4月から始まる2022度のNHK語学放送では、とうとうポルトガル語ラジオ講座の入門とステップアップが1冊のテキストに統合されてしまいました。寂しい限りですが、確実にポルトガル語圏の人口は増えていますので、ポルトガル語需要は増えます。今回紹介する『アイルトンのニッポン』で気落ちせずに勉強を続けましょう。
『アイルトンのニッポン』とは
『アイルトンのニッポン』とは、2021年10月から2022年3月に NHK ラジオのポルトガル語講座 ステップアップで放送されたポルトガル語の会話文を学ぶ講座の題名です。アイルトンという名前の一人のブラジル人が来日して日本にある商社(と思われる)に就職することになります。そこで、田中さんというポルトガル語ペラペラの40代の日本人同僚と出会うところから物語が始まります。
仕事の話やアイルトンの恋愛の話が展開されて、ストーリー立てもそこそこおもしろく作ってあります。内容も現代的です。
Sem celular não posso viver. 携帯がないと、生きていけないよ。
などという表現が出てきます。ポルトガル語の教材としてはかなり気合をいれて作りましたね、という感じです。実際、ブラジルに行った時もそうでした。
ちなみに、今勉強しているスペイン語に訳すと、
Sin celular no puedo vivir.
となります。かなり似ていることが分かります。この例でも分かるように、ポルトガル語とスペイン語のどちらかを先にある程度のレベルまで勉強しておけば、もう片方に取り組むのにそれほど敷居を高く感じないと思います。
日本にいてもポルトガル語は必要か
2021年6月の法務省の在留外国人統計によると、日本にはアイルトンのような在日ブラジル人が 20.6 万人(在留外国人の 7% )もいるそうです。国別で言っても、中国人(74.5万人; 28%)、ベトナム人(45.0万人; 16%)、韓国人(41.6万人; 15%)、フィリピン人(27.7万人; 10%)に次いで、ブラジル人は第5位で健闘しています。
上のグラフをご覧いただくと分かるように、在留外国人の大半は実は英語圏からやって来た人ではないのです。ベトナム人が日本に来て中国語を学んでいるという話を聞きますし、案外、中国語とポルトガル語を学ぶ方が、日本にいても、かなりの確率で在留外国人と話せるというわけです。
とは言え、在日ブラジル人の居住地域は愛知県(59,536人)と静岡県(30,882人)に集中しているので、東京都(3,851人)にいるとあまりお会いしませんが。首都圏でいうと、群馬県が13,706人で最も多いです。中でも、10人に1人が在日ブラジル人が住むと言われる大泉町がとりわけ有名です。
スマホアプリで Catalog Pocket というものがあります(1)。各地の地域広報誌が日本語だけでなく多言語で読めるので、在日外国人になったつもりで全国津々浦々の地域ネタや生活に根差した情報を読むと、外国語でどのように表現すればよいのか学ぶことができます。
このアプリの優れているところは、単に紙面の翻訳だけでなく、翻訳した結果を文字情報として表示するに止まらず、読み上げ機能もある点です。しかも、読み上げ速度を0.5倍から4.0倍まで変えることができるので、学び始めでは速度を落としてリスニングやシャドーイングして、上達してきたら、速度を上げていくということも可能です。語学アプリとして十分に使えます。
このアプリを使ってゴミ回収情報を外国語で習得しておくと、ご近所さんの外国人の方がゴミの出し方で困っているときに、助けてあげることができるかもしれません。
ちなみに残念ながら、アプリの中で大泉町の広報紙は見つかりませんでした。
ポルトガル語では画期的なちょっぴりビジネス・ポルトガル語
『アイルトンのニッポン』に話を戻します。
物語の舞台設定から分かるように、ビジネス表現がそこそこ出て来ます。これはポルトガル語教材としては画期的だと思います。職場での雑談が大半ですが、例えば、
Precisamos conferir todo o estoque. すべての在庫を確認しなければならない。
という表現が出てきます。これは十分ビジネスで使う表現だと思います。
他にも職場に新入りが入ってくるかもしれないという話の回があり、そういう場面では使うだろうなという表現がいくつか出てきます。
ストーリー全体の中盤は、アイルトンと恋人のハファエラとの情熱的な恋愛の話で、ネイティブスピーカー同士の早口のやり取りになっていて、聞き取りが大変ですが、リスニングを鍛えるにはよい勉強になります。こういう場面で口語表現が学べます。例えば、
Força aí! 頑張って!
などがその例です。他にも、
ser bom de bico 口がうまい
という表現も典型的な口語表現でしょう。”bico” は嘴の意味です。ここをフォークを意味する “garfo” に変えると、大食いになりますし、”copo” に変えると、大酒飲みの意味になります。
作文練習にもなります
それぞれの課ごとに今回のキーフレーズがあり、それを使って日本語の文をブラジル語に訳す練習があります。
英語でしゃべれるようになりたいと思い、『どんどん話すための瞬間英作文トレーニング』(森沢 洋介 著)を使って勉強した一時期があります。中学校レベルの語彙を使って日本語を聞いたら、即英語の訳す練習が数百題収録してあります。なるほど、簡単な日本語でも英語にしようとするとなかなか上手く表現できないという悩みを解消するのに役立ちました。
違う言語でも、この方法は効果的だと思います。日本語のナレーションの後、すかさずポルトガル語に訳して答える練習は、とっさに話せるようになるには必要な過程だと思います。
情熱の国の言葉に情熱を持って答える
他にも「今日のことわざ」という囲みがあり、課ごとにブラジルのことわざを紹介してあります。
Devagar se chega ao longe.– ゆっくり行くと、遠くに辿り着く。
ということわざが気に入りました。
ブラジルという情熱の国の言葉に情熱を持って答えるようにすれば、きっとポルトガル語が上手くなると信じて、これからも勉強にいそしみます。
[参考文献]
- Catalog Pocket: https://www.catapoke.com/
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