レゲトン・パワーで世界がスペイン語に染まりゆく

Reguetón 語学

英国出身で世界的アーティストの Ed Sheeran が “Sigue” でスペイン語で歌い始めました。2020 年時点で総人口が 3.3 億人の米国でヒスパニック系は 19% 弱の 6 千万人強です。恐らく、 Ed Sheeran は米国を中心に成長が続くラテン市場に魅せられたのでしょう。¡Sigue!

レゲトン、世界を行く

ご存じの方も多いかと思いますが、世界へ文化を発信する地である米国で、ヒスパニック系の血を引く歌手たちが続々スペイン語で歌い出しています、 Enrique Iglesias は以前からとして、 Selina Gomez 、Camila Cabello が続々とスペイン語で曲を歌いまくるアルバムを出しました。ディズニーでさえ、コロンビアを舞台にしたアニメミュージカル映画「ミラベルと魔法だらけの家 / Encanto」を上映しました。

「レゲトン / Reguetón」の王様 Daddy Yankee をフィーチャーした Luis Fonsi の “Despacito” が世界的にメガヒットして、英語でなくてスペイン語で歌おうが「これはイケる」という感触がつかめたのだろうと思います。ちなみに「レゲトン」とは、レゲエとラップ、ヒップホップを融合した音楽のジャンルで、プエルトリコ発祥です。

2020 年時点で総人口が 3.3 億人の米国でヒスパニック系は 19% 弱の 6,210 万人です。彼らヒスパニックは一世だけでなく、二世と三世世代も多いので、米国に同化して英語が第1言語なのでしょうが、大家族が今も残るヒスパニック系では、家庭内はスペイン語というケースが多いようです。「4か国語に英語、中国語、ポルトガル語、スペイン語を選んだ理由は人口&GDPカバー率の高さです」の回で触れましたが、この市場は魅力的なのです。

英国出身で世界的アーティストの Ed Sheeran も気づいたのでしょう。J Balvin と組んだ “Sigue” ではスペイン語で歌い始めました。英国で使われる言語はほぼ 100% 英語です。英国だけを市場と見ているのであれば、スペイン語で歌う必要はありません。世界的スターだからこそ、そして音楽の最大市場が米国だからこそスペイン語で歌うのです。

再びスペイン(語)が世界を席巻するのか?

古くは Gipsy Kings がジプシー訛りのスペイン語で歌っていました。彼らの代表作の1つ “Inspiration” が鬼平犯科帳のエンディングテーマとして使われた関係もあり、ある意味、日本のスペイン語第1次ブームだったかもしれません。しかし、正書法に則っていない面もあったかと思います。長続きはしませんでした。

もっと古くは、江戸時代前期の島原の乱の頃でしょう。スペインが無敵艦隊を擁して、ポルトガルと世界を二分する時代がありました。大航海時代です。島原の乱はキリシタンが蜂起した一揆です。当時、江戸の徳川幕府が筆頭老中だった松平信綱を総大将として投入するまでに鎮圧に手を焼きました。

一揆を率いた天草四郎が、スペインやポルトガルの介入を期待して親書を送っていた話は有名です。スペインやポルトガルは貿易で潤い、当時の超大国であると同時にカトリック国でした。両国が日本に内政干渉していたら、今頃は我々はスペイン語かポルトガル語を話していたことでしょう。

その後、スペインの無敵艦隊は英国に敗れます。ポルトガルもリスボン地震が祟り、再び大国に返り咲くことはありませんでした。こうして、英国が七つの海を支配するようになり、英語が世界共通言語になっていきます。

しかし今、レゲトンと米国でのヒスパニック系人口急増というソフトパワーにより、再びスペイン語が脚光を浴びています。

仮説:人口が5,000万人を超えると翻訳文化が成り立つ

話が飛びますが、「人口が 5,000 万人を超えると、翻訳文化が成り立つ」という仮説を持っています。これまで世界は米国のソフトパワーに魅了されてきました。コンテンツは英語です。中国(14 億人)やブラジル(2 億人)に行って、街中で英語で話しかけても英語で答えてくれたためしはありませんでした。日本(1.2 億人)も然りです。ドイツ(0.8 億人)は行ったことはありませんが、日本の事情と似たような感じだそうです。ですので、ハリウッド映画は自国語の吹き替え版が上映されます。出版物は翻訳されます。

スウェーデン(0.1 億人)は違いました。街中のティーンエージャーに英語で道を尋ねても、ちゃんと英語で答えてくれました。聞くところによると、他の北欧の国々も人口は数百万人程度で、国民が普通に英語を使えるそうです。吹き替えしても市場が小さく、費用対効果が合わないので、自国語の字幕だけつけてハリウッド映画を上映しているそうです。出版物も翻訳しません。

スウェーデンの和食レストラン(「とば」は「そば」のこと?)

お隣の韓国(0.5億人)はどうでしょう。韓国に行ったことはありませんが、よく知られているように、日本より英語が使えるようです。自国市場が小さいので、海外を相手にする産業が中心です。今の日本とは比べものにならないほど受験競争も熾烈です。日本と同様、少子高齢化社会で、韓国統計庁の2035 年に人口が 3,000 万人を切るという見通しを発表しました。国が干上がっていくのを感じずにはいられないと思います。ですので、自ずと英語が使えないと、生きていけないと思うのでしょう。

これら事例ベースで見ていくと、人口が5,000万人を下回ると、翻訳する費用対効果の観点と自国産業存続の観点から、翻訳文化が成り立たなくなると言えるのではないでしょうか。

日本はこの先どうでしょうか?総務省の推計では、 2064 年まで予想していて、 8,000 万人台は維持する見通しになっています。今のドイツ並みです。韓国のような切迫感は当面なく、この先も翻訳文化が続くと見ます。

米国で英語→スペイン語の翻訳文化が成り立つようになった

こうして見てくると、米国でヒスパニック系人口が 6 千万人を超え、しかもこれからも増えていくのですから、米国の中で、英語→スペイン語の翻訳文化が成り立つようになったということなのではないでしょうか。

世界でも類稀な現象が米国で起きています。その結果、ますます世界中のアーティストを巻き込んで、スペイン語文化が世界的に拡大していくことになるやもしれません。乗り遅れないように、スペイン語を勉強しなくては…

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