やはり糖質過多は脳の老化を早める

糖尿病 科学技術

糖尿病怖いですね。中国CCTVの《健康之路》という番組で本人が気が付かないうちに足の裏が壊死してしまい、切断せざるを得なくなった例を見ると寒気がしました。本来なら見ようとすれば見えるところでも感覚がなくなって気が付かないのです。実は頭の中でもそれが起きるのです。本当に怖いです。

日本では国民の6分の1が糖尿病かその予備軍

コロナ禍でこの二年間統計が取れていないので、令和元年国民健康・栄養調査のデータを参照します。日本では国民の 17.0% 、実に6分の1が糖尿病かその予備軍です。男性は 22.0% 、女性は男性よりは少ないとはいえ、それでも 13.4% です。年齢を重ねるにしたがって増えていきます(下図)。

国民健康・栄養調査(令和元年)の表50「糖尿病の指摘の状況」を年代別にグラフ化したもの

グラフをご覧になると分かるように、還暦を過ぎると、性差はあるものの、概ね5分の1が健康診断等で糖尿病の指摘を受けています。

そして、この糖尿病と認知機能低下は密接に関係があるという指摘がいろいろされて来ました。糖尿病は循環器系の病気にも関連してきますし、血行が悪くなり、毛細血管の先の組織が壊死して、神経も死んでしまうので、感覚がマヒして、足の裏が壊死しているのにも気が付かなくなるのです。同じことが脳の中で起きても不思議ではないでしょう。

糖尿病と認知機能低下は関連あり

米ストーニーブルック大学の研究グループが UK バイオバンクと科学論文のメタアナリシスを駆使して、糖尿病と認知機能低下の関連性を調べました。メタアナリシスは、個々の論文単体では被験者数が少ないので、それらをまとめて、それなりの母数にして統計化したものです。五月雨を集めて速し最上川です。

この論文によると、やはり糖尿病は認知機能の低下と関連するそうです。これまでの個々の研究では、被験者の数が少なすぎたり、比較条件に問題があったりではっきりしたことが言えませんでした。

一方、この論文が対象としたデータは規模が大きく、健康状態を示す数値がセットになったものです。 UK バイオバンクは2型糖尿病 1,012人と健常者 19,302人のデータです。科学論文のメタアナリシスは、34の認知研究(被験者総数 22,231人)と60の脳診断画像研究をまとめたものです。十分に信用できる母数でしょう。

結果を一言でいうと、加齢に伴う認知機能低下を2型糖尿病が助長する結果です。糖尿病によって加齢とは関係ないところが異常になることはありませんでした。

詳しく見ると、認知機能のテストで、判断力や実行力が普通の老化に比べてさらに13.1%の低下が見られました。処理速度でも老化影響よりさらに6.7%低下が見られました。

脳の診断画像解析では、脳の中で「腹側線条体」と呼ばれる部位が、加齢影響を超えて 6.2%、続いて小脳と被殻がそれぞれ 4.9% と 4.7% 萎縮していました。

糖尿病になると、認知機能が低下する

腹側線条体と小脳は脳の中でもブドウ糖の大需要家であることが知られています。インスリン耐性になった2型糖尿病患者の場合、これらの2大ブドウ糖需要家にブドウ糖を供給できなくなることが、脳の診断画像解析で裏付けられました。

また、特に腹側線条体は判断力、実行力と処理速度に密接に関係するハブ機能があるそうなので、結果に大きくうなずいてしまいます。小脳も最近、無意識的に判断・実行処理するような「おまかせAI機能」的なことを行っている(参考文献)ことが分かってきていますので、この結果に「なるほど」と膝を打ってしまいました。

相関性を統計的に分析した結果の場合、ニワトリが先か卵が先かの因果関係までは突き止められずに終わることもあります。しかし、糖尿病と認知機能低下は、認知機能が低下したために、糖質を摂り過ぎて糖尿病になってしまうのではなく、糖質を摂り過ぎて糖尿病を発症し、結果として認知機能低下を招いたという因果律だとよく分かります。

ちなみに、糖尿病治療薬のメトホルミンが認知機能低下にも効くかということをメタアナリシスで調べたところ、関連なしの結果でした。薬で糖尿病の症状を緩和できても、低下した認知機能はもう元には戻らないことが分かります。認知症が「3型糖尿病」と呼ばれる所以です。

日本でも糖質制限を推奨すればよいが…

今のところ、厚生労働省は積極的に糖質制限を推奨するように動いていません。コメが日本人のカロリー摂取の大黒柱ですし、最近では、日本で作る高糖度の果物が、海外向け輸出で驚くほどの高値で取引されています。このような事情もあるので、なかなか難しいのかもしれません。

遺伝子組み換え技術などで、オリゴ糖リッチなコメや果物というものは作れないものでしょうか?オリゴ糖はブドウ糖や果糖と異なり、体内に消化吸収されない上、ほんのり甘いので、味覚的にもよいでしょう。それに、腸内に共生するビフィズス菌などの善玉菌のエサになるので、腸内フローラの改善にも一役買うことができます。

既に、インドやシンガポールなど南アジアや東南アジアの国々が、砂糖入り甘未飲料を規制しています。後に続こうとしている国々も多いとメディアは報じています。「中国の飲料がこぞって「0糖0脂0卡」で様変わり」の回で中国にもお上に言われてではなく、飲料業界全体が糖質制限の動きに舵を切ったことを書きました。

日本が売るブドウ糖や果糖たっぷりの高糖度の果物が、そっぽを向かれる前に行動した方がよいと思います。

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