洋の東西でこんなに違う白色のイメージ

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「白」というと、キリスト教世界ですとクリスマスや結婚式のイメージカラーです。ところが、中国語の先生は「喪」や「無駄」など好ましくない印象を持つそうです。洋の東西が渾然一体化した日本では、今は西洋の影響が勝ってどちらかというと良いイメージです。

白=無色ではない

白は何にも染まっていない、あるいは何もないイメージです。しかし、だまし絵や深層心理を調べるための白黒の絵を見て、ヒトの脳裏には何かが浮かんでしまうのです。そこに、文化的背景が反映されます。「無とはないか」とやや哲学めいたものも感じさせられます。分類して止まないヒトが何かと比較することで、白に色がついてしまうのです。

単に “white” と聞くと、米国人は人種問題の臭いを嗅ぎ取ってとっさに身構えてしまいます。ブラジル人もそうです。歴史的な背景がそうさせるのでしょう。ですので、会話の中で単独で “white” だけで使わず、”White Christmas” だったり “egg white(卵の白身)” だったり、2語以上の組み合わせで使う方が無難でしょう。白色について話したい場合も “white color” という方が安心できます。

中国の場合、人種問題はありませんが、かつて政治思想上の対立があり「白色」は保守主義を思い起こします。これはヨーロッパでもロシア革命の影響があったので、白色と言えば、帝政派を指します。日本でも白系ロシア人が亡命してきました。かつてプロ野球で活躍したスタルヒンが有名です。

日本では赤白はご祝儀色で「紅白歌合戦」などと言いますが、中国では本当の合戦になりかねません。日本在住の中国人なら既に事情を知っているので、「紅白歌合戦」について話せば、日本版の “春节联欢晚会” または “春晚” と理解してくれます。春節の夜に放映される歌や踊りに漫才もある催しです。

どうも白は無色である分、他の色との対比でその色の持つ意味の反義語になる傾向があります。

英語とスペイン語/ポルトガル語で微妙に違いあり

英語とスペイン語やポルトガル語で “white” の意味が異なります。例えば、先ほど例に挙げた英語の “egg white(卵の白身)” はスペイン語では “clara de huevo” で、ポルトガル語も似ていて “clara de ovo” です。”clara” は英語にもう一度戻すと “clear” なので「透明」という意味です。こちらの方が生卵の状態の卵の白身に即した表現です。英語も日本語も生卵の状態ではなく、火を通して調理した後の状態を指しているのでしょう。ここでも、文化の違いを感じます。

また、英語で “white space” というと、空き地を意味します。ですので、「空いている」という意味があります。もしかしたら、空=透明の意味合いがあるのでしょうか。そう考えると、卵の白身が “egg white” であることが腑に落ちます。

しかし、そうは問屋が卸さないところがあります。入国手続書などで “fill in the blank” と書いてあると「空欄を埋めてください」ということになるので、”white” と “blank” を使い分けていることが分かります。使い分けているというか、英国も日本と同じように島国でさまざま文化の影響を受けてその名残が英語に残されていると考えられます。

ところが、スペイン語とポルトガル語は日本語と同じです。「空き」は “blanco / branco” の一択です。ですので、”white space” はそれぞれ “espacio en blanco”、”espaço em branco” ですし、”fill in the blank” はそれぞれ “rellenar el espacio en blanco”、”preencher o espaço em branco” になります。

中国語では「喪」や「無駄」の意味も

中国では白に「喪」や「無駄」の意味があります。日本での語感とは真逆で、様々な意味合いで白は紅と対比的に使われて、好ましくないイメージの代表的な言葉に成り下がっています。

日本では結婚式と言えば白ですが、中国では紅で彩られます。結婚式などの慶事は ”红事“ と呼び、葬式などの弔事は “白事“ と呼びます。日本でも白装束は死者のイメージですが、中国でも同じです。白虎隊の「白虎」は風水的には西の方角を意味します。

聖徳太子が推古天皇の摂政として隋の皇帝に宛てて「日出づる処の天子、書を日没する処の天子に致す。つつがなきや」と認めました。『北斗の拳』の主人公ケンシロウよろしく「お前はもう死んでいる」と言わんばかりで、ほとんど喧嘩腰の国書だったわけです。

白には「無駄」、「無意味」という意味もあります。“白跑了一趟” と言えば、「無駄足を踏んだ」という意味です。“白话” なら「口から出まかせ」です。

美白は世界共通で「白」

最後に「白」が持つ世界共通概念を紹介して終わります。その世界共通概念とは「美白」です。

  • (日) 美白
  • (中) 美白
  • (英) whitening
  • (西) blanquear
  • (葡) branquear

日本では一時期流行し死語になった「ガンクロ」がありますが、美を求めるのは世界共通なのですね。しかし、これも人種を問わず同じ色の歯に使って、”teeth whitening” と二語にするか、より安全なのは、言い換えて “teeth bleaching” とする方がよいと思います。

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