脂肪と砂糖たっぷりの食事は睡眠の質を落とす

科学技術
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またしても、脂肪&砂糖の黄金コンビが問題行動を起こしました。睡眠の量と質で言うと、量の指標、睡眠時間には影響を与えない一方、質の指標、深い睡眠がしっかり取れているかには影響を与えるそうです。睡眠の質は認知機能に影響を与えるので、要注意です。

動かぬ証拠を掴んだ

ジャンクフードに代表される脂肪と砂糖がたっぷりの食品が体の炎症を惹き起こしたり、生活習慣病の元になったりすることはよく知られています。その他にも、「脂肪と砂糖の黄金コンビにご用心」の回で引用した論文によると、肉食系の脳に変えてしまうことをご紹介しました。

そして今回またしても、この脂肪&砂糖黄金コンビは、体に対してとんでもないことをしでかしていることが分かりました。スウェーデンにあるウプサラ大学の研究グループが実施している治験が、とうとう動かぬ証拠を掴みました。

睡眠は生物の体にとって不可欠なものです。仕事や勉強に忙しく寝ている暇がないからといって、十分な時間睡眠を取らないと睡眠負債を惹き起こし、ひいては認知機能の低下を招くという話を「ボケないための睡眠」の回で紹介しました。

この話は量に関するものでした。では、質の方はどうなのでしょうか。質も当然問われます。「語学をマスターしたけりゃ熟睡せよ」の回で説明したNon-REM 睡眠=深い睡眠がしっかり取れていないと、学習機能に影響を与えます。

では、脂肪&砂糖黄金コンビはNon-REM 睡眠をどのように邪魔するのでしょうか。

Non-REM 睡眠時に出る徐波が弱くなる

20 代前半のスウェーデン人男性15人の被験者を2つのグループに分け、片方には高脂肪高糖食、もう片方には低脂肪低糖食を1日3食、1週間摂ってもらいデータを取り、その後 7 週間ほど介入しない期間を取った後で、今度はそれぞれのグループの食事を入れ替えるという方法で治験しました。被験者数は少ないですが、ある介入に対する効果を見極めるのにこれ以上によい方法はないと思います。

脂肪&砂糖黄金コンビは、Non-REM 睡眠の最中に脳が発する徐波と呼ばれる 4 Hz 以下のゆっくり変動する脳波を弱くしたのです。熟睡して本当に脳が休まっている時は、この徐波の振幅が大きくなりますし、代わりに、脳が活動していることを示すもっと高い周波数の脳波は振幅が小さくなったのです(文献1)。

脂肪&砂糖黄金コンビを食べると、徐波の振幅は小さくなるは、もっと高い周波数の脳波の方は振幅が大きいままになるのです。つまり、脳が休まらずに脳が活動しっ放しで、24 時間 / 365 日ワンオペのブラック企業のような状態になるのです。掃除できないので、床のあちこちにゴミや汚れがついたままで、ワンオペの店員さんがゴミや汚れに足を取られて、本来の働きができない状態に陥るのです。

食欲が増進する

論文の補足資料のグラフを見ると、脂肪&砂糖黄金コンビは食欲も増進させるようです。1日の所要摂取カロリーを満たした3食の食事であっても、ヘルシーな食事に比べて、ジャンキーな食事は「もっと、もっと」と言わんばかりに、空腹感をもたらすのです。

甘いものの誘惑は薬物より強いのです。ここから抜け出さないと、基礎代謝が落ちるお年頃になると、ドンドン不要なお肉が体についていくことになるのです。こうなると、生活習慣病まっしぐらです。

生活習慣病予防≒認知症予防です。生活習慣病を侮ってはいけないのです。認知症を遠ざけるためにも脂肪&砂糖黄金コンビからはおさらばするに越したことはありません。「タバコに、アルコールに、砂糖もですか?」という声が聞こえてきますが、これら全部が常習性があるものだということに気づくでしょう。だから蔓延するのです。だから止められないのです。

実は影の主役は食物繊維かも

治験の高脂肪高糖食は、実は低脂肪低糖食と同じカロリーが摂れるように設計されています。両者で何が違うのかというと、精製された砂糖の含有量(17.6 % vs 9.6 %)と脂肪の含有量(44.4 % vs 23.0 %)です。それから論文では明記されていませんが、食物繊維です。

それぞれの食事で食物繊維が摂取できる品を赤太字にしてみました:

  • 高脂肪高糖食
    • 朝食:脂肪分の多い無糖ヨーグルト(脂肪分3%)、加糖グラノーラ
    • 昼食:パスタ、加糖ケチャップをかけたミートボール
    • 夕食:ピザ、チョコレートウェハー
  • 低脂肪低糖食
    • 朝食:低脂肪・無糖・無香料のヨーグルト(脂肪分0.5%)、無糖ミューズリー
    • 昼食:パスタ、グリーンピース
    • 夕食:サーモンと野菜の混ぜ物

どうでしょうか。高脂肪高糖食では圧倒的に食物繊維が足りていません。これが腸内細菌環境にどのような影響を与えるかは一目瞭然でしょう。腸内細菌は種類によって、宿主であるヒトに対して発するホルモン信号が違います。脳腸相関が言われるようになって、非常に重要な点です。

もしかしたら、食物繊維が善玉菌を増やし、セロトニンなどの睡眠中の脳によい働きをするホルモンが増えることで、Non-REM 睡眠によい影響を与えているのかもしれません。セロトニンは睡眠ホルモンであるメラトニンの元になるホルモンだからです。この点を考慮すると、単に精製された砂糖と脂肪の量だけの違いとできないかもしれません。

[参考文献]

  1. Luiz Eduardo Mateus Brandão, Alexandru Popa, Erasmus Cedernaes, Christopher Cedernaes, Lauri Lampola, Jonathan Cedernaes. Exposure to a more unhealthy diet impacts sleep microstructure during normal sleep and recovery sleep: A randomized trial. Obesity, 2023; DOI: 10.1002/oby.23787

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