みなさんは甘いものや脂が滴るステーキが大好きですよね。確かに最初は舌で味わっているのですが、その後に食べるのを止められなくなるのは、実は腸が旨いと感じて、脳に「もっと欲しい」とせがむからだそうです。
脳と腸は一心同体
そもそも、舌も鼻も目も耳もないような生物の体は、ドンと消化管があるだけという至ってシンプルな構造をしています。消化管の壁にセンサがあって、それで「旨い!」と感じているのだと思います。食べ物でないものが入って来たら、吐き出さなければならないので、吐き出すための筋肉を動かす必要があるので、消化管の壁にセンサで異物と感じたら、筋肉を動かす運動神経に「吐き出せ」と命令するわけです。
これがヒトやマウスのような哺乳類になると、脳が発達しているし、腸も長く広いので、たくさんの神経が張り巡らす必要が出てきます。迷走神経です。ですので、神経伝達経路として、迷走神経と脳が経路の間に挟まってきます。
最近、脳腸相関が有名になってきていますが、この迷走神経が脳と腸の間を双方向で情報伝達しているのです。脳⇒腸の方向は脳が体の管制塔だとすると、分かりやすい方向です。一方、腸⇒脳はどうでしょう。腸自体は同じ体の「表面」にありますが、皮膚と違って、痛点も温点もありません。ならば、消化だけしていればいいので、脳⇒腸の一方通行でもよいのではないかと思いがちです。
しかし、異物を食べると吐き出したりするわけですから、腸⇒脳の方向も大事なのです。大事どころか、「必要な栄養をちゃんと摂ったのか?それが食べられるなら、もっと食べなさいよ!」と脳に命令しているのです(論文1、論文2)。脳と腸は持ちつ持たれつの一心同体の関係なのです。ですので、脳腸相関と呼ばれるわけです。
甘いものの誘惑は薬物より強い
「甘いものは別腹」といいますが、まさにそうです。ドイツの公共国際放送のドキュメンタリでマウスを使った実験の光景が出てきますが、砂糖水とコカイン/ヘロインなどの薬物水のどちらをマウスが好むかという実験をしたところ、薬物水より砂糖水を4倍も好んで飲むようになることを示しています。
ヒトとマウスは趣味趣向が違うとは思いますが、倫理的には無理な実験ですが、おそらくヒトでも同じ結果になるのではないでしょうか。 “Better brain health DW Documentary” で検索してみてください。
食品添加物に必ずと言っていいほど、砂糖が入っています。試しにご家庭にある加工食品のパッケージにある原材料表示をご覧になってみてください。「こんなものにも砂糖が入っているのか」とビックリすると思います。最近では、トマトの糖度を競っています。果物の糖度は果糖ですが、砂糖がブドウ糖と果糖が1つずつ結合したものなので、効果としては同じだと思います。高糖度トマトを好んで買うのは考え直した方がよいのではないかと思います。上の実験のマウス同様、その虜になってしまうかもしれません。
人工甘味料では意味がないのです。人工甘味料は確かに舌は「甘い」と感じるのですが、腸は「必要なもの」とは感じません。腸は人工甘味料は消化できないですし、感知するためのセンサも備わっていないからです。論文2を見ると、ブドウ糖水 vs 人工甘味料水で比べると、マウス 9 匹の平均消費量でいって、10倍以上の差でブドウ糖水に軍配が上がります。先ほど説明したように、ブドウ糖は砂糖の1構成物質です。
脂肪は砂糖にもまして魅力的
脂肪はというと、腸にとっては何と砂糖よりもさらに魅力的なのです。味はあまりしませんが、腸には脂肪を感知するためのセンサが備わっています。腸は脂肪をしっかりと味わっていて、「もっとくれ!」と脳に信号を送るのです。
おもしろいことに、論文1によると、砂糖と脂肪とで腸壁にあるセンサは別々にあるのですが、そこで感知した信号の扱いが違うのです。さきほど説明した脳と腸を結ぶ迷走神経に2つ伝達経路があって、一つは三大栄養素である糖質・脂肪・アミノ酸が腸に来たことを十把一絡げに伝える経路で、もう一つは脂肪が来たことだけを伝える経路です。脂肪だけは特別扱いで、脂肪専用ハイウェイがあるです。
ですので、脂肪はエネルギー源になる三大栄養素のどれよりも敏感に感じるようになっているのです。センサは糖質、脂肪、アミノ酸(こちらのセンサはまだ見つかっていないそうです)で別々にあるのに、脳への信号伝達経路は2つに集約されているところがおもしろいです。
仮説ですが、脂肪は糖質やアミノ酸よりもエネルギーとして4倍効率が高いので、体の造りも脂肪ファーストにできているのだと思います。細胞膜は脂質でできていますし、脳も6割は脂質です。体の中では脂肪は引っ張りだこなのです。エネルギーとして貯蔵する時も、コンパクトにまとまる体脂肪に変えますよね。
必須脂肪酸やMCTならば、糖質よりよいのでは?!
糖質こそが余分になると脂肪に変わって太る原因になるわけですから、糖質制限ダイエットが流行っているわけです。また、腸は糖質よりも脂質ファーストで脳に信号を送っていることも分かりました。
ということは、甘いものを遠ざけるために、あえて脂肪をたくさん摂取すればよいのではないかと思います。しかし、飽和脂肪酸をたくさん摂るのは、あれだけ悪者扱いされていますから考えものです。
ならば、オメガ3脂肪酸などの必須脂肪酸をバランスよく摂って、今まで糖質で摂っていたエネルギーの一部をMCT(中鎖脂肪酸)に置き換えるようにすれば、脳にも体全体の健康にもよいのではないでしょうか。
まさに私が今実践していることです。糖質制限体験記は「やる気スイッチが入る糖質制限」の回にあります。また、MCT を摂り始めたエピソードは「ボケ防止で始めたMCTオイルに意外な効果が?!」の回で紹介しました。是非ご覧になってください。
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