温泉の街、別府市を舞台にした九州大学の研究が、高血圧の改善に温泉が効果的ということを示しました。時間帯も大切で19時以降が望ましいそうです。ただし、風呂上りが就寝時間に近いと、寝つきが悪くなりますので、その点も注意しましょう。泉質はどれがいいのかというのも気になります。
高血圧の改善に温泉が効果的
別府と言えば、温泉で有名です。この別府市住民を対象にした九州大学の研究が、温泉の効能書きに一筆貢献しそうです。別府市民65歳以上の10,428人を対象にして、高血圧と温泉の関係について解き明かしました。10,428 人には4,001 人の高血圧症罹患中もしくは履歴がある方が含まれます(論文1)。
結論から述べると、19時以降に温泉に入る習慣がある人は、高血圧症罹患中もしくは履歴が15%少ないという相関があることが分かりました。高血圧だから無性に温泉に入りたくなるということがなければ(多分ないでしょう)、19時以降に温泉に入る習慣を身につけることで、高血圧になりにくくなるということだと考えていいでしょう。
多変量解析と呼ばれる手法で、温泉に浸かっている時間や週に何回温泉を利用しているのかは関係ないことが示されています。それから温泉に入るのを習慣にして何年になるかも無関係でした。ということは即効性があるということです。問題は「いつ」温泉に入るかだけなのです。それが19時以降です。
論文著者はストレス軽減と入眠を速やかにする効果を上げています。19時以降という必要条件から就寝時刻と近い方が効果的であることが分かります。引用文献に就寝1~3時間前に10分以上湯船に浸かって入浴すると、入眠が速やかになることを示す論文があります(論文2)。そうは言っても、入浴時刻と就寝時刻が近すぎて、1時間未満になるのもよくありません。手足と体幹の体温差があると、寝つきがよいのです。それにはある程度湯冷めする時間が必要なのです。これも論文2の結果です。
「それであれば、何も温泉でなくても、家庭のお風呂で十分なのでは?」という疑問も湧きます。お風呂を入る時間も、普通の人は19時以降に入るのが普通と思います。大原庄助さんでもあるまいし、「朝寝、朝酒、朝湯が大好きで、それで身上つぶした」などという人は、健康も財産ももろとも失ってしまうのは道理です。ですので、温泉と普通のお風呂の違いがなおのこと気になります。
泉質で違いはあるのか
論文では解析データだけ載せて、何も触れていないのですが、泉質の違いで高血圧を抑える効能に差がある可能性があることが分かります。別府界隈にはいろいろな泉質の温泉があります。単純泉・塩化物泉・炭酸水素塩泉・硫酸塩泉・含鉄泉・硫黄泉・炭酸泉の7種類です。
これら7つの泉質を比較しています。この部分に着目すると、炭酸泉が断トツで効果が高いことが分かります。高血圧症になるリスクを1/4近くまで押し下げているのです。ただし、この結果は他の要因を排除する多変量解析を行う前の結果です。とは言え、高血圧症でない人が好んで炭酸泉に入る傾向があるとも考えづらいので、他の泉質よりも炭酸泉がよいことが窺がえます。
ならば、何も温泉旅行をする必要はなく、炭酸泉の素を買ってきて、家庭のお風呂で炭酸泉を楽しめばよいでしょう。こうして見てくると、実は既にやっている人も多い習慣だと分かりますー就寝時刻の1~3時間前に炭酸風呂に浸かればよいということです。
地球温暖化防止のため水道水を炭酸水にしてはどうか
炭酸は血管を拡張する効果がありますので、血行がよくなります。なるほど血圧も下げてくれそうです。健康効果が高いのであれば、いっそのこと、水道水を炭酸水にしてはどうかと考えてしまいます。地球温暖化防止に多少お役に立てるのではないでしょうか。
水道水フロリデーションというものがあります。水道水にフッ素を1 ppmだけ添加するのです。これでむし歯が半分以下になるそうです。実際にやっている国・地域もあります。ただし、1 ppmを超えると、フッ素症と呼ばれる歯の異常が現れ始めることが分かっています。濃度を制御する必要があるのです。
その点、炭酸水にはあまり悪い噂は立っていません。炭酸なので酸性ですが、歯が溶けるということもありません。弱酸性で歯のエナメル質を溶かすほどの酸性ではなく、ガブガブ飲まない限り、唾液で幾分中和もされるためです。目立った欠点がなく、利点が大きいなら、水道水にフッ素よりも炭酸を添加してもらう方がよいかもしれません。そうすれば、毎日炭酸風呂に入ることができて、医療費も抑えることができるのではないでしょうか。
コメント