Science Advances に掲載された東京大学の研究論文によると、ネズミもリズムに乗ってヘッドバンギングするそうです。何やら生き物共通のリズム感があるのかもしれないという話です。言葉もリズム。ほんやくコンニャクが本当にできるかもしれません。
鳥のさえずりは曲を奏でている?
音楽は人間の特権だと考えられてきた節があります。しかし、鳥のさえずりを聞くと、何やら曲を奏でているようにも聞こえなくはありません。小さな頃に飼っていた文鳥は、私の口笛に合わせてステップを刻み踊っていました。ですので、鳥類はリズム感があると思っています。
しかし、人工音は生き物には不快でしょうし、場合によってはヒトにとっても不快なものです。
《HSK标准教程5上》の11課が “闹钟的危害/目覚まし時計の危険性” という題名です。その中で引用されている論文によると、朝、人工音が突然鳴り出して叩き起こされると、ヒトの毎分の呼吸数は 16 bpm (breaths per minute) から 24 bpm に跳ね上がり、毎分の心拍数も 10 bpm (beats per minite) だけ増加するそうです。
体への負担だけでなく、心理面でも悪影響をもたらすと論じています。短期記憶力や計算能力に至っては、正常時の 65% にまで効率が落ちます。これは酒に酔った状態と変わらないそうです。そして、体を守るためにアドレナリンが分泌されて、それが却って高血圧や不眠症につながる場合もあるそうです。
これを読んだ後、私は即、目覚まし時計代わりに使っていたスマホのアラーム音をカッコウのさえずりに切り替えました。
ネズミも曲に乗って踊る
ところが、心地よい音楽なら話は別のようです。Science Advances に掲載された東京大学の研究論文によると、飼っていた文鳥が口笛に乗って踊っていたように、ネズミもモーツァルトのピアノソナタに乗って、ヘッドバンギングするそうです。ヘビメタではなくクラッシック音楽なので、「ヘッドバンギング」という表現はちょっと似つかわしくありませんが。
ネズミが本当に曲に合わせてヘッドバンギングしているかは、頭に加速度センサを着けて測定しています。そして、モーツァルトのピアノソナタを変調して元の速さの 75%, 100%, 200%, 400% の4種類に振ってみたのです。そうすると、元の速さ(100%)の時が一番頭の動きがよかったのです。このテンポは 132 bpm (beats per minute) に相当しました。もう少し調べると、120-140 bpm の範囲でノリノリになりました。ヒトと同じだそうです(論文)。
「少々古いですが、”Chain to the Rhythm” は意味深」の回で、”Oblivia” という名前の遊園地の来場者がトレッドミルに乗って走るシーンを紹介しました。”Chain to the Rhythm” のオフィシャル・ビデオは2種類あって、1つは紹介したものですが、もう1つはネズミがミニチュアハウスに住んでいて、やはりトレッドミルに乗ります。ヒトもネズミもこの曲に合わせてトレッドミルの上でヘッドバンギングしながら疾走する光景を想像してしまいました。
ほんやくコンニャクや動物語ヘッドホンは実現するか
今回ネズミとヒトは 120-140 bpm の範囲で音楽を介して分かり合える仲であることが分かりました。論文著者はそれだったら、おそらく他の哺乳類に共通なのではないかと考えています。私が飼っていた文鳥が口笛に乗って踊っていたので、鳥類も可能性があります。そうだとしたら、哺乳類と鳥類と共通の祖先を持つだろう現在の爬虫類もそうなのかもしれません。
言葉も言ってみればリズムです。外国語を学ぶと音感も良くなる関係にあります。言葉と音楽は互い影響し合うのです。英語のネイティブスピーカーがスピーチする時の速度は、150〜160 wpm (words per minute) だそうです。 120-140 bpm とそう遠くないですね。この辺の速度感が心地いいのでしょう。
昔、犬の感情を読み取ることができる「バウリンガル」という玩具をタカラが出していました。見事2002年度のイグノーベル賞平和賞を受賞した逸品です。姉妹品にミャウリンガルというものもあります。
地球上の生き物たちと感情を通い合わせることができる時代が、いつかやって来るかもしれません。ドラえもんがポケットから取り出してきた、あの「ほんやくコンニャク」や「動物語ヘッドホン」の実現です。それまで何としても健康寿命を延ばさなければ…
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