ビタミンDが認知症予防に効果的と知られていましたが、大規模な統計によりどれぐらいの量が閾値になっているかが明らかになるとともに因果関係も明確になりました。英国の UK Biobank のデータなので、日本人にそのまま当てはまらないかもしれません。ですが、同じヒトです。魚を食べて、朝散歩してビタミンDをたくさん摂ることはよいでしょう。
認知症予防にビタミンD
豪サウスオーストラリア大学の研究グループが英国の UK Biobank にある2万4千人弱のデータを使って、ビタミンDの血中濃度と認知症との関係を調べました。
みなさんが持つビタミンDのイメージは骨を強くして、骨粗鬆症を防ぐのに役立つことでしょう。それから最近では、コロナ禍で話題になっているのが、免疫力を高めてくれる効果でしょう。
ビタミンDは他にも健康にとって重要な役割をします。それが認知症予防です。
どうしてビタミンDが認知症を予防するメカニズムは3つあると言われています。1つ目が脳内で神経細胞を成長させるホルモンを作るのを促します。2つ目が血管の中に血栓ができるのを防いだり、血圧を安定させたりして、血管を保護します。脳内の血管が痛むと、血管脳関門を異物が素通りしていくことになります。最後の3つ目は脳内の炎症を鎮めるはたらきです。
今回の研究が興味深いのは、他の研究結果よりも断然サンプル数が多く、統計的に非常に信頼がおけることに加えて、ビタミンDの血中濃度がどれぐらいの量以下なら、認知症リスクが急に高まるのかということを明らかにした点です。
その閾値となるビタミンDの血中濃度が 25 nmol/L です。それより低い濃度ですと、急に認知症になるリスクが高まります。50 nmol/Lを基準にとると、25 nmol/L で約2倍のリスクになって、それよりも濃度が低くなると、加速度的にリスクが高まっていきます。
しかし、「ビタミンDの血中濃度が 25 nmol/L 未満だと、一気に認知症を発症しやすくなりますよ」と言われてもピンと来ません。私もそうです。やはり、摂取量に換算してもらわないと、どうすればいいか分かりません。
ビタミンDと遺伝子の関係も明らかに
今回紹介しました研究では、ビタミンDと遺伝子の関係も明らかにしました。遺伝子の型の違いでタンパク質がビタミンDと結合しやすいかどうか決まるそうです。遺伝子を構成するたった塩基2個が入れ替わるだけで今回の結果が大きく変わるそうです。
もちろん、タンパク質が結合しにくくなれば、ビタミンDが作用しにくくなります。このことから、ビタミンDの血中濃度が低いと認知症にかかりやすいという因果関係の方向であることがはっきりしました。
ビタミンDを摂るならどれぐらい必要か
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、成人の場合の1日当たりの摂取目安量は性別に関わらず 8.5ug/日 です。
もちろん、日光に当たることでビタミンDを自分で作るという方法も有効です。食べ物から摂取すべき目安量「8.5ug/日」という数字は、札幌に住む人が冬に曇天の外に出かけた時にでも、最低 5ug は自分で作れるだろう、という仮定を基にしたものです。日本で考えられるほぼ最悪ケースですね。
ですので、緯度が低い温暖なところに住んでいて、アウトドアが好きな人は食べ物から摂らなくてもよいかもしれません。
8.5ug/日 が最低限摂取したい量だとすると、これ以上摂ると危険という量も示されています。ビタミンDを過剰摂取すると、高カルシウム血症、腎障害、軟組織の石灰化障害の危険があるそうですので、多過ぎても何かあることは覚えておいて損はないでしょう。ビタミンDは脂溶性なので、排せつしづらいということもあり、上限量は 100ug/日 となっています。
ビタミンDを摂るなら魚を食べよう
しかしここまで来て、「1日に必要な量は分かった。でも何をどれだけ食べたら十分なのか分からない」というのが本音のところでしょう。私もそうです。
何がいいでしょうか。そうです、魚です。野菜には含まれていませんし、肉も少ないです。断トツで魚です。よく食べる魚は、大衆魚のサバとサケではないでしょうか。
カロリーSlim というサイトがあるので、調べてみると、サバは1尾(95g)で 10.5ug 、サケは切り身(80g)で何と 26.4μg も摂れてしまいます。効率よくビタミンDを摂取できて、どちらも DHA と EPA も豊富です。これらも脳によいですから、願ったり叶ったりです。
おまけに、「圧力釜を使って骨まで煮魚をいただきましょう」の回で紹介したように、圧力釜で魚のアラを煮れば、カルシウム豊富な骨までおいしくいただくことができます。是非お試しください。
魚好きの日本人がどうして認知症発症率が断トツ1位か?
しかし、日本人は日照時間が比較的長い中緯度に住み、ビタミンDを豊富に含む魚をよく食べているにも拘らず、どうしてOECD加盟国で認知症発症率が1位なのでしょう。
少子高齢化社会の先頭を走っていることが原因の1つでしょう。睡眠時間が断トツで少ないことも原因かもしれません。気になった方は「ボケないための睡眠」の回を参考にしていただいた後、早速寝ましょう。
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