学生時代には、授業の合間に休憩時間がありました。社会人になると、休憩時間はなくなってしまい、昼休みだけになります。パフォーマンスとの兼ね合いですが、最新研究によると、10分休憩を合間に入れてもパフォーマンスは下がらないそうです。昼寝しましょう。
休憩は大事
休憩は中国語では「休息 xiūxí」です。日本語の休息とはちょっと時間的な長さの概念が違うニュアンスです。英語では “break”です。中断というニュアンスです。ブラジル・ポルトガル語とスペイン語では綴りも読み方も同じで “descanso” です。動詞にすると、”descansar” です。”cansar-se / cansarse” が「疲れる」の意味で、それを “de-/取り除く” わけです。
「ちょっと、休憩させてください。」なら、
(中)让我休息一下吧。/(英)Give me a break. /(葡)Deixe-me descansar./(西)Déjame descansar.
勉強、仕事、運動を問わず、休憩を入れると、心も体もリフレッシュすると思います。”Give me a break” で始まる題名の論文で休憩の興味深い側面がありましたので、紹介します。ちなみに、”Give me a break” には「ご冗談でしょ」という意味もありますが、データに基づいた本当の話です。
休憩でやる気がよみがえり、疲労が回復する
休憩をとると、古今東西を問わず、どんな勉強/仕事でも、やる気がよみがえり、疲労が回復するようです。気分転換という言葉があるように、単純作業か創造的仕事かに関わらず、一旦気が逸れると、頭の中がリフレッシュされて、やる気が元に戻り、疲労感も和らぐ機能が体には備わっているようです。
休憩が長いに越したことはないのですが、あまりに長いと、サボっていると思われますので、ほどほどがよいでしょう。休憩時間はだいたい10分程度で設定されることが多いと思います。それぐらいでも心のリフレッシュには十分なようです。
休憩でパフォーマンスが上がるかは事情が複雑
休憩すると、パフォーマンスが上がるかについては事情が複雑です。
例えば、単純な事務作業は脳の中である程度自動処理モードができているため、休憩をとることで、パフォーマンスが回復する傾向があります。あまり影響しないのではないかと思われがちな創造的な仕事もパフォーマンスが回復する部類だそうです。
創造的な仕事は頭の中の記憶の抽斗から取り出して互いに組み合わせたりなど記憶同士を交配させて、新しいことを思いつくような作業です。そういった時に、気分転換で休憩時間に別のことをすると、全く別の情報が入って来て、それが頭の中の別の記憶と交配する可能性があります。おそらく、そういうことが起こる確率が高まるので、創造的な仕事にとっても、休憩はよい効果を及ぼすのでしょう。
ベンゼン環の構造を見つけたケクレ(August Kekulé)というドイツの化学者が、夢の中でベンゼン環を思いついた逸話は有名です。眠っている時に、脳の中で記憶の取捨選択などの整理がされると言われています。「こっちの抽斗とあっちの抽斗にある情報を同類項で括ろう」という処理がされているのだとすれば、わずか10分とは言え、休憩時間に昼寝をするのもあながち悪い話ではないはずです。
一方、判断を求められるような仕事ではあまりパフォーマンスは向上しませんでした。旅客機のパイロットの実験結果が例に挙がっていましたが、休憩の有無がパフォーマンスの向上には影響しませんでした。しかし、他の実験結果を含めたメタアナリシスでは、判断を求められるような仕事においても、休憩時間の分、仕事時間が削られますが、少なくともパフォーマンスを落とすような逆効果は見られないという結果でした。
昼休みに昼寝を習慣に
元々進学校の福岡県立明善高校が「午睡タイム」を導入して以降、難関大学への進学率を飛躍的にアップさせたのは有名な話です。そもそも受験勉強で睡眠時間を削ってまで頑張っていたのが仇になって、実は勉強効率を下げていたのかもしれません。「午睡タイム」の導入で、睡眠負債を返済できたことが奏功した可能性はあります(睡眠負債については、「ボケないための睡眠」の回をご覧ください)。
しかし、今回紹介した論文が示すように、パフォーマンスを上げる効果も加わっているのではないかと思います。それもあって、私は昼休みに10分だけ昼寝しています。意識がなくなるほど寝てしまうことはありませんが、目を閉じるだけでも、目から入ってくる情報が遮断されて、脳はその分、記憶の整理などの別の処理に労力を振り向けるので、よい効果が期待できます。
英 BBC 放送の CrowdScience という番組でも、脳は寝ても覚めても、脳トレやっても消費カロリーは同じだったという実験結果を紹介していました。昼寝しても、脳はしっかり働いてくれるのです。10 分の昼寝は決してパフォーマンスの妨げになりませんので、是非生活習慣に取り入れてみてください。
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