スペイン語では、直接目的語の前に “a” を付ける場合と付けない場合があります。基本は特定の人・動物でも関係が近しいペットなどが動作・知覚の動詞に対する直接目的語の場合に使いますが、一筋縄ではいきません。
しょっちゅう間違える直接目的語の前の “a”
スペイン語を Duolingo や Span¡shD!ctionary で独学しているのですが、勉強を始めた頃は、直接目的語の前に前置詞 “a” を付けなければいけない場合があることをつゆ知らず、Duolingo の問題に間違いまくっていました。
〇 Veo a mi abuela. / 私は祖母に会う。(または)私は祖母を見る。
とすべきところを、
× Veo mi abuela.
としてしまうことしばしばでした。
間接目的語の前には “a” がつく
人称代名詞でなければ、間接目的語の前には例外なく “a” が付きます:
Doy un regalo a mi papá. / パパにプレゼントをあげる。
ですので、間接目的語と直接目的語を取り違えているのだろうと思っていたのですが、そうではありませんでした。間接目的語は大抵の場合は人なので、間違いようはないかとは思います。またに文学的な表現でモノを擬人化する場合があります。そういう時は前置詞 “a” を付けます:
El sol le dice a la nube… / 太陽は雲に言います…
特定の人物が直接目的語なら “a” がつく
学習が進むにつれて、最初の例文のような、動詞に対する直接目的語として特定の人物が来る場合には、前置詞 “a” を伴うことを口と体が覚えてくれました。それなりに時間がかかりました。
Crio a mi hijo. / 息子を育てる。
対象に対して何かを行う場合は、大抵の場合、特定の対象なので、直接目的語の前に前置詞 “a” が必要になってきます。しかし、特定の対象が人以外なら、逆に “a” を付けてはいけません:
Crio una planta / 植物を育てる。
この場合も、間接目的語の前の “a” と同じで、モノであっても、擬人化したモノであれば、
Mi hija cria a su muñeca favorita. / 娘はお気に入りの人形を育てている。
と言ってギリギリOKでしょう。他にも、ペットは家族同然ですから、普通に “a” を伴います:
Crio a un pero como mascota. / ペットとして犬を育てている。
「特定」なのですが、必ずしも定冠詞でなくてもよく、別に不定詞の場合でも、家族の一員としてのペットであることが特定できれば差し支えありません。
Espero a un amigo veijo. / 旧友を待っている。
あまり限定的に誰と言わなくても、「大体そういうことね」と特定できるのであれば、OKです。
“a” が付くのは動作・知覚の動詞に対する直接目的語に限る
ところが、次の例は引っかかります:
Tengo un hijo. / 私には息子が一人いる。
どうして “a” が要らないのでしょう。”tener / 持つ” という動詞が動作を伴ったり、五感を使って感じ取ることがないからです。このように、単に状態だけを表現する場合には、前に “a” を付けてはいけ言うと、
これはそもそも前置詞 “a” が英語の “to”、”at”、”per” など動きを伴う前置詞に当たるからです。英語でも、
Give me a chocolate! ⇒ Give a chocolete to me! / チョコレートをください!
と言うように、間接目的語を後ろに持っていくときに、”to” を付けます。これと同じ感覚です。動作の方向を意味合いとして含まないような静的な状態を表現するにはそぐわないのです。
前置詞 “a” を付ける利点
スペイン語において、間接/直接目的語の前に前置詞 “a” を付ける利点は、日本語の助詞、つまり「てにをは」と同じです。これを付けることによって、ある程度語順から自由になることができるのです。特に、主語になり得て、目的語にもなり得る名詞を区別するためです。スペイン語は、動詞の活用語尾によって、誰が主語なのか特定が容易です。そのため、主語なし文が普通です。
例えば、倒置が普通に起こる疑問詞疑問文の例です:
¿A quién busca? / 誰をお探しですか?
という文は、”quién” の前に “a” が付いているからこそ、探している対象が「誰」だと分かります。”a” がなければ、
¿Quién busca? / 誰が探しているのか?
と「誰」が主語と解釈するのがごく自然なのです。
まとめ / Takeaway
- 特定の人物かそれに近い扱いの動物が直接目的語なら “a” がつく
- “a” が付くのは動作・知覚の動詞に対する直接目的語に限る
- 前置詞 “a” を付けると、日本語の助詞と同じで、主語と目的語を区別できるようになる
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