筋トレの常識が塗り替わるかもしれません。普通、筋トレと言えば、腕立て伏せで歯を食いしばって体を持ち上げる場面や、スクワットで立ち上がる光景を思い浮かべるでしょう。しかし、実は体を下げたり、座り込む動作の方が筋肉の増強には効果的なのだそうです。
筋トレは健康寿命延伸には欠かせない
日本人は世界一長い時間座っています。スポーツ庁の記事が引用するシドニー大学などオーストラリアの研究機関の調査によれば、日本人の座位時間は何と7時間だそうです。座りすぎは喫煙に匹敵するという話もよく言われています。
座る時は体をくの字に曲げています。くの字に曲げているお腹の辺りに横隔膜がありますし、大きな動脈・静脈が通っていますので、それが圧迫されれば、呼吸は浅くなり、血の巡りも悪くなります。喫煙すれば、酸欠状態になるのと同じことが起こるわけですから、喫煙と同一視されても無理はありません。当然のことならば、体に言い訳はありません。
呼吸が正常ではないと、メンタルにも影響することが分かってきました(論文1)。息を吸う時に、五感が研ぎ澄まされて脳に情報が取り込まれ、息を吐く時に、脳が体の動作を整えるようにできているそうです。脳肺相関とでも言えばいいのでしょうか。ですので、弓矢を射る時は、息を吐く時に矢を放ったり、格闘技の時に技を繰り出すのも息を吐く時なのです。
また、50代の頃から急速に体は廃用性萎縮し始めます。「使わない(廃用)のだから、要らない(萎縮)のだよね」と盆栽を剪定して刈り込んでいくように、無駄な体の機能は店じまいを始めるのです。日本ではこの先フレイルが増えていく傾向にある原因の一つに、座りすぎがあるでしょう。健康寿命を延ばしたいなら絶対に避けたいところです。
それには、筋トレが有効なのです。筋力が高くなれば、大は小を兼ねるで自分でできることに幅が出ます。そうすれば、いろいろな情報が五感からもたらされるので、脳も鍛えられて認知症予防にもなるでしょう。握力が弱いことと認知症には関連があるので、日頃から筋肉量は保っておいた方がよいでしょう。
また、男性だけでなく女性も筋肉量が増えれば、テストステロンの分泌量が増えます。テストステロンは2型糖尿病予防に効果があります。認知症の原因の一つに糖尿病があるので、テストステロンによって認知症を間接的に予防できる可能性があります。現時点で分かっているのは、認知症の症状がある人はテストステロンの血中濃度が低いということです(論文2)。
筋トレを効率的にやりたい
フレイルや認知症の予防に筋トレが一役買う可能性があるなら、「やりましょうか」という気になったでしょうか?でも、「筋トレのためにジムに通ったりすれば、お金も時間もかかるし」と思っている人も多いでしょう。そういう場合は、私のトレーニング方法を参考にしてください。自宅で低予算・軽装備でやれることは結構たくさんあります。
それに加えて、さらにトレーニングを時短する方法を見つけました。上手くすれば時間を半分にできます。その方法が腕立て伏せなら伏せる動作だけ、スクワットなら座る動作だけをするという方法です。Edith Cowan 大学と新潟大学の研究チームの研究結果によると、
- 筋肉を収縮させる動作(腕立て伏せの腕を立てる動作やスクワットで立ち上がる動作)
- 筋肉を収縮・伸長させる動作(腕立て伏せやスクワットを繰り返す動作)
- 筋肉を伸長させる動作(腕立て伏せの腕を伏せる動作やスクワットの座る動作)
のうち、何と筋肉を収縮させる動作は筋肉量を増やすのにはあまり役立たないことを突き止めました。そして、筋肉を収縮・伸長させる動作と筋肉を伸長させる動作では同じ程度に筋肉量が増えたのです(論文3)。
これまでどれほど時間を無駄にしてきたことでしょうか。腕立て伏せやスクワットなどの自重を使った反復運動は、行ったり来たりが必要なので、腕を伏せるだけや座る動作だけをやるというのはできませんが、早回しはできます。例えば、腕立て伏せなら、腕を立てる時は膝をつくようにすれば、負荷が軽くなるので、素早く腕を立てることができるでしょうし、スクワットもスプリングがあるベッドのマットレスか何かの上に座り込んで立ち上がれば、楽に立ち上がれます。それだけ動作する時間を短縮できます。
スロートレーニングの場合は時短効果絶大
私の場合、故障が少なくて済むように、あまり無茶をせずにスロートレーニング(筋肉に力を入れながらゆっくりと負荷をかける運動)に切り替えています。腕を立てる、伏せるという一つ一つの動作を5秒かけてやっているので、腕立て伏せやスクワットに費やす時間を半分近くまで短縮できました。これは願ってもない朗報です。筋トレやらないと思いつつ、時間ももったいないと思って若干ストレスでしたが、少し肩の荷が下りました。
人生100年時代とは言え、健康な状態を保っていられる時間を延ばすだけでなく、中身の密度を高めるには時短は欠かせません。PCを使うのにショートカットキーを多用するようになったのも時短のためです。時間を大切にしましょう。
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