、正月を祝うのはごく当たり前のことなので、意味上の主語は人なのですが、特定の人ではなく、不特定多数の場合に使います。

しかし注意が要るのが、不特定多数の英語で言えば “people” が意味上の主語なのですが、動詞は必ず三人称単数形に限ります。再帰代名詞を使った受身表現では、主語が複数形なら、動詞も複数形になりますが、不定人称文の場合は単数形のままです。

Duolingの間隔反復学習でしつこいほどこの違いをついてくる出題が出てきます。私もそれでようやく身につきました。スペイン語ブラジル・ポルトガル語も取っつきやすい部類の言語ですが、なかなか大変な部分もあります。

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