帰国組が中国を半導体立国に押し上げるか

半導体 科学技術
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海外の大学や企業で半導体関連技術を学び、名を成した中国人たちがこぞって帰国し、中国国内で起業して成功しています。半導体産業の規模が急速に拡大し、国産材料が足りずに輸入に頼っているのが現状ですが、人材が集まり、需要もあり、資金も豊富なので、好循環で株式市場が活況を呈しています。

人材の波が帰国へ

数十年前の中国は、優秀な人材が海外留学の切符を手に入れたら、戻って来ないようなところがありました。国内でも割の良い就職先は外資系企業でした。しかし、GDPで日本を抜いて世界第2位になった2011 年辺りからだったか、国内の企業に転職するようなケースをよく見聞きするようになりました。中国の4大銀行やファーウェイに転職すると嬉しそうに話す人も出てきました。

最近読んだ 36Kr の記事では、半導体製造装置を作る中微公司、シリコンウエハーを作る神工股份、LEDなどで使われるGaN-on-Si と呼ばれる半導体の積層技術を持つ晶湛半导体、半導体を設計するツールを作る芯原股份、AI (人工知能)で使われる GPU (Graphics Processing Unit; 画像処理装置) を作る摩尔线程、フラッシュメモリなどを作る兆易创新、カメラなどで使われるCMOSセンサを作る格科微、世界第4位の半導体請負製造会社の中芯国际を紹介しています。これらの会社の創始者がすべて帰国組です。

ここ最近の AI 時代になり、データを取るにはやはり人口が多い国として、憧れの眼差しで見られます。特許や論文で中国系の名前が連名されていることは非常に多いです。彼らが仕事しやすい場所として故郷の中国を選んで帰国しても不思議ではあります。

ちなみに台湾人出身でシリコンバレーでAIをやっていた李開復さんの Youtube 動画を見ましたが、やはりデータ取るなら中国ということで、現在活躍の場を中国に移しているそうです。Youtube で李開復か Kai-FuLee で検索すると、たくさん動画が見つかります。台湾の人でさえ AI の未来は中国にあると考えているのです。

旺盛な需要

AI をやるのに大量に GPU, FPGA (Field-Programmable Gate Array; 書換可能な論理回路集積装置), CPU (Central Processing Unit; 中央演算装置) といった半導体が必要になります。

PCやスマートフォンで使われる CPU は今でもアメリカ企業が強いですが、「MWC 2022 米中西の報道拾ってみました」の回で紹介したように、スマートフォンのメーカーは中国企業が大半です。彼らがコストダウンのためにいつかきっと自前で CPU を作りたいと思っているはずです。ファーウェイはアメリカから制裁を受ける前から、自社のスマートフォンに半導体子会社の 海思半导体有限公司/HiSiliconに作ってもらった自前の CPU “麒麟/Kirin” を搭載しています。

自動運転車が出てくるのを待たなくても、電気自動車では無数の半導体が必要になります。旺盛な半導体需要がそこにあるのです。

しかし、いかんせん現状の中国は、その旺盛な需要を満たすだけの半導体関連の材料を国産できていません。別の記事でそのことが報じられています。2020年の数字ですと、年率 30% の成長を遂げており、供給が需要に追い付いていない様子です。余談ですが、この記事の中で、フォトレジストで日本勢がまだ頑張っているのが分かります。

豊富な資金

中国政府や省・市政府からの資金援助だけでなく、株式市場からも資金が流れ込んでいて、半導体関連会社の時価総額が膨れ上がっています。その様子を伝える記事によると、株式市場の「科创板」と呼ばれるハイテク部門で、52社が上場していて、ハイテク部門の 17% を占めるそうです。

材料、設備、パッケージ、製造、設計と半導体を作る上で必要なものが一通り揃っています。中でも設計が一番多く、全体の 60% を占めます。

記事の中の業績ランキング表を見ていただくと、栄えある1位の会社、东芯股份、の利益成長率は前年比なんと1240.81% 増です。驚きの成長率です。表には23社が名を連ねていますが、一番下の银河微电でさえ、前年比利益 101.78% 増です。

業績ランキング表の中に、先ほど帰国組が起業した会社として紹介した中微公司、神工股份や中芯国际の名前も見えます。記事の中で「2021年是半导体的黄金之年/2021年は半導体黄金の年」と述べていますが、まさに黄金時代を謳歌しています。

日本も昔は半導体は「産業の米」扱いでしたが…

日本もかつては半導体のことを「産業の米」と呼んで、国を挙げて産業育成支援していました。「リチウムイオン電池に見るお家芸の「家」変遷:日本⇒韓国⇒中国」の回で触れたように、『電子立国日本の自叙伝』が懐かしくてたまりません。

とは言え、懐かしんでいても始まりませんので、我に返って前を向いて次のことを考えましょう。

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