英語、ブラジル・ポルトガル語、スペイン語どれも冠詞を持っています。これら3言語はそれぞれ冠詞に対するスタンスが違います。ブラジル・ポルトガル語とスペイン語は性別がありますが、英語にはありません。兄弟言語のブラジル・ポルトガル語とスペイン語との間でも微妙な違いがあります。
各国語の冠詞まとめ
では早速、各国語の冠詞をまとめた表をご覧ください。それぞれの言語特徴がありますが、際立って簡素なのが英語です。日本語を母語とする私たちにとって、初めて学ぶ外国語が英語であることは幸運です。初めの第一歩で「性別って何?」、「複数形って何?」で混乱しなくて済むわけですから。
米国のDover Books社が英語を母語とする人向けの文法書シリーズ “Essential xxxx Grammar” シリーズを出版しています。
ポルトガル語でもスペイン語でも名詞の章では、先ず名詞に性別があるという説明から始めます。次に誰もが知っている “the” に相当する定冠詞の話が来ます。そして定冠詞に複数形があるんです、と続きます。それに続けて定冠詞に複数形があるということは、名詞にも英語と同じで複数形があります、と説明を加えます。知らないこと⇒知っていること⇒知らないこと⇒…という順でサンドイッチにして説明を展開します。不定詞の説明も基本的には、定冠詞と同じでサンドイッチ説明法が有効です。
しかし、日本語を母語とする私たちがもしポルトガル語もしくはスペイン語を第1外国語として小学校の高学年から学び始めたと想像してみてください。おそらく、最初の名詞の章でいきなり躓く子どもの数は、英語の比ではないでしょう。
日本の出版社のポルトガル語もしくはスペイン語の文法学習書は、名詞の章は名詞の性別説明から入って行くところは、英語を母国語とする人向けの文法学習書と同じです。ところがその次は単数形と複数形の説明が来ます。日本語を母語と人向けの英語文法学習書に習ってのことでしょう。そして追い打ちをかけるように、止めに不定冠詞と定冠詞の話が並びます。習う順をどの順で並べたとしても、知らないことの次に来るのは知らないことになるので、仕方がありません。
ポルトガル語は固有名詞にも定冠詞
ポルトガル語の定冠詞は、既に話題に出た特定のものにつけます。ここまでは、英語と同じで安心できます。
しかしそれだけに止まらず、人の名前にもつけます。親しい間柄の個人名の前に “o Diego” のようにつけます。どの Diego なのか特定する目的です。Diego などという名前はありふれていますので、こういう使い方は理に適っていると思います。
英語でも “the Smith” と定冠詞をつけることがありますが、これは Smith 家を意味しますが、これと似た使い方です。
この他にも、国名にもつけます。国名につける国とつけない国が混在しています。決まった規則性がなく、ただ丸暗記しなければなりません。日本は男性名詞なので、”o Japão” です。ドイツは女性名詞なので、”a Alemanha” です。そもそもなぜ日本は男性でドイツは女性なのかさえ不明です。
英語と違って総称にもつけます。”o japones” で日本人一般を指します。
不定詞は不定詞で複数形があります。”uns/umas” は英語でいうと “some” に当たります。不特定多数のものを表現する時に使います。
スペイン語の中性定冠詞 “lo”
スペイン語の定冠詞と不定冠詞の使い方はポルトガル語とほぼ同じです。形も非常に似通っています。しかし、スペイン語には違う点もあります。それが中性定冠詞の “lo” です。
“lo” は直接目的語になる代名詞としての使われ方が一般的ですが、中性定冠詞としてはたらく時は、名詞の前ではなく、形容詞や関係代名詞 “que” の前につきます。英語との対比でいうと、英語の関係代名詞 “what”の使い方です。
(西) Lo importante es aprender uns idiomas.
(英) What is important is to learn languages.
や
(西) Lo que recuerdo son unas pocas palabras.
(英) What I remember is a few words.
という使い方です。
英語の土台を作っておいて次へ
語学も同じですが、基礎を固めてから上に積み重ねていく方がより高く積み上げていくことができるでしょう。そして、臨界期を過ぎてから外国語を学ぶ場合は文法の理解は外せません。文法を学ぶからにはとっつきやすさが鍵です。そうなると、簡素さから考えて、英語から学び始めるのは理に適っています。そうすれば、英語との対比で学ぶことが容易にでしょう。また英語で書かれた語学書の方がときに優れている場合もあります。
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