アルツハイマー型認知症発症モデルで「果糖起因仮説」があるそうです。果糖過多⇒脳内の尿酸値上昇⇒脳を低消費モードに切替⇒食料探しに集中⇒記憶と意思決定を捨てて脳が廃用萎縮する、というメカニズムだそうです。砂糖は摂らないに越したことはなさそうです。
「果糖起因仮説」とは
果糖というのは、その名の通り果物に含まれる甘い成分です。ブドウ糖よりも2倍程度甘みを強く感じます。それもあり、果物に含まれる果糖は大した量でもないですが、甘く感じます。この果糖が何とアルツハイマー型認知症を発症させる要因の1つかもしれないというのです(1)。
ブドウ糖の方は、その摂り過ぎがインスリン抵抗性を惹き起こして、ひいては2型糖尿病や「3型糖尿病」という人もいるアルツハイマー型認知症を発症させることが知られています。
果糖の方はここまでメカニズムがストレートでないので、今も「多分そうに違いない」という仮説の域を出ていないようですが、果糖の摂り過ぎが、逆説的ですが、水・食料・酸素が足りない時に体が突入する「サバイバル・モード」を誘発するらしいのです。
簡単に言うと、流れはこうです。
- 先ず、果糖が酵素によりリン酸化する。この時、細胞のエネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)を使う
- ATPが分解してAMP(アデノシン一リン酸)ができる
- AMPが代謝されて尿酸ができる
- 尿酸が体をサバイバル・モード切り替える
- サバイバル・モードでは、脳の中でも海馬などの記憶を司る部位や意思決定を行う前頭前野などの大飯食らいの部分の活動レベルを下げる。食料探しに必要な即物的な部位は通常運転させる
サバイバル・モードはあくまでも短期戦であれば、生存に有効です。しかしこれが長期にわたると、大変です。記憶や意思決定を行う部分が廃用萎縮していくというわけです。
高GI値の糖質・塩・アルコール、そして旨味も
この他にも、消化しやすくてすぐに血糖値を上げる高GI値の糖質、塩の摂り過ぎ、アルコール摂取も体をサバイバル・モードに入れる因子だそうです。
そして何より驚いたのが、世界でも “umani” で通じる旨味成分であるグルタミン酸塩、イノシン酸塩、プリン体もサバイバル・モードをオンにしやすいとのことです。
よく砂糖や塩分を控えめにするために、だしを効かせることを勧める料理メディアがあります。ですが、認知症予防という観点からすると、実は考えものだということになります。
今挙げたものはすべて食欲を増進させるものです。つまり、食欲をそそる味は認知症になりたければ控えめにする必要があります。一方、苦みや酸っぱさは食欲を減退させるようにはたらくので、認知症予防にはよいそうです。「それじゃ生きている意味がないじゃないか」という声が聞こえてきそうですが。
コーヒーやカカオがよいのは案外苦いから?
認知症予防にコーヒーやカカオがよいという話が盛り上がっています。カフェインが効いているのではないか、いやいやポリフェノールが効いているのではないかという諸説あります。
それもあって、私も毎朝無糖のソイオレを飲んでいますし、高カカオチョコレートではなく、カカオ豆を買ってきてそのままボリボリ食べています。確かにどちらもカフェインの効果で目を覚ますのにもいいですし、香りも高いです。甘さ、しょっぱさ、旨味そのどれもありませんし、酔えもしませんが、それはそれで楽しめます。
しかし、今回紹介したこの論文によると、単に苦いからなのかもしれないと思えてきます。
最後に、果物には確かに果糖が含まれているので甘いですが、ごく微量です。それに、果糖の他にも食物繊維、ビタミンC、フラボノイドなどの健康によい栄養成分がたくさんあります。また、食物繊維が果糖の吸収を緩やかにします。ということで、ドカ食いさえしなければ、積極的に食べましょう。
[参考文献]
- Richard J. Johnson, Dean R. Tolan, Dale Bredesen, Maria Nagel, Laura G. Sánchez-Lozada, Mehdi Fini, Scott Burtis, Miguel A. Lanaspa, David Perlmutter. Could Alzheimer’s disease be a maladaptation of an evolutionary survival pathway mediated by intracerebral fructose and uric acid metabolism? The American Journal of Clinical Nutrition, 2023; DOI: 10.1016/j.ajcnut.2023.01.002
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