中国語の助詞 “所” はなかなか難しいです。日本語で「…するところの何々」とでも訳す場合に使う助詞の “所” は理解して使うにはかなり手強いです。どうやら書き言葉で程度を簡潔に表すのに適しているようです。書き言葉なので、日常会話には出て来ません。
助詞の “所” は英語の関係詞に似ている
中国語の “所” は、建物や施設の数を数える時に数量詞として使う場合は、日本人でも比較的理解しやすいものです。例えば、“一所大学” だと、「1つの大学」です。
しかし、助詞の “所” は理解して使うにはかなり手強いです。動詞の直前に置いて、日本語では「…するところの」とでも訳すような使い方をします。ですので、助詞の “所” は英語の関係詞に似ています。
説明するのに短文の方が都合がよいので、中英/英中辞書アプリ Pleco にある例文を示します:
我所认识的人/the people that I know/私が知っているところの人
このような助詞の “所” は書き言葉に使うので、わざとやや改まった感じの英訳と和訳にしてみました。話し言葉にするのは簡単で、単に “所” を抜けば済みます。英語であれば、 “that” がなくなり、和訳なら、「ところの」が要らなくなります。つまり、以下のようになります。
我所认识的人 / the people that I know / 私が知っているところの人
ここまではそれほど難しくありません。ここからが少々難しくなってきます。
関係代名詞 “what” に似た用法
関係代名詞 “what” に似た用法もあります。再び Pleco の例文です:
他所说的未必确实。/ What he says is not necessarily true. / 彼が言うことは必ずしも正しいわけではない。
この用法は、英語の関係代名詞 “what” に非常に近い語感があります。下は《标准教程 HSK 5上》(北京語言大学出版社)の 11课に出てくる練習問題です。下の文を “所” を使って書き換える課題です。
自己过去说过的话你都忘记了吗? / Have you forgotten what you have said in the past? / 過去に自分が言ったことをすっかり忘れたのですか?
中国語講座の先生に教えていただいた正解です:
你忘记了自己所说过的吗?
どうやらこの用法の “所” には、「過去を含めた丸っと全て」という語感があるようです。
”有/无+所+V* で程度を表す
動詞の前に “所” をつけて、さらにその前に ”有/无“ がつくと、 “所” は動詞に対する程度を示す副詞のような役割を果たすようになります。“有所” の例文です:
两方关系有所改善了。 / Relations between the two sides have improved to some extent. / 両者の関係はいくらか改善した。
よい意味の時は “一点儿” で、悪い意味の時は “有点儿” のニュアンスになります。
“无所” の方は下のような成語になっているものが多いです:
无所作为 / attempting nothing and accomplishing nothing / これといった成果が何一つない
強く否定する言い方になっています。
二重否定になると、英語と同じように最上級表現になります:
无所不能 / omnipotent / 全能
まとめ
中国語の助詞 “所” の用法は、同じ漢字の国である日本には見られないものです。どうやら書き言葉で程度を簡潔に表すのに適しているようです。中国語の “所有 / all / 全て” も同じ流れなのでしょう。
“所” の文字の由来を調べると、扉を意味する「戸」と斧を意味する「斤」が組み合わされてできたそうで、転じて場所を意味するようになったのが始まりのようです。ここまでは中国語と日本語で意味が同じだったのでしょう。日本にこの漢字が伝わった後で、中国で “所” の意味が進化したのではないでしょうか。
よく日本人が日本のことを「ガラパゴス」と自虐的に揶揄します。まさにこの「ガラパゴス」現象で、原種である「場所」を示す意味のみが日本に独自に残ったのかもしれません。
中国語で動詞に対する助詞 “所” は程度を表すことを知りました。最後に、自分自身が分かりにくかったので、 “所” に関する程度表現を図でまとめてみました。
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