日本語と外国語として学んでいる英語、中国語、ブラジル・ポルトガル語、スペイン語の5つの言語はそれぞれ成り立ちが違いますが、現在西暦を使っています。年はどの言語も数字で表し、月は日中は数字で、英葡西は非常に似ています。しかし曜日になると、五者五様なのです。
そしてみんな西暦になった
現在、欧米だけでなく、日本も中国も西暦(=グレゴリオ暦)を使っています。最初から西暦だった欧米はさておき、日本と中国は欧米がデファクトスタンダードを握るグローバル社会で生きていくために、ともに旧暦を捨てて、西暦に乗り換えました。
日本は明治時代に旧暦から西暦に移行しました。とは言え、元号と併用されているのが現状です。今も公的機関が発行する公文書は元号を使う場合がほとんどです。しかし、PCやスマートフォンが普及した今では、ISOやJISで定義された西暦を使ってすべてのシステムが動いています。自ずと、生活の中で元号よりも西暦でモノを考えることが圧倒的に多くなったでしょう。
中国は辛亥革命で清王朝から中華民国に変わった時点で元号を廃止し、建国の1912年を起点として民国紀元を採用し始めました。今も台湾ではこの民国紀元を使っています。とは言え、事情は日本と同じで公文書は民国紀元ですが、民間は西暦が主です。一方、大陸は中華人民共和国成立の1949年に西暦に乗り換えました。
世界には西暦を使わない国々もありますが、たまたま私が学んでいる言語を使う国々は西暦を主に使っているわけです。テクノロジーが人々の生活を一変していく中で、西暦を使わない国々でも公的な建前はさておき、民間では西暦がデファクトスタンダードになっていくことは間違いないでしょう。
不揃いな年月日表現
コンピューター上で数字で表現する年月日は、西暦がデファクトスタンダードになりました。それでみんなが動けばよいのですが、そうは問屋が卸さないのも事実です。
日本語も中国語も yyyy 年 mm 月 dd 日(中国語の「日」は口語では“号”)と表現しますが、英語、ポルトガル語、スペイン語の「月」は英語の January, Febrary, March … と同じような表現をします。表にまとめてみました。以下をご覧ください。
日中は数字で表現されていて、直感的ですし、12進数になっているので、システマティックな印象を受けます。「今月から5か月後」という時も、暗算で例えば「8 足す 5 を 12 で割ると 1 余るから 1 月だ」ということが分かります。
ところが、英語、ポルトガル語、スペイン語の「月」表現ではそうはいきません。ローマ時代の カエサルとアウグストゥスの呪いが未だにかかっているのです。7 月にユリウス・カエサル(Julius Caesar)、 8 月にアウグストゥス(Augustus)が割り込んできたので、9月で接頭辞になぜか 7 を意味する “Sept-” もしくは “Set-” がきて、その後に続く接尾辞が “-ber”, “-bre”, “bro” で終わる月が2か月ずつずれています。偉い人の超法規的措置が後世まで禍根を残している一例です。
欧米よりも日中の方が一貫して「 PISA 数学的リテラシー」でも順位が高いのは、こういう日常的なところでも混乱を招くような慣習が残っているためなのではないかと勘繰ってしまいます。
さらに闇が深い「週」の表現
さらに闇が深いのは「週」の表現です。西暦ですので、日本語、英語、中国語、ポルトガル語、スペイン語の5つの言語のどれも一週間は7つ曜日で構成されているのは同じです。しかし、曜日の表現はみんなバラバラです。下の表をご覧ください。
日曜日以外は全て数字を使っている中国語が一番システマティックなのが分かります。平日の第1日である月曜日を起点にして1、2…とカウントアップしていきます。7 進数で考えれば、「水曜日(星期三)から五日後」という時も、暗算で例えば「3 足す 5 を 7 で割ると 1 余るから月曜日(星期一)だ」ということが分かります。
その次は実はポルトガル語です。土日以外は数字表現になっています。ただし、日曜日を起点にして、月曜日が「第2日 = segunda-feira」という表現方法になっています。月曜日を第1日とする中国語が一番ビジネス向きですが、ポルトガル語も 7 進数で考えやすいです。
日本語含めその他の英語、スペイン語と合わせた3言語は曜日それぞれが固有名詞になっているので、「今日から五日後は何曜日?」という単純な算数ではなく、カレンダーを思い浮かべて、「 5 は 7 より 2 少ないから、左斜め下に2つ戻ったところだから…」ということを考えなければなりません。こちらの方が幾何学的な思考も入って頭の体操にはなりそうですが。
その他の点で、スペイン語を学び始めておもしろいと思ったのが、土日を除けば、日本語と同じく曜日の名前が惑星というかローマ神話の神々の名称になぞらえたものになっていることです。元はと言えば、日本の曜日の表現はあちらが由来なので、当然と言えば当然です。
しかし、ヨーロッパ語の中でもゲルマン語系の英語とラテン語系のスペイン語とで曜日表現が違い、同じラテン語系の中でもスペイン語とポルトガル語ではそれぞれ異なるというのは興味深いです。
PISA 数学的リテラシーで中国が強い理由か
こうして見てくると、中国語の年月日・曜日表現が一番算数・数学と相性がよいことが分かります。まさに情報化社会向きと言えます。これが PISA 数学的リテラシーの国別ランニングで中国が強い理由の一つなのではないかと考えます。
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