挑発は閉塞音、和らげるにはや・ら・わ行の音

baby 語学

言語によらず、挑発的な言葉には閉塞音 ‘b’, ‘d’, ‘g’, ‘p’, ‘t’, ‘k’ が含まれことが多く、それを言い換える場合は、‘l’, ‘w’, ‘y’, ‘r’ の音を差し入れるというのが世界共通だそうです。その視点でブランド名を見ると面白いことが分かります。

挑発的な言葉には ‘b’, ‘d’, ‘g’, ‘p’, ‘t’, ‘k’ が多い

舌を打ったり、机を叩いたり、ドアを満身の力で閉めたりと急な動きをするときは、 ‘b’, ‘d’, ‘g’, ‘p’, ‘t’, ‘k’ を含む音が立ちます。このような音は、空気がある空間に閉じ込められた後に、一気に噴き出す時の閉塞音(plosive)と呼ばれる音です。言われてみれば、なるほど人の注意を引きやすく、挑発的な音です。

服飾・宝飾品ブランド名に多い気がします。閉塞音を2つ以上含むのは、Prada は ‘p’と ‘d’、Burberry は ‘b’ が2つ、Bvlgal は ‘b’ と ‘g’ 、De Beers は ‘d’ と ‘b’ です。日本でも Tasaki は ‘t’ と ‘k’ があります。閉塞音を含まないように命名する方が却って難しいのかもしれません。

閉塞音を含まないは Chanel、Armani、Hermès です。確かに何となくこちらの音の響きの方が安心できる印象を受けます。値札を見ると、こちらも負けず劣らず挑発的な数字が並んでいますが…

アーティストの名前も狙って命名しているのではないかというものも多いです。例えば、Lady Gaga は ‘d’ と ‘g’ が2つで計3つも閉塞音が並びます。彼女の場合は、この効果をわざと狙ってつけたようです。Doja Cat も ‘d’, ‘k’, ‘t’ と3つです。Clean Bandit に至っては ‘k’, ‘b’, ‘d’, ‘t’ の計4つです。

逆に閉塞音を含まない代表格は Marshmello です。楽曲に過激な内容は少なく、中高生が英語を学ぶのに持って来いの歌詞が多いです。ちょっと意外なのが Maroon 5 です。最近の楽曲はおとなしめですが、かつては挑発的な内容が多々ありました。しかし、閉塞音を一つも含みません。 バンド結成当時は中高生向けの路線でも目指していたのでしょうか。

‘l’, ‘w’, ‘y’, ‘r’ に音を入れ替えるとマイルドになる

過激で挑発的な言葉 (swearing word) には ‘b’, ‘d’, ‘g’, ‘p’, ‘t’, ‘k’ の閉塞音(plosive)を含むのは、世界共通のようで、言語の発生起源が異なる言語間でも共通なようです。そして、これらを言い換えてマイルドにするには、‘l’, ‘w’, ‘y’, ‘r’ の音を差し入れるのが効果的だということが、最新の研究で明らかになりました。このように表現を和らげた言葉は “minced oath” と呼ばれます。

英語の例ですと、”Damn” ⇒ “Darn” や “God” ⇒ “Golly”、”Shit” ⇒ “Shinola” などがそうです。このような言い換えが挑発的な表現を和らげるのに効果があることは、インド・ヨーロッパ語族だけでなく、アラビア語の話者や韓国語の話者でも認められるとのことですので、人類に共通したものなのでしょう。

挑発的な言葉を和らげるには、‘l’, ‘w’, ‘y’, ‘r’ を使えばよいことが分かりました。そうすると、先ほどの服飾・装飾品ブランド名やアーティストの名前が違って見えてきます。

  • Prada:(’p’と ‘d’の2つ)ー(’r’ が1つ)=閉塞音1つ
  • Burberry:(’b’ が2つ)ー(’r’ が2つ、’y’ が1つ)=閉塞音数はマイナス1個
  • Bvlgal:(’b’ と ‘g’ の2つ)ー(’l’ が2つ)=閉塞音0個
  • De Beers:(’d’ と ‘b’ の2つ)ー(’r’ が1つ)=閉塞音1つ
  • Tasaki:( ‘t’ と ‘k’ の2つ)のままで閉塞音2つ

音だけで判断すると、何と日本の田崎真珠が一番挑発的という結果になってしまいました。この辺意識的なのか無意識なのかブランド名は、実はあまり挑発的にならないようにうまく折り合いをつけていることが分かります。

アーティストの名前についての検証はお任せします。一つ付け加えるとすれば、Marshmello は 閉塞音がないばかりか ‘r’ も ‘l’ もあって、どこまでも安心感を与える名前であることです。今後もこの路線で頑張っていくものと思います。

一般名詞では例外もあります

一般名詞では例外ももちろんあります。例えば “baby” は挑発的かいうとそうではないですね。英語の場合は、’b’ が2つで ’y’ が1つあるので、差し引き閉塞音の数は1つですが、スペイン語とポルトガル語ではともに “bebé” なので、閉塞音が連続2つです。メキシコ人やブラジル人には挑発的に聞こえるでしょうかね。

一方、中国語では “婴儿 (Yīng’ér) なので ‘y’ と ‘r’ が含まれていて優しく聞こえます。日本語では「赤ちゃん」で閉塞音の ‘k’ が1つだけ含まれます。この程度であれば、それほど挑発的ではないでしょう。こうして見ると、赤ちゃんに対する東西の文化の差なのでしょうか。

ちなみに、今度勉強を始めようかどうしようか迷っているインドネシア語は宗主国のオランダの言葉から影響を受けたためか、’b’ を含む “bayi” です。’y’ も含みますので、閉塞音は差し引きゼロ語です。この辺からも東洋では好ましい子宝という思想なのでしょうかね。

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