健康の3本柱は食事と運動そして睡眠です。本人がどう感じているかに関わらず、客観的なテストを行うと、6時間以下の睡眠時間の場合、8時間睡眠に比べて反応速度と正答率が確実に悪くなります。それだけではありません。生活習慣病や認知症にも関係するのです。
健康の3本柱の1つ
言うまでもありませんが、健康の3本柱は食事と運動そして睡眠です。一時期、短時間睡眠法がはやったことがありましたが、本人がどう感じているかに関わらず、客観的なテストを行うと、6時間以下の睡眠時間の場合、8時間睡眠に比べて反応速度と正答率が確実に悪くなります。その状態が2週間続くと、二晩徹夜したのと同じ程度の作業効率まで落ちることがSleep誌の有名な論文の中で実験によって示されています。これがよく言われる睡眠負債と呼ばれるものです。
また、睡眠不足によって血糖値の制御を狂わせる、食欲を増進する、エネルギー消費を下げるということで肥満や2型糖尿病になるリスクを高めることがSleep Med 誌の論文に書いてあります。2大生活習慣病とはお友達になりたくありませんね。
しかも、認知症との関係も指摘されています。 Science 誌に掲載された論文は、アルツハイマー型認知症の元凶と目されているアミロイドβがオレキシンと呼ばれる食欲ホルモンと睡眠に関係していることを指摘しています。さきほどの Sleep Med 誌の論文ではオレキシンと呼ばれる食欲ホルモンが増えることで食欲を増進させると言っています。そしてこの Science 誌の論文ではオレキシンが増えるとアミロイドβが増えると書いてあります。また睡眠時間が短くなると同様にアミロイドβが増えることも指摘しています。 睡眠時間が短くなるとオレキシンが増えるのであれば、同じことを言っているだけなのかもしれませんが、とにかく睡眠を十分にとればボケ防止になると言えるでしょう。
ここら辺の事情をコンパクトにまとめている『睡眠負債』という書籍もありますので紹介します。
母親の睡眠改善
自分のことを気にするのとは別に、母親が毎日3,4時間しか眠れないと悩んでいました。これはいかんということで、先ほどの論文のエッセンスの他に、健保が主催する睡眠改善講座に参加して仕入れてきた方法を試してもらいました。 睡眠改善講座では、就寝時間と実際に眠りに入って意識がなくなった時間、目が覚めた時間(途中で目覚めた時間も)と起床時間を睡眠日記を付けて、よく眠れたときに何をしたか、よく眠れなかったときには何をしたか、自分を癖を見つけ出そう、など素晴らしいアドバイス満載でした。早速いただいた資料をコピーをして母親に送ってあげたりしました。眠れないときは無理に眠らず眠くなったら寝ることや、毎朝目覚めたら日の光を浴びることなども伝えました。しかしなかなか改善しませんでした。
よくよく話を聞くと、膝が悪いので外に出かけて日の光を浴びに行くのが億劫だと知りました。このややこしい親を何とかボケさせないためには、よく眠れるようにしてあげるのが急務だと思い、さらにいろいろ調べました。そうしたところ「VALKEE」 というものを見つけました。これはヒトの脳の視床下部など特定の部位にある細胞にも、網膜で光を感じ取る色素タンパク質のオプシンがあることに目をつけて、そこに文字通り「光を当てる」器具です。 視床下部は睡眠中枢ですので、目を通してではなく、そこを直接光で刺激して睡眠をコントロールしてやろうという代物です。どのようにして光を当てるかというと、まさにイヤホンの形をしたLEDを耳に挿入して、耳の穴からその先の脳の中ほどにある視床下部を照らします。詳しい原理などご興味がある方はこちらをご覧ください。
「耳の奥を照らす」―半信半疑だったが結果は良好
半信半疑でしたが、当時の「VALKEE 2」という製品を母にプレゼントしました。ポータブルミュージックプレーヤーのような出で立ちで、外で使ってもあまり変な目で見られることはないよう配慮されています。プレゼントした後、割に頻繁に使用を促して効果を確認したところ、1か月ほど経ってよく眠れるようになりました。今では6時間以上眠れるようになり、あまりお世話になることはなくなったとのことです。
朝散歩で日の光を浴びることができればそれに越したことはありません。しかし、いろいろな事情でそれができない場合は一度お試しになるとよいと思います。フィンランドのHumanCharger社の製品です。北欧の国なので、冬の間に日光を浴びることができずに睡眠障害になる人が多いようで、そのような事情がこのような商品を開発する動機づけになったようです。最近はワイヤレスになって、「バルケーワイヤレス」という名前で売られています。最後に画像リンクをつけておきます。
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