中国在住の日本人ドキュメンタリー監督の方がファーウェイの深セン本社で働く欧米人社員に直撃インタビューしている動画があり、オヤッと思う光景を見つけました。その欧米人社員だけでなく、他の社員も立って仕事をやっているではありませんか。
ファーウェイの外国人従業員が立って仕事をしていた
今も続くアメリカとの貿易摩擦の最中、中国在住の日本人ドキュメンタリー監督の方がファーウェイの深セン本社で働く欧米人社員に直撃インタビューしている動画があり、それを見ていた時にオヤッと思う光景を見つけました。インタビューに応じているので立っているわけでも、何かの罰を受けて立たされているわけでもなく、その欧米人社員だけでなく、中国人社員も立って仕事をやっているではありませんか(1)。
監督:你为什么站着(工作)啊?/どうして立って仕事をしているのですか?
ファーウェイで働く欧米人社員が内部から見るアメリカの制裁とは?
外国人社員:因为一直坐着膝盖会痛啊,一直再坐。好多人都站着。/ずっと座ったままだと膝が痛くなるですよ。ずっと座ったままだとね。結構みんな立っていますよ。
同上
動画が本来伝えたい内容そっちのけで、どうして立っているのだろうということが気になり始め、健康に良さそうだと思い、早速調べました。
WHOが2002年に声明発表
2002年にWHOが座り過ぎは心臓病を始めとする生活習慣病や腰痛・肩こり・関節痛に至るまで感染病以外の病気のすべてに関係している(免疫が低下する原因にもなっているので、そういう意味では感染病にも関係しています)という声明を出して、立って動きましょうと提唱していることを知りました。
調べると、他にも座り込まずに立ち上がって動こうとする研究論文は例を挙げれば枚挙にいとまがないほどたくさん見つかりました。どうやら 「立ち上がって動こう 」が健康によいことは理解しました。しかし、デスクワークをするときに動くわけにもいかないので、スタンディング・デスクで仕事をすることを想定して、立ってじっとしているだけでもよいのかどうかというところを知りたくなりました。
重力がかかるほどエネルギー消費量が増える!?
その中で面白いものに “Gravitostat theory” というものを見つけました。重力が余計にかかればそれに応じてエネルギー消費量が増えて、筋肉量はそのままに体脂肪が減るとするものです。無重力状態の中生活する宇宙飛行士の体調観察から得られた知見から導き出された理論で、まだ十分に科学的根拠を得られていないようです。重いベストを着て生活する人とそうでない人の対照群による治験も試みられているようです(2)。
では、座っていると下半身には体重がかかっていないので、立っている方が下半身にも体重がかかるので、エネルギー消費量が増えるのでしょうか?ハーバード・メディカル・スクールの記事では確かに増えるようです。しかし、微々たるものです。健康な被験者74人を対象にした試験では、座った状態のカロリー消費量が1時間当たり80カロリーだったのに対して、立った状態では88カロリーなので、1割増が関の山ということです。歩けば210カロリーに跳ね上がるので、やはりダイエットという面では動くことが大切ということになります(3)。
腰痛・肩こりそれに頭の働きをよくするにはよさそう
立っているだけでは何のご利益もないのでしょうか?そうとも言えないようです。記事は続けます。食後の血糖値の戻りと腰痛・肩こりにはよいことは研究で示されているそうです。
同じような内容を取り上げたTED-edの動画『なぜ座ることは体に良くないのか』の中では、座ることで肺容量が小さくなって、十分に肺が酸素を取り込めなくなり、血管をつぶし気味になり血行も悪くなるので、脳が必要とする酸素も栄養も十分に行き渡らなくなると解説しています。立って仕事をすれば、脳の働きはよくなりそうです(4)。
実際、3年間続けていますが、昼食後の時間帯に仕事をする際、座って仕事をせざるを得ない時と立って仕事ができる時とでは感じる眠気がまるで違います。明らかに立って仕事をしている時の方が頭が冴えます。
ちなみに先ほどの ハーバード・メディカル・スクールの記事同様、骨や骨格筋も立った状態を前提とした構造になっているとしていますので、座るより立つ方がよいと言えるでしょう。
50代は転倒死傷のリスク大
図1は厚生労働省が公表した「令和4年労働災害発生状況の分析等」(5)の中に掲載されている「表16 転倒災害の死傷年千人率」をグラフにしたものです。50歳を超えた辺りから急速に転倒による死傷率が上がっていることが分かるでしょう。更年期の影響があるのかもしれません。特に女性が顕著です。
60歳で定年という人も増えてくると、悠々自適の生活を送れる人が労働者でなくなることで分母の数が減る影響も考えられますが、グラフを見る限り、60歳を境として不連続に増加する傾向はありませんので、足腰が衰えるからだと考えられます。
