周辺地域での母国語話者数が多いと、外国語習得に熱心でないという関係があるかどうか調べました。やはりある程度相関がありそうという結果でした。しかし残念ながら、自説の「人口が 5,000 万人を超えると、翻訳文化が成り立つ」は証明できませんでした。
外国語習熟度の指標は EF 英語能力指数を採用
外国語習熟度の指標として、EF 英語能力指数を使わせていただきました。「世界最大の英語能力指数ランキング」だそうです。英語は世界中で学ばれている言語なので、外国語習熟度を英語の習熟度で代表させてよいと考えました。今回用いたのは、地域別 EF 英語能力指数(2021年度版)です。
EF 英語能力指数(2021年度版)には、112の国・地域から220万人が参加したテスト結果が使われています。ですので、統計的には信頼がおける指数と思います。
母国語話者数は周辺地域を含めた話者数とする
母国語話者数は、その国だけで考えると、必ずしも正しい傾向を掴めないと考えたためです。隣の国も自分の国と同じ言葉を話すのであれば、2つの国同士で貿易をする時にはお互い母国語で話せるので、わざわざ外国語を習得してまで話そうとはしないでしょう。
そして、同じ言葉を母国語にする国が同じタイムゾーンに集まっている地域では、その地域全体が1つの経済圏と考える方が自然です。
そのように考えるのがよい例が、母国語をスペイン語とする国々が集まる中南米とアラビア語の中東です。他にドイツ語を母国語とする国が中欧に集まっています。これら地域に属する国々は、それぞれスペイン語、アラビア語、ドイツ語の話者数を当てはめました。
ただし、話者数が多い言語を母国語とする場合にも、周辺国にその言語を使う国がいない場合は、その国の人口をそのまま使いました。
母国語話者数が多いほど、英語能力指数が下がる
その結果、緩やかですが、母国語話者数が多いほど、英語能力指数が下がる傾向があることが分かりました。下のグラフをご覧ください。横軸が周辺地域での自国語話者数の対数で、縦軸が EF 英語能力指数です。トレンドラインをご覧いただけると、緩やかに右肩下がりになっています。
細かく考察を加えると、
- アフリカは今は教育資源が少ないために、英語能力指数がトレンドラインより低いが、EUと同じタイムゾーンに位置するので、恐らく将来的にはトレンドラインに回帰していくはず
- ドイツ語圏は十分母国語人口が多いにも拘らず、EU の中で生きていくために英語習得に熱心なのではないか
- 中東はアラビア語で産油国としてみんな仲良くやっているので、しゃかりきになって英語を学ぶ必要性がないのではないか
- スペイン語ほぼ一色の中南米はトレンドラインのど真ん中
- 日本はトレンドラインをやや下回る程度で標準的
- 中国とインドはトレンドラインをやや上回る程度で標準的
ということになると思います。
人口 5,000 万人前後の境界線は見えず
私は「人口が 5,000 万人を超えると、翻訳文化が成り立つ」という仮説を持っています。「レゲトン・パワーで世界がスペイン語に染まりゆく」の回で紹介した仮説です。それもあり、データ分析してみたのですが、今回はその境界線を見つけることはできませんでした。
EF 英語能力指数を線形なものと考えるから、正しく現象が見えないなのかもしれません。
勉強は 80:20 の法則が当てはまる類のものでしょう。点数が8割を超えてくると、習熟のスピードが格段に落ちると考えています。英語運用能力は指数関数的な何か非線形な特性を持っているとすると、その曲線の立ち上がりが 5,000 万人辺りにくると推測します。
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