腸内フローラ改善でサンゴが暑さに強くなる

Coral 科学技術

腸内フローラを改善することで、脳腸相関がはたらいて肥満から認知症まで改善ことが知られるようになりました。何とサンゴの腸内フローラを改善すると、暑さに強くなるそうです。1980年からこれまでの地球温暖化で半数近くのサンゴが死滅したと推定されています。それが、サンゴが死滅する 30℃ なっても、100% が生き残ったとのことです。

サンゴの大量死は他人事ではない

The Economist にサンゴを守ろうとする研究者たちの活躍ぶりを紹介した記事がありました。以下はそnの記事を参考にしました。なおほぼ同じ内容を無料の Podcast でも聴くことができます。”The Economist babbage: Corals vs climate change” で検索してみてください。

サンゴは動物の一種ですが、ご存じのように海底の岩に張り付いて動きません。どうやってエサを得ているかというと、海流に乗ってやってくるプランクトンをエサにしています。しかし、それだけでは腹を満たせません。そこで藻類と共生しているのです。

相棒の藻類が光合成して、サンゴにエサを与えています。硬い殻があるので、一応のところサンゴが藻の用心棒になっているのでしょう。ですので、ヒモやジゴロの類ではなく共生です。サンゴにとって藻類は、ヒトと腸内細菌との関係と同じか、それ以上の存在です。サンゴもヒトも相棒の藻類や腸内細菌がいなければ生きていけません。

そのサンゴですが、1980 年からこの方 30% から 50% が死滅したと推定されています。原因の一つが地球温暖化と目されています。地球温暖化で海水の温度が 30℃ に達すると、相棒の藻の方が先にノックダウンしてしまいます。

藻類は褐色をしているのですが、それがいなくなってしまうので、サンゴ礁が白くなってしまいます。「白化」と呼ばれる現象です。藻類からのエネルギー供給が断たれると、今度はサンゴが兵糧攻めに遭い、骨皮筋衛門と化します。この状態が「白骨化」です。

サンゴ礁で一番有名なのはグレートバリアリーフでしょう。グレートバリアリーフはオーストラリア北東部沿岸に広がる世界最大のサンゴ礁群です。ご多分に漏れず、2015 年から 2018 年の間のわずか 3 年の間で、実に 30% ものサンゴが死に絶えたそうです。

ヒトはと言うと、こちらもこのところ毎年夏場に亡くなる人が続出しています。もしエアコンがなかったら、サンゴ並みに死屍累々になっていたかもしれません。ヒトは恒温動物なので、先にヒトの方が逝き、腸内細菌の方が道連れで無理心中されられる側でしょう。

サンゴを暑さ知らずにする「プロバイオティクス」

サンゴを暑さに強くすることを考えている研究者がいて、暑さ知らず遺伝子を特定したそうです。確かにその遺伝子をもつサンゴを増やせば、地球温暖化によるサンゴの死滅を遅らせることができるかもしれません。

ただし、サンゴはガチ定住型の動物とは言え、遺伝子組み換え動物を野に放つのは、世間がなかなか許しません。動物の遺伝子組み換え例として他に、マラリア原虫の宿主となる蚊の遺伝子を組み換えて、数を減らしたり、ヒトを刺せない口にしたり、という研究例があります。これも自然界で実現までのハードルはかなり高いようです。

ならばという訳でもないでしょうが、サンゴに「プロバイオティクス」を与えて、暑さに強くすればよいではないかと考えた研究者がいます。独コンスタンツ大学の研究グループです。

論文によると、サンゴに6種類の菌種からなるプロバイオティクスを与えて、26℃ から 30℃ へ 4℃ 海水の温度を高くして 10 日間放置しました。そうしたところ、プロバイオティクスを与えなかったサンゴは、6 割が「白骨化」し、4 割が死滅してしまいました。これに対して、プロバイオティクスを与えたサンゴは、6 割が「白化」まで至るけれども 4 割は色が薄くなる程度で済み、すべてが生き残ったのでした。

まさにプロバイオティクス様様です。プロバイオティクスがサンゴの新陳代謝を変えて、免疫が高まり、炎症を抑える効果が見られました。これにより、30℃ の熱ストレスを与えられた後に、26℃ に戻してから回復していくことも確認されました。

ヒトもプロバイオティクスで暑さに強くなるのか

腸活スペシャルー豆乳ヨーグルトの巻」の回でプロバイオティクスについて触れました。ヨーグルトだけでなく、キムチの乳酸菌やぬか漬けの酢酸菌など人体に有用なプロバイオティクスについて、「腸活スペシャルー海藻キムチ納豆の巻」の回や「ボケ除けには断然、水溶性食物繊維」の回で触れました。

ヒトもプロバイオティクスで暑さに強くなれるのでしょうか。今のところ、そのような研究は見当たりません。しかし、サンゴがそうなら、ヒトを暑さ知らずにしてくれる腸内細菌がいてもよさそうです。もしかしたら、熱帯雨林に住む先住民たちが腸の中に飼い慣らしているかもしれません。

今から数年後にスーパーの乳製品コーナーで、暑さに打ち勝つプロバイオティクス・ヨーグルトが売られるようになることを期待します。そして、35℃ の猛暑日の炎天下で涼しげな顔で街を闊歩してみたいものです。

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