低予算・軽装備で健康維持に必要な運動量を確保できれば、懐にも優しいです。ゴム紐やハンドグリップ程度なら、持ち歩いて細切れ時間で運動量を稼ぐこともできます。自重を使えば、そのような小道具さえ不要です。
昔はスポーツクラブに通っていました
昔はスポーツクラブに通ったこともありました。駅前のスポーツクラブなら習慣にしやすいだろうという動機です。ベンチプレスやダンベルその他マシーンが使えます。プールもあります。最近はやりのサウナも使えます。しかし、それらを使うには先立つものが必要です。
段々社会人として知恵がついてきたある時、それらの設備を使うためだけに高いお金を払う(=スポーツクラブの固定資産の減価償却費を支払う)のもバカらしくなりました。確かに筋肉は増えますが、身銭は消えていきます。筋肉が増え、身銭も貯まっていく二兎を追える方法はないのかと考えたのです。
- マシーン体操⇒鉄亜鈴を買って、自宅で体操
- プールで水泳⇒公共施設のプールを利用
- サウナ⇒ちょっとチープですが、公共施設のプールに付属してある採暖室
このような代用でもある程度用をなしました。
月日は流れて、引っ越しする必要が生じました。引っ越しの際、鉄亜鈴が非常に邪魔になりました。当時、1つ 10kg のものすごく重い鉄亜鈴を2つ持っていました。運んでもらうのも大変ですし、引っ越し作業員の人が落としてフローリングを傷つけたら大変です。扱いに困って、粗大ゴミとして回収してもらうことにしました。
鉄亜鈴の代わりになるものはないかと考えました。それが自重、それからゴム紐とハンドグリップです。ゴム紐とハンドグリップはともに数千円の投資で済む品物です。
基本は自重を利用
何といって、基本は自重でしょう。腕立て伏せ、腹筋、背筋、スクワットなど基本中の基本は全て自重を使う体操です。
物足らなくなったら、ベッドに足を乗せて腕立て伏せをすれば、負荷を増やせます。腹筋と背筋は家にある何か重いものを両手で抱えれば、負荷を増やすことができます。中身の入ったペットボトルなら、家に1つや2つ転がっているのではないでしょうか。
同じく、スクワットも自宅にある何か重いものを両手で抱えれば、負荷を増やせます。小さなお子さんがいれば、肩車をしてスクワットすると喜びます。とは言え、決して中学生以上を肩車しようとは思わないでください。体を壊したり、家庭不和の原因になるでしょう。
逆立ち腕立て伏せというのもあります。逆立ちしながら、腕を折り曲げて伸ばしてを繰り返します。全体重が腕にかかるので、相当負荷が高い体操です。必ずダイエットをして体重を落とした後に行ってください。高血圧、高血糖の人も要注意でしょう。頭に血が上りますので、脳卒中になってあえなくご臨終ということにならないとも限りません。生活習慣病のリスクありの人には向かない体操です。
以上、自重を使った体操を紹介しました。誰でもただでいつでもどこでも手に入る重力を使わない手はありません。できるだけ座らない生活を心掛けるだけでも、重力の恩恵を授かった健康でいられるはずです。
ゴム紐体操
ゴム紐は最初は戸惑いました。鉄亜鈴と違って、持った瞬間から負荷がかかるわけではなく、引っ張って初めて負荷がかかり始めます。ですので、鉄亜鈴と同じような負荷をかけることはできません。そこは割り切りが必要です。
ただ、工夫の余地はあります。慣れてきて物足らなくなったら、負荷を増やすために、ゴム紐を二つ折りにして使います。ゴム紐の長さ次第ですが、何だったら三つ折りや四つ折りにもできます。この融通が効くところが、ゴム紐のよいところです。
腕、胸、脚の筋肉強化に向いています。腕を鍛える時は、足でゴム紐を踏みつけて腕で引っ張り上げる動作をします。胸を鍛える時は、両手にゴム紐を渡して、両腕を開いたり閉じたりします。脚を鍛える時は、首からゴム紐をぶら下げて余長を両足で踏みつけてスクワットします。
しかも、鉄亜鈴とは異なり、ゴム紐は非常に軽いものです。旅のお供にスーツケースの隅に忍ばせて持っていくことができます。スポーツジムがついていないような安宿に泊まっても、いつでもどこでも手軽に筋トレができるのです。
