Corelle というブランドの食器をご存じでしょうか?嫁と同居を始めた時に持ち込んで20年ほど経ちますが、フローリングの床に落とそうが、食器洗浄機に入れようが、電子レンジに入れようが、これまでに1枚も割れていません。
スマートフォンのボディーで有名なCorning社
毎日お世話になっているスマートフォン。そのボディーには大抵、強化ガラスが使われています。スマートフォンは電波を送受信しなければならないので、ボディーに電波を遮蔽してしまう金属は使いづらく、かと言ってポロっと手から滑り落ちることもままあるので、丈夫でなければなりません。そのため、強化ガラスが使われます。
その代表格が Corning社の “Gorilla Glass” です。こちらは化学強化ガラスと呼ばれるもので、化学処理してガラス中に含まれるナトリウムをカリウムに置き換えることでパンパンに圧縮応力をかけます。ナトリウムは小さく、カリウムはそれよりは大きな原子です。
満員電車に乗っていて、小学生の男の子が降りて、ほっとしたのも束の間、代わりにお相撲さんが乗り込んで来たようなものです。ただでさえ、おしくらまんじゅう状態だったのが、全く身動きできないギューギュー状態になってしまう光景を想像するとよいでしょう。少々外から力が加わっても、動きようがないので丈夫になるのです。
Corelle は Vitrelle glass
その Corning 社が Corelle の生みの親なのです。Corelle の方は Gorilla glass ではなく、”Vitrelle glass” という技術を使っています。どら焼きのような3層構造になっています。餡子に当たる中間層は乳白色のガラスでできていて、原子同士がそれぞれ引っ張り合う力がはたらいています。
一方、どら焼きのカステラに当たる表裏層は透明なガラスができていて、原子同士が押し合う反発力はたらいています。アーチ橋を想像すればよいでしょうか。アーチ橋を作る1つ1つのバームクーヘン型のブロックは重力で地面の方に引っ張られます。
そうすると、バームクーヘン型のブロック同士はおしくらまんじゅうしますよね。確かに頑丈そうです。既に有効期限切れですが、この3層貼り合わせ構造には特許があります(文献1)。
なるほど、お皿の平らな部分が強そうなのは分かった。では、お皿の縁はどうなのかという疑問が湧きます。3層に貼り合わせたガラスを断裁した切り口です。それに対してもちゃんと手当をしています。先ほど説明したように、中間層は引っ張り合う力がはたらいていて、外の2層では押し合う力がはいています。
ですので、ガラスが軟らかくなる温度まで熱すると、自然と中間層の内側方向に外側の2層が引き込まれることになります。そして、外側の2層が同じ素材なら溶けて一体になって中間層を包み込むという寸法です。実際には、そう簡単ではなく、外側2層と同じガラス蒸発させた炉の中で、お皿の縁を加熱しながらガラスを蒸着させることが別の特許に書かれていました(文献2)。
我が家に導入して大成功
Corelleを使い始めて20年ほど経ちます。他にも買ったり戴きもの食器があります。割ってしまったものも多いです。お皿同士をぶつけてしまう両方割ってしまうこともあります。
しかしそんな中、Corelleのお皿は、フローリングの床に落とそうが、食器洗浄機に入れようが、電子レンジに入れようが、これまでに1枚も割れていません。お皿同士をぶつけてしまっても、Corelleの方は不死身です。感謝感激雨霰です。
値段もそれほど高くないので、プチミニマリストからのお奨めの一品であることに間違いありません。
[参考文献]
- US-A-003673049, “GLASS LAMINATED BODIES COMPRISING A TENSILELY STRESSED CORE AND A COMPRESSIVELY STRESSED SURFACE LAYER FUSED THERETETO”, Oct. 7, 1970
- US-A-003592620, “METHOD OF HEAT SEALING THE OUTER LAYERS OF A GLASS LAMINATE”, Aug. 21, 1968
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