中国「学習塾禁止令」2か月後に何が起こっているか

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「学習塾禁止令」ともいえる政府のご意見が2021年7月発表されて、事態は急変が始まりました。小学生の低学年には宿題は出すななど、学校教育に意見しつつ、「学習塾は止めましょう」と唱えています。学習塾産業は必死に業転に賭けていますが、そこで働いていた人たちは失職の憂き目にあって、転職もままならず苦境にいるそうです。

まさに梯子を外された学習塾業界

36Kr.com記事を見ると、起こるべきして起こっているという感じです。隋から清朝の時代まで続いた科挙のお国柄もあると思いますが、ひと頃の日本の受験戦争以上に「高考」(中国の大学入試)が加熱していたのは事実でしょう。何せ最近まで「计划生育」(一人っ子政策)やっていたこともあり、一粒種に一点投資せざるを得なかったのです。

それが「学習塾禁止令」ともいえる政府のご意見が2021年7月発表されて、事態は急変しました。小学生の低学年には宿題は出すななど学校教育に意見しつつ、「学習塾は止めましょう」と唱えています。

24.坚决压减学科类校外培训。

中共中央办公厅 国务院办公厅印发

日本で言うと文科省に当たる教育部のサイトに《关于进一步减轻义务教育阶段学生作业负担和校外培训负担的意见》の中国語原文が掲載されているので、ご興味があればリンクからご覧ください。

中国の学習塾業界にとって寝耳に水の出来事で、まさに完全に梯子を外された形です。

一人っ子政策のつけと決めつけるわけにもいかない

長年の一人っ子政策によって、中国は日本以上のスピードで急速に少子高齢化社会に向かっています。それを食い止めるための目玉となる施策です。家庭の教育支出を抑制すれば、二人目、三人目を持とうという経済的余力が生まれるだろうと期待してのことです。

世界的なベストセラーになっている『ファクトフルネス』の中で書かれているように、国・人種・民族・宗教を問わず、

家庭が経済的に豊かなる⇒衛生環境がよくなる⇒子供の出生後死亡率が下がる⇒子だくさんである必要がなくなる⇒少ない数の子供に未来投資として教育を施す

という流れがあります。中国も例外ではありません。

学習塾は業転

学習塾はたまったものではありません。9月現在で当然のことながら生き残りをかけてこの2か月間で業転に動き出しました。「琴棋书画」(音楽、囲碁将棋、書道、絵画)の嗜みに代表される子供向け情操教育やSTEAM(Science, Technology, EnglishもしくはEngineering, Art, Mathmatics)と大人向けの職業訓練です。

既に同業者が溢れ返っていますが、それでもまだまだ成長している分野のようです。子供向け情操教育市場は2021年から2027年までの間に年率13.1%の成長が見込まれています。業転先としてはそれほど悪くない市場でしょう。

数年前に北京に仕事でよく出張していた時に、街中の雑居ビルによく幼児教育教室が入っているのを見かけました。中国でも幼稚園や小学校の「お受験」があるのだろうかと不思議に思ったことを記憶しています。「お受験」 があるのかどうかは知りませんが、英語を教えてくれるインターナショナルスクールのような幼稚園はありました。

学習塾に働いていた人には氷河期

学習塾を運営する企業は業転してこの苦境を切り抜けようと必死に努力している一方で、そこに勤めていた人たちは浮かばれないようです。おそらく「学習塾禁止令」さえなければ、前途洋々とした引手あまたの職業だったに違いありません。

しかしこの事態になると、転職市場の求人ミスマッチが目立つばかりだそうです。特に、塾講師や営業職はつぶしが効かず、どうしようもない状況のようで転職もままならず苦境にいるそうです。そのため、仕方がなく友達と起業して何とか生計を立てよう人も出てきているとのことです。不動産業界と並び、中国の失業率を押し上げている要因になっています。

2023年時点でも、闇で家庭教師をやっている人や「琴棋书画」を装ってその実、勉強を教える「塾」が摘発されていることが報道されています。始まった当初はまだ海外から「琴棋书画」を装うネット「塾」の広告がありました。しかし、サイバーセキュリティ法の影響と思われますが、海外への顧客データの持ち出しができず、海外からネットを介して中国国内にサービス展開することもできなくなったので、見かけなくなりました。

まだ少子高齢化の解決策は見つからず

中国の「学習塾禁止令」が少子高齢化の歯止めに効果をもたらすかどうかは一世代ぐらい経ないと分からないでしょう。

日本はワークライフバランスの改善に取り組んだり、不妊治療に力を入れていますが、今のところ効果が目に見える形で出ていないように見受けられます。他の国もさしたる成果を上げているようには思えません。アメリカは先進国で唯一将来も人口が増え続けると予想されています。しかし、中南米からの移民が子だくさんだからという他力本願なところがあります。

このサイトのテーマである健康でボケずに長生きすることが、差し当たり急に社会がおかしくならないためのつなぎになることを念じます。

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