両手を一緒に使う動作で分かる老化の兆し

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ドイツのマックス・プランク研究所の研究によると、ヒトは両手を鏡写しのように動かすのは老いも若きも簡単な一方、片手と同じ向きにもう片方の手も動かす動きは年を重ねるほど難しくなるそうです。例えば、鏡文字を書くのは簡単でも、同じ文字を両手で同時に書くのは難しいようです。

ヒトは両手を鏡写しのように動かすのは得意らしい

年を取っていくと、動きが遅くなるとか力がなくなってくるということが起こるのはうなずけます。街中で階段をゆっくりとした歩みで上っていく高齢者の方を颯爽と若者が抜き去っていく光景を普通に目にします。体の衰えですが、脳の衰えは意外なところで先に現れてくるようです。

ドイツのマックス・プランク研究所というところの研究成果で分かったことで、ヒトは両手を鏡写しのように動かすのは老いも若きもそれほど差はないのですが、片手がやっているのと同じ向きにもう片方の手を動かすのは老いていくほど難しくなるそうです。例えば、両手にペンを持ってそれぞれの手で文字を書くとします。利き手で書く文字の鏡文字を利き手でない方の手で同時に書くのはそれほど難しくないようですが、両手とも同じ文字を書くのは難しい課題のようです。それが年を経るにしたがってドンドン難しくなるようです。

考えてみれば左右対称というときは、左と右が鏡で映したようになっていることを意味します。ヒトの体の構造も基本的には左右対称です。ですので、左側は左が主で右が従、右側は右が主で左が従と思っているのだと思います。

言葉を操る言語野が左脳にあるので偏りがあるということか

脳絡むと少しややこしくなります。高等生物は脳が左右2つに分かれていて、それぞれ左脳と右脳と呼ばれていて、脳梁というもので橋渡しされてつながっています。左脳が右半身を受け持っていて、右脳が左半身を受け持っていて、左右交差しています。

ここからは私がこの記事を読んで考えたことです。ただ左右交差が起こっていても、左脳は右が主で左が従と思っているでしょうし、右脳は左が主で右が従と思っていることでしょう。そうなると、どうしても言葉を操る脳が受け持つ方が主で、そうでない方が従になるのではないでしょうか?

利き手の担当と言葉を操る脳は必ずしも同じ側の脳にあるわけではなく、左手が利き手の人でも左脳に言葉を操る言語野があります。少し古い本ですが、『脳の学習力』の中でそこら辺の話が触れられています。

左半球のない人が創造性に欠けるわけではないし、左半球のない人は、言語を操ることができない人が多いけれども、分析的でいられる。左半球がなくても発話できる人もいるだろう。非常にわずか(約七パーセント)だが、言語の機能が右半球にある人もいるのだから。

S. J. ブレイクモア、U. フリス著、乾敏郎、山下博志、吉田千里訳『脳の学習力』岩波現代文庫、2014年

ということは、「特別の指示」がない限りは、左右それぞれの脳が単独に判断してやりやすいように手足を動かすと思いますので、鏡写しの動きになるでしょう。一方、「特別の指示」があると、言語野がある左脳でその指示を受け取って解釈して右脳にも指示を飛ばすのではないでしょうか。それが「うちと同じ向きに動いてください」という指示の場合、右脳にとっては左が主で右が従が自然なところをぐっと抑えて、左脳の論理である右が主で左が従という動きをしなければならなくなり、「面倒くさいけど、左と右を入れ替えて考えないとね」ということになるのだと思います。

年を取ると難しい思考が億劫になると考えれば自然

ですので、年を取ると難しいことを考えるのが億劫になると考えれば、自然と「左脳のいうことも分かるけど、ちょっと大変になってきたんだよね」と右脳の腰が重くなるのもうなずけるかと思います。獲物を追う時も、獲物として追われて逃げる時も、体を動かすのは手足と直接つながっている脳の側が受け持つのが当然理に適っています。わざわざ脳梁を通って反対側の脳に指示を出して間接的に体を動かしていたら、コンマ何秒差で獲物を取り逃がしたり、獲物として猛獣の口の中に入ってお陀仏になるでしょう。

一方、言葉の方は直接手足とは関係なく、目や耳や口が集まる頭の部分で完結して処理ができるので、片方の脳に一極集中管理した方が効率がよかったのでしょう。こうやって、外から指示を受けて考えて命令する担当と体を動かす担当とが泣き別れて二人羽織や二人三脚になるのでしょう。

老いに打ち克つために脳梁を鍛えようか…どうやって?

そうやって考えると、左右の脳の連携を強めるより解決策はなさそうです。ということは脳梁を太くするがよさそうです。しかし、どうやれば脳梁を鍛えて太くすることができるのでしょうか?ピアノや水泳などの左右の手足を同時に使う技能や運動がよいという都市伝説はありますが、今のところ科学的根拠がある方法はなさそうです。

でも、脳にとって全般的にいいことをすれば、脳力の衰えをなだらかにすることは可能だと思います。食事・運動・睡眠という3大生活習慣を改善するのが遠回りでも実は近道なのではないでしょうか。

私の場合は糖質制限食16時間断食で摂り、やり過ぎにならず健康効果を十分に得られる毎日7,000歩をちょっと超える程度歩いて、座りすぎに注意してPCのバッテリーが空になるまで立ち仕事をし、一日最低でも6時間以上は眠る生活を心がけています。きっと報われるはず、そう思って続けています。

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