中国でも少子高齢化が深刻です

カメは万年 語学

日本は少子高齢化で世界の先頭を走っています。どこの国も経済が発展してくると同じ傾向です。しかし、中国は世界の5分の1の人口を占めます。その少子高齢化が世界に与える影響は深刻さの度合いが半端ではありません。今回は日本は少子高齢化問題に詳しい中国の研究者が自国の少子高齢化対策を提言した記事を紹介します。HSKにも出て来そうな話題です。

生活水準が向上すると、少子高齢化する

今回紹介する記事は、日本の人口動態を論じている別の記事を下敷きにしていますが、いずれの記事も、背景となる人口動態の関りを詳しくは説明していないので、その辺を説明します。

ここ最近の認知症の未来予測とボケ防止あれこれ(その1)」の回で若干紹介しました。“Factfulness” が指摘しているように、生活水準が向上すると、国/地域、文化、宗教に拘らず、例外なく国は少子高齢化します。なぜでしょうか?

生活水準が低い間は、農村部の家庭では、子どもは生産財です。牛や馬と同じで、自分の畑や田んぼを耕してくれたり、作物を収穫してくれるのを手伝ってくれることを期待して子どもを増やします。

一方、ある程度生活水準が高くなってくると、子どもは消費財に変わります。いい服を着せたり、いい学校に通わせたりといろいろ手をかけ、お金をかける対象になります。

こうして生産財から消費財に変わった子どもはお金がかかりますので、家計収入が増えないと、消費を抑えようとすることになります。子どもという「未来のスター」を手塩にかけて育てようとすると、収入と支出のバランスを取るには、手塩にかけてお金もかける対象の数を絞るしかよい方法が見つからないことに気付きます。ですので、生活水準が向上すると、少子化するのです。

世間体もありますから、隣の誰それと比較して、より「よい子」を育てようと競争は激化していきます。家庭間の競争が極まるとどうでしょう。最終手段としては、一粒種にすべてを賭けて1点勝負するという行動をとることになります。こうして、人口が自然減しない最低ラインの出生率 2.0 を割り込むことになります。

出生率が 2.0 を下回るということは、若い世代が老いた世代を受け継いでいくことができませんから、高齢化も進みます。

ある生活水準を境に、子どもが「生産財」から「消費財」に変わるのは、どこの社会でも起こる普遍的な現象なのです。ですので、生活水準が向上すると、少子高齢化が例外なく起こるのです。

集まる方が得だから、集まって都市へ人口が集中する

その過程で、地方から都会への移住も起こります。都市への人口集中です。就ける職が少なく、モノを売るにしても何キロも歩いて回るより、既に人が集まっている場所の方が便利です。人数が多いと、分業することで効率化することができます。

スポーツでたとえると、サッカーや野球などチームの人数が多いとポジション=役割が分かれます。大きな大会を開いた方がより盛り上がるので、チームの数を増やしたくなります。人を集めたくなりますし、役割に欠員も生じるでしょう。都市は職を見つけるのに都合がよいのです。

人数が多いと、モノを売るのも効率的です。魚釣りにたとえると、一本釣りするより、定置網を置いて一網打尽にすることもできます。

ネット社会になっても、コロナ禍があろうとも、多少の変化があるにせよ、おそらくこの流れは大きくは変わらないでしょう。ですので、都市化が進みます。これは万有引力ぐらい強力です。

子育て競争から離脱する方が楽なので、未婚化が進む

そして、都市化が高じると、ますます周りが競争相手ばかりになりますので、さらにいっそう「子育て競争」が激化します。しかし、いつかは限界が訪れます。都市化は同時に多様な価値観も生み出しますので、みんなが同じゲームに狂奔するわけでもなくなります。

そして、子どもをもうけない夫婦が現れます。そもそも「未来のスター」に投資するより、「今の自分」に投資した方が割にいいと考える人も出てくるでしょう。そういう人は、結婚するにしても自分と同等以上のスペックを相手に求めることになるでしょう。そうするとますますお似合いの相手を探すのが難しくなります。未婚化が進むわけです。

格差が拡大して階層も固定化しやすい

『「学力」の経済学』(中室牧子 著)という本を読んだことがあります。身も蓋もありませんが、今度は子どもを「投資対象」見なしています。世間の親がそれを意識してやっているかはさておき、子どもに早くから教育費をかけて「投資」すればするほど、子どもが将来成功する可能性が高くなることが統計的に分かっています。つまり「投資」に対する「リターン」が大きいというのです。

ただし上の結果は、アメリカ社会でのデータです。この結果がそのまま日本に当てはまるのかは、日本での同じような調査が必要でしょう。

こうしてお金を持っている家の子孫はやはりお金持ちになりやすいということになります。階層は固定化しやすいのです。これもお金の万有引力でしょうか。

『21世紀の資本論』(トマ・ピケティ著)が違うアプローチで、やはり階層は固定化しやすいことを示しています。本書は分厚いので、簡単に理解したい場合は、その名もズバリの “Capital in the 21st century” という著者のホームページがありますので、そちらの英文の資料をご覧ください。

簡単に言うと、投資リターンは常に国の GDP を上回るので、収入を対象にした所得税による再分配政策はあまりうまくいかずに、投資できるお金持ちはますます富める、といったところでしょうか。「常に」と言いましたが、例外もあります。世界大戦のような大惨事が起きれば、みんなが等しく貧しくなります。でも、絶対に起こって欲しくないですね。

日中で進行する少子高齢化、都市化、未婚化、格差拡大

2012年上梓の “MAGACHANGE” (The Economist) という書籍も “Factfulness” と同じ論調でした。人口動態を軸に未来予想をすると、普遍的にどの国でも少子高齢化、都市化が進むという内容です。

今回取り上げた記事だけでなく、みなさんいうことは同じで、未婚化と格差拡大も含めて、女性の社会進出を後押ししないと、どうもならないでしょう、ということです。そのためには、安心して利用できて、育児を支援し、教育費を助成する仕組みが必要です。それから、健康寿命を延ばして高齢者の方々に働き続けてもらうことも大事です。女性と高齢者を働き手にして、いかにして労働人口比率を増やしていくかが重要というのが結論でした。

そのサイトでは、マルチリンガルを目指して学び続けると、高齢になっても働き続けられるのだという観点で、有用な情報を発信し続けたいと思います。

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