和製英語「ライスシャワー」の意味

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いかにも英語の顔をしたライスシャワーですが、英語で “rice shower” とは言いません。”throw/toss rice” と言います。欧米から見ても、米は豊穣の象徴だそうです。しかし、小麦ではなく米なのでしょうか?米の耕作面積当たりで収穫できるカロリーが小麦の 1.5 倍もあることに関係していそうです。

ライスシャワーは和製英語

昔、ライスシャワーという競走馬がいました。菊花賞や天皇賞(春)という長距離G1を取った馬です。結婚式で参列者が新郎新婦に生の米粒を頭から投げかける風習にあやかって命名したようです。日本の風習古来からある風習でないことは、外来語を思わせるカタカナ語であることから分かります。

海外の風習が取り入れられたものです。英語では、”throw/toss rice (at weddings)” と言います。ハリウッド映画で結婚式の最後に参列者が両側から米粒を頭から投げかける場面が出てくると思います。YouTube でも、ショベルを使って新郎新婦に米粒をぶっかける動画が上がっています。これはちょっとやり過ぎだと思います。

ご存じのように米粒は水を吸うと膨れ上がるので、鳥がついばんで満腹になると、危険ということで禁止して、代わりに鳥のエサにしている州もあるそうです。

ハトが米粒をついばむと、水気を擦って膨れて大変

ライスシャワーを行う国々

ライスシャワーは、それぞれの国々で独自の起源を持っているようです。欧州での起源は古代ローマに遡るそうで、初めは主食の小麦を使っていたようです。それがどうして米に変わったのでしょうか?

欧米から見ても、米は豊穣の象徴だそうです。なにせ、米の耕作面積当たりで収穫できるカロリーは小麦の 1.5 倍もあるのです。「実るほど頭が下がる稲穂かな」という詠み人知らずの俳句が示すように、稲穂に鈴なりに実るため、米は子だくさんを連想するというところも、欧州で受けが良い理由でしょう。

スペインではパエリア (paella) が有名なように稲作しています。ブラジルでも米食は普通で、代表的なのが 煮豆とご飯 (feijão com arroz) です。ブラジルに出張していた時、度々口にしました(あまり口に合いませんでしたが…)。スペインはまだ行ったことがありませんが、ライスシャワーを行う風習があります。ブラジルもそうです。スペイン語では “tirar arroz (en la boda)” で、ブラジル・ポルトガル語では “jogar arroz (no casamento)” です。英語と同じで、やはり “ducharse arroz” や “tomar arroz” とは言いません。

しかし、稲作と言えば、アジアでしょう。中国もインドも古くからライスシャワーの風習があるようです。アジアで盛んに稲作を行っている国々では、稲穂を見て豊穣・子宝を連想して、自然にそのような風習が生まれたのだろうと考えられます。

中国でも都市部では廃れていて、インドで今も行われているライスシャワーの風習を取り上げたブログがありました。中国語だと “(在婚礼里) 扔米饭” でしょう。

稲作が可能なことが世界人口の半分を一極集中させた

稲作と言えばアジアです。2023年時点の世界の生産量ランキング1位から3位は、中国、インド、インドネシアの順です。お分かりのように、国別人口ランキングでも似たようなものです。1位と2位が中国とインドで近々順位が入れ替わると言われています。インドネシアは3位の米国に続く4位です。

他にもインドから分離独立したパキスタンとバングラデシュも、世界の米生産量ランキングの9位と4位で、国別人口ランキングの方は5位と8位です。

ミャンマーの Mong Khet という町を中心にして、中国、インド、パキスタン、バングラデシュ、インドネシアとインドシナ半島を取り囲むように円を描くと、世界の人口の半分が収まるそうです。”Valeriepieris circle” と呼ばれています。

Valeriepieris circleの凡その位置

インドネシアとインドシナ半島は熱帯気候なので、そもそも降雨量が多いですし、中国、インド、パキスタン、バングラデシュはヒマラヤ山脈を源とする黄河、長江、インダス川、ガンジス川を持っていますので、灌がいが容易という土地柄です。まさに稲の水耕栽培に打ってつけです。

歴史の振り子が戻ってくるのか

英国で産業革命が起こり、ここ 300 年ぐらいの間は、欧米の時代でした。しかし、モノは貿易で、情報はインターネットで世界中を行き交うようになると、元々上記のような有利な条件が揃っている “Valeriepieris circle” が歴史の主人公に返り咲く可能性は十分にあるだろうと思います。だからこそ、かなりインドネシアが気になってきています。

人類の長い歴史の中で、300 年というとほんの一瞬の出来事です。ライスシャワーが降り注ぐ先が変わる瞬間を、今我々は目撃しようとしているのかもしれません。そんなことを考えながら、グルテンフリーにして以来、毎日ご飯を頬張っています。

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