ところが、後期高齢者になってくると、転倒による死傷率が減少に転じます。転倒しようにもできなくなる人が増えて、分母の労働者からいなくなるからだと考えるのが自然でしょう。つまり、ベッドの上で寝たきりになるわけです。
同じ「表16 転倒災害の死傷年千人率」からもう一つ面白いことが分かります。下の図2を見てください。50代後半にフォーカスして、コロナ禍前後を比較したものです。明らかにコロナ禍前の2017年からコロナ禍真っ只中の2021年~2022年になって、転倒による死傷率が不連続に増えていることが分かります。自宅に閉じこもって運動不足になり、一気に足腰が衰えたことによるものと考えるのが自然です。
育児を終えるのもこの年代です。動物が寿命が尽きるまでに打つ心拍数は20億回と言われています(6)。実は、20億回打ち終わるのもちょうどこの年代です。エコシステム全体の環境負荷を考えると、生物としては土に還る方が自然の摂理に適っているのでしょう。子育てを終えた後の老後がこれほどまでに長いのはヒトぐらいなのです。「俺はまだまだ現役だ!」という気概で足腰を鍛え続けなければ、脳、筋肉、骨のすべてが簡単に廃用性萎縮を始めるのです。
ということで、如何に自然の摂理に抗うかが重要になってきます。それで、取り入れるのに一番簡単なのが、重力という自然の摂理を逆手に取って足腰に負荷をかけ続けることなのです。それが、ヒトの場合であれば、立った状態であったり、歩いている状態だったりするわけです。
がんばって立って仕事をすることにしました
「ほんなら、立って仕事することにしょか」ということで、最近がんばって立って仕事をすることにしました。そうしたところ、調べた中にはありませんでしたが、お通じがよくなりました。おそらく、消化器系も座っていると、血行や神経が圧迫されて正常に機能しづらくなっていたのが解消されたのではないかと考えています。
そして、確かに首から肩にかけて慢性的に痛むのが和らぎました。腰痛も座りっぱなしが原因だったと分かりました。仰向けだと、通常の場合床につくことはない背中の中程が以前はついていました。それが床から離れるようになり、いわゆる脊椎のS字カーブが元に戻ったのです。
膝痛はあまり変わっていないです。私の場合は、ファーウェイ社員のようによくはなりませんね。膝痛のタイプが違うのでしょう。
始めて6か月後にタニタの体組成計で内臓脂肪レベルを測定しました。4.0です。タニタのホームページで調べると、9.5以下が標準ですので、メチャメチャ低いですよね。
それから体内年齢という興味深い数値も一緒に測定できました。
残念ながら始める前の内臓脂肪レベルと体内年齢を測定していません。しかし、体重が2kg 増えた一方、内臓脂肪レベルは 9.5 以下が標準に対してずっと低い値ですので、下半身の筋肉がついたのと骨量が増えたのだと考えています。その結果、基礎代謝が上がり、体内年齢が私の実年齢のだいたい半分の27才になったのでしょう。ちなみに体内年齢はタニタのホームページの説明によると、「基礎代謝の年齢傾向と、タニタ独自の研究により導き出した体組成の年齢傾向から、測定された結果がどの年齢に近いかを表現したもの」だそうです。
他にも、眠くなりにくいのもいいことです。おまけに、適度に体が疲れるので、夜ぐっすり眠れるようになりました。
思いもよらない効果も得られたので、これからも続けようと思います。これもよい習慣の一つということで、最後にまとめておきたいと思います。
[参考文献]
- ファーウェイで働く欧米人社員が内部から見るアメリカの制裁とは?: https://youtu.be/O4spoHp4HhY?t=478
- David Thivel, Yves Boirie. The Gravitostat theory: Body fat is lost but is fat-free mass preserved?. The Lancet. 2020. DOI: https://doi.org/10.1016/j.eclinm.2020.100531
- The truth behind standing desks, HARVARD HEALTH BLOG: https://www.health.harvard.edu/blog/the-truth-behind-standing-desks-2016092310264
- なぜ座ることは体に良くないのか ― ムラート・ダルクルンチュ: https://youtu.be/wUEl8KrMz14?list=PLc6cDlt3FGATFxZ19JcAOy6O21DRQGtSI
- 厚生労働省「令和4年労働災害発生状況の分析等」: https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/001099504.pdf
- 本川達雄. ゾウの時間ネズミの時間. 中公新書. 1992
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