同じく旅の出先では、洗濯ロープに早変わりです。あまり重いものを掛けると伸びてしまいますが、下着やシャツ程度であれば大丈夫です。
緊急時にも役立つかもしれません。こういう使い方を実際にやったわけではありませんが、万が一ホテル火災に遭ったとしても、避難用のロープ代わりにすることだって考えられます。
このように、ゴム紐一つでいろいろな使い道があるので、体操以外の用途も考案すれば、頭の体操にもなります。試してみてはいかがでしょうか。
ハンドグリップで握力強化
ハンドグリップはやや特殊な器具です。握力を強化する目的に特化したものです。洗濯バサミのように、2つある取っ手を1つの手で握り締めると、頭についているバネが反発して手に負荷がかかる仕組みです。握力を鍛える体操は非常に単純なものです。手を開いたり閉じたりを繰り返せばよいだけです。
実は、この握力、認知症と相関があるそうです。握力が弱いから認知症になるのか、認知症になったら、握力が弱くなるのか、因果関係の方向は不明ですが、気になるところです。
JAMA に掲載された論文によると、UK Biobank に登録された 19 万人余りの参加者の握力と流動性知能 (fluid intelligence) と呼ばれる新しいものを学ぶ能力と前方視的記憶 (prospective memory ) と呼ばれる未来予測に関する記憶のスコアの関係を調べました。その結果、健常者に比べて 5 kg 握力が低くなると、認知力に有意な差が見られたです。さらに、脳の MRI 画像との相関を見たところ、大脳白質に病変があることが確認できたそうです(論文)。
大脳白質というと、脳神経細胞の間をつなぐ経路の部分です。そこに病変があるということは、脳神経細胞間のつながりが悪くなっているということに外なりません。その結果、流動性知能 (fluid intelligence) と前方視的記憶 (prospective memory ) に問題が生じていることは容易に想像がつきます。
握力を鍛えれば、認知力を維持することができるのかはストレートにつながるようには思えませんが、道具を使う上で、非常に重要な役割をするのが手であることは事実です。食事をしたり、字を書いたり、掃除をしたり、これら全て手作業です。握力が高ければ、やれることが増えます。
例えば、瓶の蓋を開ける場面を想像してみてください。握力が高い人の方が瓶の蓋を簡単に開けられます。箸を使うにしても、握力が高いと、食べ物を切り分けるのに有利です。経験できることが多くなり、いろいろな場面での融通が利きやすいでしょう。
そういうことが、脳神経細胞の間をつなぐ経路である大脳白質を健全に保つことにつながっているのかも知れません。脳のメンテナンスの際に、優先的にリソースを投入してもらって、若返り工事の対象になっている可能性はあります。
ですので、強ち握力を鍛えることが、脳を健全に保つことと関係がないわけではないように思えてきます。そういうこともあるので、握力を鍛えておいて損はないだろうと思います。
低予算・軽装備でも心も体も健康に
以上見てきましたように、お金をかけてスポーツクラブに通わなくても、やり方次第で心も体も健康を保つことはできます。
低予算・軽装備で健康維持に必要な運動量を確保できれば、懐にも優しいです。ゴム紐やハンドグリップ程度なら、持ち歩いて細切れ時間で運動量を稼ぐこともできます。
自重を使えば、そのような小道具さえ不要です。エレベータを使わず、階段を使えばよいですし、物足りなくなれば、一段飛ばしで階段を昇ればいいわけです。
私は極力座らないようにして、立って仕事をしています。これも自重を使った鍛錬です。立っている間、第2の心臓とも称されるふくらはぎを鍛えるために、時々踵の上げ下げをしています。脚の付け根に近いところにある筋肉で、血液を心臓まで送り返すために働く役割を担っていますので、大事な筋肉なのです。
心身一如という言葉あります。運動こそが脳(=心)の健康を保つ上で重要だという話はよく聞きます。座ってばかりいないで、動くことを習慣にしましょう。
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