住宅ローンは FIRE の元手を得るには有効か

習慣

経済的自立と早期リタイア、いわゆる FIRE (Financial Independence, Retire Early) を考える上で蓄財のスピードを上げるためには、長期投資を中断させない必要があります。空前の低金利が続く日本では、住宅ローンを上手く使うのも手かと思います。

住宅ローンは金利が安い

住宅ローンは大手銀行が個人に貸し付けてくれる唯一の借金ではないでしょうか。現在は日銀が政策的に金利を低く抑えていることもあり、ただ同然でお金が大手銀行に溢れ返っている状況です。日本の大手企業で今イケイケドンドンで借金をしてくれるところは少ないので、ある程度まとまった金額を貸せるのは不動産売買ぐらいです。

我が家を確保(住み替え)して、老後に備えつつ、貯えを切り崩さないためには、銀行からまだ貸し出してもらえる年代で融資を受けるという方法は一考の余地があると思います。

25年の固定金利でも、各銀行とも 1.xx % という数字が並びます。大企業への貸付相場である長・短期プライムレートとほぼ同じ金利水準です(文献1)。この金利で 25 年間も年収の何倍もの金額を一個人に貸し付けてくれるわけですから、夢物語に近い状態です。

借金のための借金なら、論外ですが、元手資金をある程度持っていて、経済状況が怪しくなってきたら、すぐにいつでも前倒し返済ができる状態にあるならば、他人のふんどしで相撲を取るには持って来いの投資資金を得ることができます。金利を支払っても投資利回りがそれより高ければ、利益を生み出す金の卵を生み出すニワトリになります。実際、これこそ企業や自営業者がやっていることです。

住宅ローンは減税があるので、実質金利はさらに低く

住宅ローンは金利が安い上に、住宅ローン減税を受けられます。年末のローン残高の 0.7 % を所得税から最大 13 年間も控除し続けられます。つまり、1.xx % の金利のうち、0.7 % 分をまるまる支払った所得税から還付を受けて相殺できれば、住宅ローンの実質金利は 0.xx % に過ぎなくなります。普通にインデックスファンドを買っていれば、楽に利ザヤが稼げるはずです。

ただし、いろいろ物件に対する条件はあります。例えば、新築物件でなければ、数千万円ものローンに対して減税が受けられません。中古物件の場合はせいぜい 1 千万円までです。それでも大きいですが。また、新築物件でも省エネ基準満たしているかどうかで、減税を受けられる上限ローン金額が変わってきます。当然高い省エネ基準を満たしている方が、減税を受けられる上限ローン金額も高くなります(文献2)。

団信で自分に何かあったら、家族に借金は残らない

多額の借金をして FIRE を目指して投資をしていた矢先、不慮の事故で落命してしまったら、家族に迷惑がかかるかもしれないと尻込みしてしまうかもしれませんが、その点も大丈夫です。団体信用生命保険(団信)制度というものがあり、この保険がついていれば、たとえ自分に何かあっても、保険が借金を全額返済してくれます(文献3)。

もちろん、そのためには保険料を支払う必要があります。通常は金利に上乗せして保険料を支払います。いろいろ三大疾病向けなどと銘打った特約が用意されていますが、日頃から健康に気遣っている人であれば、素保険で十分でしょう。

生命保険ですが、残念ながら生命保険料控除の対象にはなりません。しかし、金利優遇を受けられるので、それで我慢しましょう。「これでもか」というぐらいに、住宅ローンは優遇されています。これだけ調達コストが低く、しかもまとまった資金を一介の個人が調達できる制度というのは他にないでしょう。

物件選びはリセールバリューに注意

物件選びは注意が必要です。特に新築物件は、買ったその瞬間に周辺地域の中古価格相場にまで落ちると言われていますので、中古価格相場を見て、リセールバリューがある物件を選ぶようにすべきでしょう。

新築物件に手を出して、大博打を打つのではなく、周辺地域の中古価格相場を見ながら、中古物件を物色するのが無難かもしれません。それでも、減税の恩恵を最大限享受できる1千万円までの住宅ローンを組んで、資産運用の元手資金とすることができます。

こればかりは地域によって事情がことなりますので、街の不動産屋さんのショーウィンドウをこまめにチェックするのがよいでしょう。Web の情報は更新が遅いので、参考になりません。

資金運用のベンチマークはGPIF

GPIFとは年金積立金管理運用独立行政法人のことで、その名の通り、我々の年金を資金運用して運用益で年金を賄ってくれている機関です。それだけに手堅く負けない資金運用に徹しています。それでも、2001 年度から運用を始めて 2022 年度までの間の年率平均利回りは +3.59 % です。

典型的な四分法で、外国株式、国内株式、外国債券、国内債券を4分の1ずつ保有しています。これと似たバランス型インデックスファンドを買えば、GPIF と同等程度の利回りを目指すことができそうです。そうすれば、

利ザヤ=ファンド利回りー(住宅ローン金利団信保険料ー住宅ローン減税)

という式で導き出せる利ザヤを稼ぐことができるはずです。

稼いだ利ザヤは、これと決めたファンドの買い増しにつぎ込みましょう。そして、複利で運用すれば、さらに FIRE への道が近づくでしょう。

以上、お上が用意してくれた制度だけをフルに活用した FIRE への道しるべでした。

[参考資料]

  1. 日本銀行:長・短期プライムレート(主要行)の推移 2001年以降
  2. 国土交通省:住宅ローン減税
  3. 全国信用保証協会連合会:団体信用生命保険
  4. 年金積立金管理運用独立行政法人:管理・運用状況

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