リチウムイオン電池に見るお家芸の「家」変遷:日本⇒韓国⇒中国

リチウムイオン電池 科学技術

リチウムイオン電池の電解液に使われているヘキサフルオロリン酸リチウムと呼ばれる材料の話です。この分野の日本勢の世界シェアは2010年頃まで9割でした。ところが、2016年に中国が世界トップシェアを奪い今日に至ります。すでにリチウムイオン電池自体も似た状況です。

『電子立国日本の自叙伝』が懐かしい

1991年にNHKで『電子立国日本の自叙伝』という番組が放映されました。”Japan as Number One” というキャッチフレーズを体現して、当時一大産業となった半導体業界の歴史を振り返る番組でした。アメリカの Texas Instrument 社がトランジスタなどの電子素子を半導体の上に写真で使う技術を応用して作る技術を発明して、半導体産業が一気に花開きました。日本はアメリカから技術導入して微細加工技術が得意だったり、半導体を使うことで電卓などの電気製品が小型になることで需要が急拡大したことが追い風になってそれは大変なものでした。

しかしそれも遠いいにしえの話となり、今の半導体は台湾や韓国勢に勢いがあって、さらにその後ろから中国勢が追い上げてきているという状況です。液晶もそうです。日本が電卓を液晶表示にしたのを皮切りに、テレビやPCディスプレイにスマホの画面などが液晶表示になりました。これも韓国勢や台湾勢に勢いがあって、中国勢が追い上げてきています。

今回の話題、リチウムイオン電池もそうです。2019年にノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏がリチウムイオン電池の父と呼ばれて、実用化したのも日本です。ですが、今は韓国勢の独壇場で、中国勢が猛追しています。

いや本当に『電子立国日本の自叙伝』が懐かしいです。

日本の材料分野も先行き怪しいか

今回紹介する 36Kr.comの記事は、リチウムイオン電池の電解液に使われているヘキサフルオロリン酸リチウムと呼ばれる材料の話です。この分野の日本勢の世界シェアは2010年頃までは9割を誇っていました。ところが、2016年に中国が世界トップシェアを奪い今日に至ります。すでにリチウムイオン電池自体も旺盛な電気自動車やスマホの需要を追い風にして韓国勢がトップを走りますが、中国勢もすぐ後ろを走っています。日本勢は3番手に踏みとどまっていますが、ジリジリと差をつけられてきています。

話をリチウムイオン電池の電解液に戻します。リチウムイオン電池はその間にセパレータと呼ばれる絶縁物を正極と負極の2つ電極で挟み込む構造になっています。こういう構造にして正極と負極がショートしないようにしています。それを電解液に浸して出来上がりです。電解液に乗ってリチウムイオンがセパレータの隙間を通って正極と負極の間を行き来することで電気が流れます。リチウムイオンは小さいので、セパレータの隙間を通れるわけです。

このリチウムイオンが正極と負極の間を行き来するための運河のようなものになっているのが電解液で、その重要な材料がヘキサフルオロリン酸リチウムです。

リチウムイオン電池のコストは、正極が40%以上、負極が19%、セパレータが12%で、電解液のコストはせいぜい6%から8%だそうです。しかし、 電解液の中でヘキサフルオロリン酸リチウムが占める割合は40%から50%もあるのだそうです。ちなみに電解液に占める質量はたったの12%程度なので、作る側からすると、場所を取らずに儲かるので、願ったり叶ったりです。日本勢が頑張っていた理由もうなずけます。しかし、そんなおいしいものを誰も放っておくわけもなく、韓国勢や中国勢が目をつけて熾烈な競争の末、日本勢が圧倒的王者の座から引きずり降ろされたわけです。

少し前に日本が韓国を半導体を洗浄するための溶剤の輸出先ホワイトリストから一時期外したことがありました。しかし、材料の世界で結構がんばっている日本企業も多いですが、そういうことがあったねという昔話になるのもそう遠くない将来かもしれません。

資源が何もない日本なので、次を何か探しましょう

記事の中でヘキサフルオロリン酸リチウムの価格が乱高下しているグラフがあります。2016年4月に40万元/トンの価格だったのが、2020年4月に8万元/トンとわずか1/5にまで下落しています。まさに小豆相場です。ちょっと博打のような様相です。あまり手を出さない方が身のためだと思って頭を切り替えてもよさそうです。

そうは言っても、 資源が何もない日本です。次の飯の種を何か探す必要があります。日本の勝ちパターンはすべて韓国勢や中国勢も学んでいます。歴史は繰り返します。歴史に学び、「おいしい市場」を探し、今得意なことの棚卸をして、それらを組み合わせたら、その「おいしい市場」で何か役に立てるか考えましょう。まずは歴史に学んではいかがでしょうか?

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