お互い非ネイティブ同士の会話と違って、ネイティブ同士が交わす日常英会話を聞き取るのは本当に難しいです。ゆっくりはっきり単語を1つずつ発音するリスニング教材とは異なります。ネイティブは単語の固まりを1語のように話します。どうすれば聞き取れるでしょうか?
難しい単語を知っているのに、日常会話が聞き取れない
日本語でも英語でも日常会話で使う単語は、それほど難しい単語はありません。おまけに既によく知っているフレーズだったりしますが、聞き取れません。これはどうしてでしょう。
“What time is it now?” は無理にローマ字に起こすと「wa lai izi na?」のように聞こえると思います。そうなのです。”What time”で “t” が2つ続くと、1つになります。さらに “t” は早口になってくると、舌で上の歯茎辺りに触れる程度になってくるので、”l” としか思えない聞こえ方をしてきます。
また、単語の最後にくる音は発音しているのでしょうが、爆発音的にはっきり発音する音でなければ、省略され気味になって聞こえてきません。”time” の “m”、 “it” の “t” や “now” の “w” が聞こえるか聞こえないか怪しいところになります。
それから、前の単語の最後が子音で後ろの単語の最初が母音に場合は、日本語の五十音のように聞こえます。ですので、”is it” は “izi” に聞こえます。
処方箋は『ボトムアップ式 映画英語のリスニング』
そう言われてみれば、そう思いませんか?この疑問に答えてくれるのが『ボトムアップ式 映画英語のリスニング』(森田勝之 編著)でした。
10年前、上で挙げたような音の変化が起こることを体系的に教えてくれる人も教室もありませんでした。今もその状態は変わっていないかもしれません。この書籍には本当に助けられました。音の変化には法則性があることが分かり、頭の中にあったモヤモヤが消えました。ヒトという生き物は分類好きで、あれもこれもと個別の課題が積み上がってくるとウンザリとしますが、一度体系立てて簡単に分類されると、スッキリしますね。
推理小説の筋書きで、音の弱化と消失、”t” の音変化、音の抑制と連結、音の短縮と同化を体系立てて練習していきます。量をこなせば自然に身につくような謳い文句の教材がいろいろありますが、まず法則性があって、それに基づいて練習問題をこなしていくような学習スタイルの方が、私だけでなく多くの人にとって納得感があると思います。
またストーリーがおもしろいので、エンターテイメントとしてもバッチリで諦めることなく勉強を続けることができることもこの教材の一押しポイントです。同じ著者の姉妹書に『海外ドラマが聴きとれる! ストーリーで学ぶ英語リスニング』があります。病院を舞台にしたドラマ仕立ての筋書きです。こちらも同じように音の変化について学べてしかもストーリーが面白いのでお奨めです。嗜好に合わせてどちらを選ぶもよし、どちらもやるもよしです。
音読練習でリスニングの得点も上がる
シャドーイングするには速過ぎますので、シャドーイング用の教材としては適していません。
ただし、学んだ音の変化をまねてネイティブになったつもりで音読練習を繰り返していると、頭の中に音のマップができて、リスニングにも強くなります。リスニングの得点が伸びずにTOEIC 700点台前半をさまよっていた時に、この本に出会いました。音の変化の法則に「そういうことだったのか」と合点がいって音読練習した後、一気に 800 点台に伸びました。
「ご当地訛りの英語を聞き取る力を鍛える教材」の回で紹介した教材を勉強する前に、先にこちらに取り組みましょう。
スッと頭に入る法則性を学んだ後、腑に落ちれば、やる気が戻り、伸び悩みを解消できるはずです。リスニングは瞬間芸です。あとは量をこなしましょう。でも、もう不毛感はなくなっているはずです。
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