学生さんには耳より情報です。心の持ちようというのは、こうも人を変えるものなんだと思いました。ケンブリッジ大学のグループが発表した論文によると、自分をマルチリンガルだと考えている学生はそうでない学生よりも語学だけでなく、その他の科目の成績も全般的によいそうです。
他人に言われるよりも自分を信じることが大事
今回紹介する論文はイギリスに住む中学生を対象にした研究結果をまとめたもので、学生を4つのグループに分けてその学業成績を比較しています。その4つのグループとは以下です。
- 英語が母国語の学生
- 学校が英語以外が主な言語だと思っている学生
- 学生自身が英語以外が主な言語だと思っている学生
- 学生自身が自分はマルチリンガルだと思っている学生
先ほど「イギリスに住む中学生」と書きましたが、生粋のイギリス国民だけでなく、その子自身が移民または移民の子そして在英駐在員のご子息などいろいろな出自の学生が学校にいるということです。
そしてGCSE (General Certificate of Secondary Education) と呼ばれるイギリスと中学校全国共通テストのようなもので、フランス語、スペイン語、ドイツ語、英語(国語)、英文学、数学、理科、地理、歴史の9科目の成績を比べました。その結果、英語が母国語の学生のグループに比べたときに他の3つのグループについて次のことが分かりました。
- 学校が英語以外が主な言語だと思っている学生は、英語、英文学、歴史の3科目以外は成績が上
- 学生自身が英語以外が主な言語だと思っている学生は、英語、英文学の2科目以外は成績が上
- 学生自身が自分はマルチリンガルだと思っている学生は、全ての科目で成績が上
学校の中では英語で授業をやるわけですので、先生と生徒との受け答えも英語です。要は他人(学校)から見て、英語が流暢かそうでないかはさすがに客観的なテストの結果として現れますが、あとは心の持ちようなのでしょう(歴史の成績が悪いのはちょっと不明です)。学生自身が英語以外が主な言語だと思っている学生はおそらく英語に苦手意識があるので、それが英語と英文学に現れるのだと思います。一方、学生自身が自分はマルチリンガルだと思っている学生は自分のことを八面六臂で何でもできると思い込んでいる結果、他の科目も自己実現的によくなるのではないでしょうか。
苦手意識をなくすことから始めましょう!
何事も「好きこそものの上手なれ」だと思います。苦手意識を持っていると、なるだけ避けようとする⇒脳みそがそのことを覚えない⇒テストされるとダメ⇒ますます避けようとするという負の循環に陥ってしまいます。論文の中でもこれまでの他の人の研究の結果、
positive-activating emotions such as enjoyment, pride and hope can increase motivation and help learners use effective learning strategies, while negative-deactivating emotions such as anxiety, fear and boredom may do the opposite, thus resulting in different learning outcomes.
Dieuwerke Rutgers, Michael Evans, Linda Fisher, Karen Forbes, Angela Gayton, Yongcan Liu. Multilingualism, Multilingual Identity and Academic Attainment: Evidence from Secondary Schools in England. Journal of Language, Identity & Education, 2021
と書いています。
気をよくしてこれからも語学にいそしみます
この論文を読んで非常に気をよくしました。いろいろ語学をやっていると、『4つ以上の言語を話す修道女の6%しか認知症を発症しなかった』の回で認知症を発症するリスクを下げる効果が期待できることを紹介しました。今回はさらに若い脳にも良い影響があって、数学、理科、社会など外国語とは直接関係がない科目の成績まで上がってしまうことが分かりました。まだ知られていませんが、もしかしたら、他にも良い影響があるのかもしれないです。
そう考えると、毎日勉強している甲斐がありそうで、「明日は何かいいこと起きるかな」という調子でますますワクワクしてきます。
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