“尽量” の発音は jìn liàng と jǐn liàng のどっち?

YinYang 語学

簡体字の “尽” は「尽くす」を意味する “盡 (jìn)” と最上級を意味する “儘 (jǐn)”の2つの繁体字を起源にします。それぞれ声調も違いますが、同じ文字を当てられました。さて問題です。「極力 / as much as possible」を意味する “尽量” は jǐn liàng と jìn liàng 、どちらの発音でしょうか?

“盡 (jìn)” は「尽くす」

“盡 (jìn)” は中国語で「尽くす」を意味します。百度百科によると、甲骨文字まで遡ると、手にたわしのようなものを持って食器を洗う情景を文字にしたものだそうです。したがって、食事を食べ「尽くし」て、食器をきれいに洗い「終わる」ことを意味していたようです。ここから、「尽くす」、「行き着くところまで行く」という意味になりました。

語源を俯瞰すると、“盡 (jìn)” は古代から現代まであまり意味が変わっていないことが分かります。これが日本にも伝わって、日本は日本で独自に漢字を簡単にして「尽くす」の意味で使っているわけです。

ですので、最初の問題は、“盡量 (jìn liàng)” つまり第四声の jìn と読むのが正解だろうと早合点してしまいそうです。意味も「持てるものを全て投入し尽くす」⇒「極力 / as much as possible」でしっくりします。ところがです、現在も繁体字を使っている台湾では、“儘量 (jǐn liàng)” と表記することを知りました。そうだとすると、第三声で読むのが正解ということになります。

しかし、話はそれほど簡単ではないのです。

“儘 (jǐn)” は最上級

では、“儘 (jǐn)” の方はというと、中国語では「できるだけ」、「最も」など最上級を意味します。英語で言うと、”as … as possible” や “the most …” に当たります。ですので、

尽早 (儘) / as early as possible または the earliest possible

となります。

この “儘 (jǐn)” という漢字が生まれた歴史は比較的浅く、同じく百度百科によると、漢朝以降のようです。にんべんが付いているように、人が全身全霊(中国語では “全力以赴 (quán lì yǐ fù)” )をかけて何かに取り組む場合に、この漢字を使うのが適切な使い方であることが分かります。これならば、「“儘量 (jǐn liàng)” で決まり!」として不足はないだろうと思いたいところです。

またまたところがです。台湾の教育部、日本で言うと、文科省に当たる組織が運営している「教育部《重編國語辭典修訂本》」では、何と “儘量 (jǐn liàng)” だけでなく、“盡量 (jìn liàng)” も正しい言葉として、ご丁寧に出所の例文まで添えて収載されているのです。つまり、 “儘量 (jǐn liàng)” と “盡量 (jìn liàng)” のどちらでも OK ということです。

ちなみに、日本語では「有りの儘(ありのまま)」、「儘ならない(ままならない)」という言葉に使われます。中国語とは随分意味が異なります。この使い方は、百度百科の解説から察するに、中国東北地方の方言が源流だろうと思われます。そこでは、日本語の「いつも」に当たる “老是” や “总是” と同じ意味で使うとのことです。

大陸ではどちらで読むか気にしていない

では、漢字の表記としては “尽量” で同じになってしまった中国本土はというと、大陸出身の中国語の先生に聞いたところ、どちらで読むかは意識したことがないそうです。台湾での “儘量 (jǐn liàng)” でも “盡量 (jìn liàng)” でも結局、回り回って同じ意味になったのと理由は同じです。

したがって、最初の問いの正解はどちらでもよいということになります。調査の結果、もやもやが解消したような、しないような、微妙な結末でした。

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