ボケ防止に歯磨き・フロス習慣は大事

歯磨き 科学技術
UnsplashDiana Polekhinaが撮影した写真

認知症患者の脳の中から歯周病菌が見つかったという報道がありました。今回、マウスを用いた研究で脳内に歯周病菌を退治する炎症反応が起きたり、脳内の白血球と呼ばれるミクログリアがアミロイドβを掃除する様子が捉えられました。口腔ケアは本当に大事です。

歯周病を侮るなかれ

アルツハイマー型認知症の原因の1つに歯周病が取り沙汰されています。「ボケる前の転ばぬ先の杖になる豆知識」の回で紹介したThe Economist 誌の報道によると、アルツハイマー型認知症患者の脳の中から歯周病菌が見つかったためです。

今回取り上げる論文の引用文献でも、 2017年頃から歯周病とアルツハイマー型認知症との関連を示唆する論文が登場し始めています。割と最近の話であることが分かります。細菌ぐらいのサイズになると、どうやって脳の中に入って行くのだろうと不思議に思います。

ところが、「鼻うがいでボケを吹っ飛ばそう」の回で取り上げた研究で、副鼻腔炎を惹き起こす細菌が臭覚神経を伝って脳内に侵入することを確かめています。歯周病菌も歯茎の骨を溶かすまでの力があるのですから、歯の神経を伝って脳に潜入することは十分に考えられます。

残念ながら、歯周病菌は脳への侵入経路までは特定できていないようですが、36 匹のマウスを使った実験で、歯周病にさせられたマウスの脳から歯周病菌が見つかったのです(文献1)。

歯周病菌が脳内で炎症を引き起こす

マウスの脳に侵入した歯周病菌は、脳内で免疫反応を引き起こしました。つまり炎症です。今回の実験はわずか 30 日間でしたので、起きたのは急性炎症です。寿命が短いマウスのことですから、慢性炎症が長期的に及ぼす影響までは確認できませんでしたが、ヒトの場合は、歯周病を放置していれば、脳の中で確実に慢性炎症となるでしょう。怖い話です。

そして、歯周病菌退治の一翼を担うのがミクログリアです。脳以外のところでは白血球の一種であるマクロファージが病原菌を捕食します。脳の中はここが他の組織と違っていて、マクロファージとは別のミクログリアという細胞が白血球に似た働きをします。それとは別に、アミロイドβも出動して、病原菌に鳥もちのように取りついて身動きできなくします。病原菌がアミロイドβでグルグル巻きになっているところにミクログリアがやって来て一絡げに平らげてしまいます。

こうして脳に侵入してきた異物を取り除くわけですが、慢性炎症が続き、日々是戦場と化すと、アミロイドβの回収が追い付かなくなり、アミロイドβの吹き溜まりとして老人斑ができてしまうわけです。

歯周病は体の至る所に飛び火する

口は脳に近いので、歯周病は頭周辺で悪さを働きますが、血流に乗ってしまうと、体の至る所に飛び火して炎症を引き起こすようになります。血管自体も傷めることになります。血管壁に取り付いてしまうと、免疫細胞が集って来てそこに血栓を作り循環器病を惹き起こすそうです(文献2)。

歯周病に限らず、副鼻腔炎や各種アレルギーなども慢性炎症なので、放置していると、同じようなことが起こることが容易に想像できます。そうならないためには、やはり日頃の予防ケアが必要です。

歯磨き・フロス習慣

私は歯磨きとフロスには時間をかけて丁寧に取り組んでいます。

  1. つまようじで大きな食べかすを取り除く
  2. それぞれの歯にフロスを巻き付けて、歯の根元から先まで歯の表面を擦って汚れを落とす
  3. 歯ブラシを横方向に小刻みに動かして、歯を一通り磨く
  4. 最後に、歯ブラシを縦方向に持ち替えて、同じく小刻みに動かしてもう一巡磨く

1. から 3. までをやっている人は多いと思います。歯科定期健診の時に、歯科衛生士さんから特に奥歯を中心に 10% 強の磨き残しがあると指摘を受けました。いろいろな方向から磨くとよいと、その方からアドバイス頂いたので、4. の縦方向磨きを加えました。

歯並びは円筒が横に並んでいるようなものなので、縦方向1に磨くことが理に叶っているのでしょう。おかげさまで、今では一桁パーセント台の磨き残しをキープしています。

費用対効果を考えなければなりませんが、歯周病にならず、80歳で20本以上の歯を残して認知症から縁遠くなることを目指すのであれば、労力は釣り合うと考えて習慣にしています。参考にしてください。

[参考文献]

  1. Rawan Almarhoumi, Carla Alvarez, Theodore Harris, Christina M. Tognoni, Bruce J. Paster, Isabel Carreras, Alpaslan Dedeoglu, Alpdogan Kantarci. Microglial cell response to experimental periodontal disease. Journal of Neuroinflammation, 2023; 20 (1) DOI: 10.1186/s12974-023-02821-x
  2. 日本臨床歯周病学会:歯周病が全身に及ぼす影響

コメント

タイトルとURLをコピーしました