中国語の勉強で成語を避けては通れません。中国人は何でも四字熟語にしないと、気が済まないようです。その中で七と八をセットで使う成語を調べて、その多さに驚きました。でも、その意味はほぼ全てが「混沌」に帰着します。
七と八をセットで使う成語
中国語を学んでいると、よく七と八をセットで使う成語に出くわします。それならばと徹底的に調べてみました。そうしたところ、出るわ出るわ、知っているものも含めて、ザっと11個も見つかりました。どのようなものがあるのか見ていきましょう。
- 七荤八素 (qīhūnbāsù):儒教の経典《礼记·内则》に記されていた言葉です。原義は伝統的な15種類の料理を指していました。ところが、後世になって手に負えなくて、どうすればよいか分からない状態を指すようになりました。原義は周朝時代です。
- 乱七八糟 (luànqībāzāo):部屋の中が取っ散らかっていたり、文章がとりとめもなく、めちゃくちゃな状態を指します。初お目見えは前漢時代です。
- 七手八脚 (qīshǒubājiǎo):小学生のサッカーでは、みんなで寄って集ってボールに集まり、しっちゃかめっちゃかになります。そのような状態を指します。初お目見えは宋朝時代です。
- 七零八落 (qīlíngbāluò):ヌーの群れにライオンが急襲を仕掛けてきた時のように、元々は集まっていたものが散り散りになる様を指します。初お目見えは宋朝時代です。
- 七上八下 (qīshàngbāxià),七上八落 (qīshàngbāluò):合格通知を待っている時のような、気が気でなく居ても立っても居られない心理状態です。初お目見えは元朝末期です。
- 七嘴八舌 (qīzuǐbāshé):飲み会でみんなが思い思いに言いたいこと言っているような状態です。初お目見えは明朝時代です。
- 七拼八凑 (qīpīnbācòu):間に合わせで、いろいろな所からかき集めてきて炒飯をでっち上げるようなニュアンスです。お目見えは清朝時代です。
- 七折八扣 (qīzhébākòu):問屋から大量に仕入れて値引きしまくるような様です。元々 “折扣” という値引きを意味する言葉に “七八” がゼブラで割って入った造語です。お目見えは清朝時代です。
- 乌七八糟 (wūqībāzāo),污七八糟 (wūqībāzāo):どこかの学生寮のように、乱雑で小汚い見た目を指します。初お目見えは現代です。
- 零七八碎 (língqībāsuì):紙吹雪のように細々とした物がちりぢりばらばらな状態を指します。元祖 “乱七八糟” のように、元々 “零碎” という細々した物を指す言葉の間に “七八” が割って入った感じです。初お目見えは現代です。
- 七扭八歪 (qīniǔbāwā):蔓草がくねくねとあちこち這いずっているような様を指します。初お目見えは現代です。
すべての七と八をセットで使う成語が持つ意味に「混沌」や「カオス」のような意味合いがあることにお気づきでしょう。
七老八十は例外
“七老八十” という成語もあります。
- 七老八十 (qīlǎobāshí):70代、80代の高齢であることを指します。初お目見えは明朝時代です。
本当に数字の7と8の意味合いで使っています。成語と呼ばない方がいいかもしれません。これまで見て来た成語とは区別して考えてよさそうです。
しかし、時代を下るにつれて、”七荤八素” と同じように、”七八” に引きずられて、慣用表現として「混沌」や「カオス」のような意味合いを持つようになる可能性はあるでしょう。結構、認知症を発症した時の様を表わすのに打ってつけの言葉かもしれません。
谐音との関係は?
中国語では、”谐音” と呼ばれるものがあります。発音が似た文字を代用して言い換えるのです。現代花盛りですが、古来から縁起担ぎや禁忌に引っかけて使われてきているので、まさかと思い、調べてみました。7と8の言い換えは以下のものがありました。
- 7:请、亲、起、气
- 8:发、拜、不 ※SNS で “88” とあれば、”拜拜” つまり「バイバイ=さようなら」の意味
しかし、上の何れの漢字の組み合わせからでは、「混沌」や「カオス」のような意味合いを醸し出すことができません。やはり由来は別のところに求めるべきでしょう。
では、考えられる由来は?
では、考えられる由来は何でしょうか?ここで先に挙げた成語のそれぞれの出現時期を調べたことが生きてきました。先ほど触れたように、”七荤八素” が持つそもそもの意味には「混沌」や「カオス」のような意味合いは、含まれていませんでした。
そうすると、次に来る “乱七八糟” が元祖である可能性が出てきました。そこで、 “乱七八糟” の由来を百度百科で調べたところ、図星でした。
百度百科によると、 “乱七八糟” という成語は、前漢の時代に国が乱れてごった返した “七国之乱=乱七” と晋の時代の権力争いを指す “八王之乱=八糟” が組み合わさったものだそうです。おそらく、ほとんどすべての七と八をセットで使う成語の源はここにあるのでしょう。
まとめ / Takeaway
- 七と八をセットで使う成語は実に様々あるが、それらが意味するところは、ほとんどが「混沌」や「カオス」という意味合いである
- 元祖は “乱七八糟” という成語で、前漢の時代の “七国之乱=乱七” と晋の時代の “八王之乱=八糟” が組み合わさってできた
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