スペイン語の疑問文は英語やポルトガル語ほど単純ではなく、語順の自由度が高いです。一方、中国語は語順を変えないようにして疑問文を作ります。疑問文を見ると、その言語の語順に対するスタンスが分かります。各言語の疑問文それぞれの注意点をまとめました。
英・中・西・葡の平叙文の語順
Yes/No 疑問文だけでも、英語、ポルトガル語、スペイン語、中国語それぞれで語順の考え方が大きく異なります。平叙文の場合は、 下記のように、ヨーロッパ語系の3つの言語と中国語で A(修飾部)の位置に違いがあります。A は目的語、補語、副詞などです。
英・葡・西:S(主語) + V(述語)+A(修飾部)
中: S(主語)+A(修飾部)+ V(述語)
ヨーロッパ 3 言語でも、A が十分短ければ(下記で “a” )、S(主語) と V(述語)の間に入ってきます。
英・葡・西:S + a + V
また 4 言語共通で、A を強調したい場合は、S の前、つまり文頭に躍り出てきます。
英・葡・西・中:A(修飾部)+ S(主語)+V(述語)
しかし、平叙文を疑問文にする場合、それぞれの言語で戦略が違ってきます。では、順を追って見ていきましょう。
一番簡単なブラジル・ポルトガル語の 疑問文語順
平叙文を Yes/No 疑問文にする場合、一番簡単なのがブラジル・ポルトガル語です。話す場合は、文末を上げて発音するだけです。表記する場合も単純です。文末に疑問符(?)を付けるだけです。例文です。
(平叙文)Você está aí. /あなたはそこにいます。
(Yes/No 疑問文)Você está aí? /あなたはそこにいますか?
実に単純です。
とは言いながら、ここまで単純なのは Yes/No 疑問文までです。疑問詞疑問文になると、語順が V+S に変わります。発音は英語と同じく文末は上げません。
(ser/estar 動詞の疑問詞疑問文)Onde está você? /あなたはどこにいますか?
特に、英語の be 動詞に当たるブラジル・ポルトガル語の ser/estar 動詞やそれらに似た意味を持つ ficar などが文末に来るのを避けるためのようです。英語に似ています。疑問詞が文頭に来るのも英語と同じです。
もっとも、ブラジル・ポルトガル語でも動詞活用で明らかに人称を1つに絞れる場合は、主語が省略されるため、ser/estar 動詞が文末に来ざるをえません。以下の例文のようになります。
Que horas são? /何時ですか?
その他の動詞は S+V のままでも差し支えありません。この点も英語に似ています。例文です。
(その他の動詞の疑問詞疑問文)O que você tem? /あなたは何を持っていますか?
英語の do 動詞や助動詞が S の前に来るような変形は見られず、英語の疑問文の作り方よりもスッキリしています。
もちろん、英語の do 動詞相当も S と V を倒置させて大丈夫です。
O que tem você? /あなたは何を持っていますか?
疑問文は Yes/No 疑問文の場合、 se 節(英語の if/whether 節)にそのままの語順で埋め込みます。疑問詞疑問文の場合も同様です。単独の疑問詞疑問文と同じ語順のまま埋め込みます。ここは英語と違うところです。
主語の位置が多様なスペイン語の疑問文
スペイン語で疑問文を作る際のルールは以下の3つです。ポルトガル語と兄弟扱いされがちですが、結構違います:
- Yes/No 疑問文は平叙文と同じ語順もしくは S と V が倒置する(S+V+A ⇒ V+S+A または V+A+S)
- 疑問詞疑問文は必ず S と V が倒置する(S+V+A ⇒ V+S+A または V+A+S)
- 文頭に逆さ疑問符 “¿” を付け、文末に疑問符 “?” を付ける
Yes/No 疑問文の例です。
(平叙文)Usted está allá. /あなたはそこにいます。
(Yes/No 疑問文)¿Usted está allá? / ¿Está usted allá? / ¿Está allá usted?/あなたはそこにいますか?
V が形容詞の場合は、『 ser/estar 動詞+形容詞」を述語と捉えますので、V+S 倒置の場合は以下の例文のようになります。
¿Está enfermo usted? / あなたは病気ですか?
他の言語に比べて自由度が高いですね。話す時には英語やポルトガル語と同じように文末を上げて発音します。
今度は疑問詞疑問文の例です。発音は英語と同じく文末は上げません。
(疑問詞疑問文)¿Dónde está usted por la mañana? / ¿Dónde está por la mañana usted? / あなたは午前中どこにいますか?
ブラジル・ポルトガル語同様に、スペイン語でも、疑問文は Yes/No 疑問文の場合は si 節(英語の if/whether 節)にそのままの語順で埋め込みます。疑問詞疑問文の場合も同様です。単独の疑問詞疑問文と同じ語順のまま埋め込みます。英語とは異なります。
文頭に逆さ疑問符 “¿” を付け、文末に疑問符 “?” を付けるルールは、複文だとしても、実質的な疑問文の部分だけを囲う決まりです。以下がその例です。
Cuándo sali de casa, ¿dónde está usted por la mañana? / 外出の時、午前中はどこにいますか?
中国語の多彩な疑問文
中国語には多彩な疑問文があります。しかし、何れの場合も S と V の語順は変化しません。
- 諾否疑問文(もしくは、”吗“ 疑問文)
- 反復疑問文
- 付加疑問文
- 疑問詞疑問文
この中で諾否疑問文が一番単純です。文末に”吗?“ をつけるだけです。質問する側が予見を持って、それを確認するために、相手に尋ねる際に用いる疑問文です。
(諾否疑問文)你生病了吗?/あなたは病気ですね?
反復疑問文は質問する側が予見を持たずに、ただ単に肯定と否定のどちらなのかを尋ねる際に用います。選択疑問文の一種と考えれば理解しやすいです。
(反復疑問文)你去不去散步?/散歩しますか、しませんか?
“不去” の位置は目的語の後もとれます。
(反復疑問文)你去散步不去?/散歩しますか、しませんか?
付加疑問文は、英語の付加疑問文のように平叙文の後ろに追加して、相手の答えに対して探りを入れるような言い方です。
(付加疑問文)我们一起去散步,好吗?/一緒に散歩に行きましょう、いいですか?
最後の疑問詞疑問文は、その他の言語と同じように疑問詞を使って疑問文を作ります。疑問詞の位置は平叙文の中で疑問詞に置き換える対象の語がある位置に留まります。
(疑問詞疑問文)我们一起去哪儿?/一緒にどこに行きましょうか?
語順を重視する言語らしく、意味が変わってこないように平叙文から疑問文にするために語順はいじらず、専ら要素を足しているところが特徴的です。
日本語は助詞が使えるので語順は融通無碍
最後に、日本語は助詞が使えるので、語順をあまり重視していません。下の例をごらんになるとお分かりのように、「私は」、「大阪に」、「行く」の3要素の順列組み合わせのどれでも意味が通ります。何に力点を置いているか微妙に変わるにせよ、意味も概ね同じです。こうやって考えると、助詞の存在は偉大です。
私は大阪に行く。/大阪に私は行く。/大阪に行く、私は。/私は行く、大阪に/行く、大阪に、私は。/行く、私は、大阪に。
発音も簡単だし、やっぱり、語順から解放されて自由な日本語が一番いいですかね。
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