指なぞりで記憶力が向上する

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老若男女誰でも指をなぞって勉強すると記憶に残りやすいそうです。指なぞりに代表されるジェスチャーがワーキングメモリー消費を抑えてくれるからです。指でなぞることでどこまで読んだのか動くしおりになっているのでしょう。

モンテッソーリは正しかった?!

シドニー大学がホームページ上に掲載した記事によれば、子どもでも大人でも指をなぞって勉強すると記憶に残りやすいそうです。

子どものケースは上海に住む中国人小学校4年生と5年生 93 人を3つのグループに分けて行われた実験で分かったことです。図形の課題で三角形の3つある角うち2つの角度が分かっている時に、最後の1つの角度を求める例題です。3つのグループは、例題を覚える時に見るだけだったグループ、図形を指でなぞったグループ、図形を指でなぞった後に目を閉じて図形を思い描いたグループです。

それぞれに例題と類似の課題を出題した時に、見て覚えたグループより図形を指でなぞって覚えたグループの方が解答が速かったそうです。おまけに、”cognitive load” (意識への負担)が低く、学習意欲は高いという心理的効果もあったそうです。 図形を指でなぞった後に目を閉じて図形を思い描いたグループが3つのグループの中では最も回答が速かったとのことです。

詳しくありませんが、モンテッソーリ教育では指なぞりをして学習するようです。都内でモンテッソーリ教育を実践している学校は白百合学園が有名です。通っている学生さんたちは物覚えがよいのかもしれません。

脳のワーキングメモリーに悪さする”意識への負担”

脳の中に短期記憶を司るワーキングメモリーというものがあって、ヒトは一時に5つから9つのことしか覚えられないということ聞いたことがある方もいらっしゃると思います。

ごちゃごちゃといろいろな物事を次から次へと教わる状況はワーキングメモリーをすぐに消費し尽くしてしまうためよくありません。体系立てて学びたいですね。

それから、初心者のうちはいきなり問題を解くのではなく、例題でしっかり解法覚えた方が効率的なようです。初心者はそのことが不案内なので、いきなり問題を解くとあれやこれやと頭を巡らせてしまい、それだけでワーキングメモリーを使い果たしてしまいます。長期記憶の方で覚えて経験値が貯まって以降は、問題慣れするのが手っ取り早いそうです。

そして、指なぞりに代表されるジェスチャーがワーキングメモリー消費を抑えてくれるそうです。指でなぞることでどこまで読んだのか動くしおりになっているのでしょう。指折り数えるのもその類です。意識の中で負担になっているものが外出しされるためです。そういう意味では暗算ではなく、筆算した方がワーキングメモリーを温存することにつながりそうです。

不安もワーキングメモリーを消費する

その他目に入ると気が散る部屋の内装や耳障りな音も気を取られてワーキングメモリーを消費してしまうそうです。目に飛び込んで来るものは片づけて、耳障りな音は耳栓するのが対策になります。詳しい話をご覧になりたい場合は原論文をご覧ください(1)。

不安を抱えていたりしても、ワーキングメモリーを消費してしまうそうです。心理的プレッシャーがワーキングメモリーを害するという話は『進化する学習法』にも出てきます。面白いことに

プレッシャー がかかったテストでは、ワーキングメモリー能力が高いグループの点数は大きく 低下する一方、ワーキングメモリー能力が低いグループの点はほぼ変わりませんでし た。

竹内 龍人. 進化する勉強法:漢字学習から算数、英語、プログラミングまで (Kindle の位置No.1572-1573). 株式会社誠文堂新光社. Kindle 版.

記憶名人としてテレビ番組に登場する人たちでもプレッシャーを受けると、凡人近くまでワーキングメモリーが減ってしまいます。

これには対処法も紹介されていて、プレッシャーや不安を全部吐き出すために紙に書き出すのだそうです。日記をつけるは毎日プレッシャーや不安を吐き出す先としてはよい方法のかもしれません。

人前で指なぞりは気が引けるとしたら…

しかしそうは言っても、通勤電車の中で本を読むのに人前で指なぞりするのは気が引けるという方も多いと思います。赤マーカ部分を隠す赤色セロハンシートを指の代わりに使うのはどうでしょうか?勉強している気になりますし、目線が赤色セロハンシートの端を追うので、同じような効果が得られるのではないでしょうか。

語学でいうと意識への負担を下げてくれるジャスチャーに当たるのが音読です。音読がいいといっても、人迷惑なので電車の中では大声を張り上げることはできません。せいぜいが指でなぞりながら口パクですね。コロナ禍でみんながマスクを着けているので、今なら口パクし放題です。ここぞとばかり頑張って口パク勉強しましょう。

アフターコロナになっても、電車の中や繁華街を歩く時など人ゴミの中を通る時は、今でもマスクをしていることが多いです。おかげさまでコロナ禍が始まって以来この方風邪を引かなくなりました。おそらく、口元や鼻に手を遣っても、口や鼻に直接触れずに済むので、手指経由で感染症に罹ることがないからでしょう。ということで、思いっきり口パクを続けています。

[参考文献]

  1. Paas, F., & van Merriënboer, J. J. G. (2020). Cognitive-Load Theory: Methods to Manage Working Memory Load in the Learning of Complex Tasks. Current Directions in Psychological Science29(4), 394-398. https://doi.org/10.1177/0963721420922183

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